にかいからかすがい -2ページ目

にかいからかすがい

くじっの日常なんやかんや

 シルエルは落ちた剣を拾う。幸い遠くには飛ばなかった。

 再び火気を集めながら鎧へ近付く。詠唱を待たずともこのまま倒せそうだとシルエルは感じていた。

 流進も鎧へ再び接近する。シルエルと挟み撃ちにできるよう回り込む。

 ここで鎧は走り出した。シルエルへと向かう。

 急ではあったが、シルエルはそれに対応できた。歩みを緩め、鎧の動きをよく見る。横へ払う一撃。

 シルエルは両手の剣でしっかりと受け止めた。重い一撃に手がしびれる。剣を落とさないように持っているのがやっとだ。

「え?」

 さっきまでは受け止められた。二回三回と。傷を負わせたはずだ。それなのにさっきより強い攻撃がきたのはどういうわけだ。そういえば動きも変わらない。流進が足を刺したはずなのに。シルエルは剣を強く握ろうとしながらそれができない。火気を攻撃に使うか、いや、防御に使ったほうがいい。シルエルがそれらを考えてるうちに鎧はシルエルに背を向け、流進へ向けて走りだす。

 流進はほとんど反射的に水流で鎧の動きを止めようとした。鎧の目の前に水流が現れる。しかし、鎧はそこに水流がくることがわかっていたかのように右へ跳ぶ。何もない場所へ水流が流れる。流進は外れてしまった水流を消して、再び鎧へ向けて水流を出そうとするが間に合わない。流進も剣で鎧の攻撃を受ける。きん、という音がして流進の両手が軽くなる。剣は二本とも流進の手を離れ、地面に落ちる。

「うわ」

 流進は思わずそう言っていた。剣は失った。残っている水気はせいぜい水流一回分。死んだかもしれないと流進が考えたところで、鎧はレカラスドへと向かう。

「吹け、渡れ、荒れて、凪げ」

 夜雨が八行目を唱える。

 レカラスドが強く床を踏む。

 でこぼこの石の柱が一本、鎧へ向かって勢いよく伸びる。

 鎧はそれを受け止め、その後で上から剣を叩きつける。柱がぽきりと折れる。そこをレカラスドが槍で突く。鎧はその突きも難なく剣で受け止める。鎧は槍を剣で弾き、レカラスドへ向け、剣を振り上げる。レカラスドは慌てて槍を引き戻し、剣を受ける体勢をとる。すると鎧はあっさりとレカラスドの脇を通り抜け、夜雨へと向かう。

「くっ!」

 レカラスドは振り向きながら槍を横に払うように振る。鎧はレカラスドの方を見もせずにそれを剣で受け、弾く。

 鎧の間合いに夜雨が入るまであとわずか。

「抜けていけ」

 夜雨が最終行を唱える。