それでも僕は生きて行く…。

それでも僕は生きて行く…。

ブログの説明を入力します。最愛の一人娘に突如 襲いかかってきた急性骨髄性白血病… それに立ち向かう家族の話。

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美優が旅立ち2ヶ月が過ぎた頃…

高校の友達が美優にお線香を上げに来てくれた…

葬儀の後…
裕子は美優のスマホから美優の友達と
連絡を取り合っていた

そのメッセージのやり取りの中で美優にお線香をあげたいと友達達は言ってくれていた…

美優の友達達も入院があまりに突然の事で詳しい状況を何ひとつ知らされないままの別れに皆 戸惑いとショックを受けていた…

僕と裕子は伝えたかった…

美優が最期の最期までどのように頑張って生きたかを…

それを知ってもらい美優の死の悲しみを乗り越えて欲しいと思っていた…

同年代の美優の友達は皆これからが人生の本番を迎える。

美優から聞いて知っていた…

皆 心やさしい子達ばかりだと…

それゆえに心配だった…    
優しく繊細な心は傷つきやすい…
人の気持ちがわかってしまう人は人の苦しみや悲しみも自分に背負わせてしまう傾向がある…

美優の友達が詳しい事を知らないままで
ただ突然に白血病に侵され命を奪われたとの認識のままではきっと彼女達は美優を思って苦しんでしまう…

美優は編入した高校の仲間を大切に想っていた…

楽しく学校に行けることに大きな喜びを感じていた…

美優は高校の友達に人生を変えてもらったくらいに思っていた…

それが…"ありがとう" の一言も伝えることも出来ずに別れなければならなかったことを思うと美優の為にも会って話がしたいと僕は思っていた…

心優しい友達たちに美優がどんな風に頑張って最期に笑顔を見せてくれたのか…

それを知ってもらい友人を亡くした悲しみを優しさと強さに変えてもらうため…

我が娘 美優がみんなに出会えたおかげで"仲間"というのを知ることができたこと…

美優の心残りになってしまっているであろう想いを昇華させるため直接 会って感謝を伝えたいという気持ちが僕と裕子にはあった…





この日は僕も裕子も朝からしっかり起きてお昼頃にくる友達を迎える為の準備に忙しくなった…

昨晩 裕子はみんなにふるまう料理を自分で作ると言い出した!

普段…  裕子はあまり料理はしない…

きっと苦手なんだと思う…

まがりなりにも主婦を20年近くやっていれば向き不向きや得意 不得意があったとしてもそれなりに料理はできるようになると僕は思っている…  が…  …

残念ながら裕子の料理のスキルはイロハのイから成長を止めたまま…


「  えっ⁉   マジでっ!  」

裕子
「はっ⁉   なにっ? そのリアクション⁉」

「だって…  お前…  それじゃ…   」

裕子
「それじゃ…  何よっ(笑) 
私だって料理が得意じゃないことくらい自覚してますー!
その中でも美優が美味しいって言ってくれたものを作ればいいんでしょっ!!」

「 本音と… 建前が… 」

裕子
「 ねぇ~ (笑)  何が言いたいの? 」


美優の友達に真心を込めて手料理でもてなしたいという気持ちは痛いほど伝わって来たが…    

それはリスクが高い! 
と思ってしまった…

自分の経験から今までに裕子の
"心を込めた"という手料理は幾度も食して来たが…

心を込めた=旨い!

には必ずしもならないのは判っていたから明日それをやるのはあまりにもリスクが高いと…


「 でも、ほら!  "お昼頃を少しまわっちゃうかもです"って言ってたんだろ⁉
もしかしたら我慢できずに少し何か食べて来ちゃうかも知れないしさぁ…  」

裕子
「えっ!じゃあ何も食事出さない気なの⁉」


ちっ!
この理由じゃ回避できないかぁ… 
と思い…


「裕子…   明日は7人も友達が来るから
手料理でもてなすって言っても結構大変だぞ…    
バタバタして慌ただしさの中で迎えるのも嫌だろ?     なっ!
デパ地下で無難な惣菜を買お!   なっ…   無難にだよ…  」


裕子は…    


裕子
「  えぇ~っ   そうする?  
う~ん…   まぁでもそうかぁ…
確かにもともと料理は苦手だし…
わかった!  そうする
じゃあ明日の 朝ちゃんと起きてよ!  」


