【シンガポール=青木伸行】日本に対する諸外国からの善意と支援が行き場を失っている。混乱の中で、日本側の受け入れ態勢に不備があるのみならず、食品安全基準などが支援の大きな障害になっているようだ。日本に在留する母国民の安否確認と安全確保に追われる傍ら、支援に尽力している各国政府の「恩返しをしたい」という思いを、日本政府は結果的にソデにする格好となっている。

 ある国は、毛布を数万枚送ると申し出た。だが、日本政府はサイズ(80センチ×80センチ)を指定し、送られる予定の毛布が、わずか20センチほど「規格」に合わないとわかると、受け入れに強い難色を示した。すったもんだの末に、ようやく「規格外」の毛布が日本に届いた。

 日本政府から、救助犬の派遣を真っ先に要請され、それに応じて送り出そうとした矢先に、「待った」をかけられたケースもある。その際の説明は「空港での検疫に1カ月かかる。これを1週間に短縮してもいいが、救助犬をその間管理できない」だった。

 結局、救助犬が日本の地を踏むことはなく、関係者は「韓国やニュージーランドなどからは救助犬が入ったのに、なぜなのか」といぶかる。

 コメ数万トンの援助を事実上、断られた例もある。送る予定のコメは日本人の口には合わないだろうと、わざわざモチ米を混ぜる工夫も施されていた。しかし、日本政府は「国内に余剰米があり、コメが不足しているわけではない」と回答。ただ、すでに空輸の手はずを整え終えた一部だけは、かろうじて届けられた。

 食料品を送ろうとして「食品安全基準のチェックがされていない。日本語の表示ラベルも張られていない」と、拒否された例もある。

 一方、フィリピンのアキノ大統領は17日、マニラの日本大使公邸を訪れ記帳した際に、支援を改めて申し入れた。日本側の答えは「『本国からの回答を待っている』だった」(大統領)。

 フィリピン政府はすでに、支援物資を整え日本側の「ゴーサイン待ち」。同政府筋は「第1便として、48品が入った箱を250箱用意した。カップ麺やコメ、缶詰、タオルなどが入っている」。ようやく25日、日本に空輸される見通しとなった。

 ベトナム政府もコメや毛布を送る意向を伝えているが、「日本政府は何も言ってこない」(同政府筋)と、戸惑いを隠さない。

 日本側には支援を受け入れても保管場所の確保や、被災地への輸送がままならないという事情がある。このため、物資ではなく義援金に切り替えてほしい、と要請された国も多い。

 だが、「日本からはこれまでにいろいろな支援を受けてきたので、その恩返しをしたい。受け入れ側の事情もよく理解しており、不必要なものを送るつもりもない。それでも日本政府の対応は首をかしげる」(東南アジア筋)という声は小さくない。断るにせよ、礼を尽くすべきだろう。









こうやって、日本の評価を蔑めていくわけか