これでほっと一安心…

一安心したけど…

料理が大の苦手な裕子が美優の友達を手料理でもてなすと言い出すなんて予想外だった…

予想外だったが…     美優がいない今…   
裕子の中である種の母性愛が強くなっているのを感じた瞬間だった…

ほっと一安心と同時に…
不意に若干の罪悪感を感じていた…





昨晩…    "朝ちゃんと起きてよ。"
と裕子に言われたが…

朝も昼も夜もない生活を共にしていた…

僕はほとんど寝ないまま朝を迎えた…




さぁ、  準備をしよう♪

睡眠不足の気だるさは慢性的になりさほど気にならなくなっていた…

僕も裕子も美優のためにやることがある
1日が嬉しく思えた

美優の友達が来てくれる♪

それを美優はどんな風に思ってくれてるかを想像すると自然と顔がニヤついてしまう…

決して遠くはないだろうと思う 
薄皮一枚隔てた世界にいる美優は
今日 友達の友情と親の愛情を
再確認することになるぞっ♪

と僕と裕子は静かにはりきっていた…



すぐそこにいてくれる… …   

この時期 気のせいでも思い込みでも
自己暗示でも…  

それでも構わないから美優を
感じようと一生懸命だった

それは裕子も同じ…



デパ地下で買い出しを終えての
帰り道 帰宅する前にもう1つ準備して
おく事があった…

入院中 美優は…

「高校の仲間とまたディズニーランド
に行きたいなぁ~ …  …  」

と言っていた…

美優が見せてくれるスマホの
中の写真は友達と行った
ディズニーランドの写真が多くある

何かにつけては… 

やれ 期末テストが終わったからとか…

やれ  誰だれちゃんの誕生日だから…

だとかでディズニーランドには
よく遊びに行っていた

家族で最後にディズニーランドに
行ったのは美優が中1の学校に
行けなかった不登校の時期に3人で
行ったのが最後だったけど…  

その後も裕子と美優は二人で
よく遊びに行っていた

僕が会社にいると…
夜のパレードが終わったあたりに
電話してきて…


美優
「  パパ~♪   ナニしてるの~?
ねぇ パパさぁ  今ヒマでしょ?   
お腹すいてるよね?  
一緒にゴハン食べよう♪ 」

「おう!  いいねえ♪ 」  


美優
「今ねぇ  ママとディズニーランドにいるから迎えにきて~♪  」


「えぇ~  ヤダよ~!   
面倒くさいって…  …
勝手に行ったんだからさぁ~
勝手に帰って来いよ~  」


美優
「あっ…  パパ…  そういう事言うの… 」


「  なんだよ…  …  」


美優
「車ですぐでしょ!    
ナニが面倒くさいだよ~!!     
ハンドル握ってアクセル踏んでたら
すぐ着くでしょっ!! 」


「わかったよ…  行くよ…  
行けばいいんだろっ!!
じゃ西船橋まで戻って来いよ…
それぐらいはしろよ!」


美優
「 パパ~♪ありがとう♪
わかった~  西船ね♪ 」


仕事を途中で切り上げて…
言われた通りハンドルを握って
アクセルを踏んで…
西船橋のロータリーに着いた

スマホをいじくりながら
二人を待つ…     

しばらくの時間が過ぎるが
二人の姿は見えない…

たいして気にも留めず
寝そべってスマホをいじくり
ながら待つ…


…    …    …   ん?    …       …   !?

あれっ…!?      遅っせぇぞっ!

アイツら何してんだっ!


と思った瞬間 
美優から電話が鳴った…


美優
「 パパ…  何か知んないけど…
蘇我駅に着いちゃった…  」


「 はぁ~   …   …   お前そりゃ… 
電車… 間違えただけだろ…  …  」


美優
「 だって…  ママが…  この電車で
いいんだよって言うだもん… 」


電話の向こうで激しく裕子が
美優に何か言っている様子が伺えた …


「 はぁ~   舞浜まで戻ってきな…
俺が舞浜駅まで行くからいいよっ!」


美優
「 うん…  わかった… ゴメンね… 」



まったくっ!  世話の焼ける奴らだっ!

とブツブツ言いながら
車を走らせてディズニーランドの
最寄りの 舞浜駅に到着した…


はじめからこうすれば良かった…


二人とも電車が苦手なのは
解るがそれにしても途中で
気付くとかあるだろっ…!



まぁ…でもすぐに着くだろ。
と思って気を取り直し…
再度スマホをいじくりながら
二人を待った…



  …  …   ? 


んっ?  あれっ!   遅せぇぞっ 。。!?   


嫌な予感…  

いや!さすがにないなっ! 



んんっ! やっぱっ! 

あるぞ…  これ…!



すかさず美優にダイヤルするが
数回呼んで留守電になった…
 


はぁ…?    
何なんだぁ!   
今のは…?

完全に今のは拒絶感があったぞっ!?




今度は裕子にダイヤルっ!!
数回呼んで繋がって瞬殺で切れた… !?



今この瞬間
何かが二人に
起きている…


きっとそれはお互いに
罪を擦りつけたくなるような
イージーな失敗…


それにしても俺は
さっきまで事務所で普通に
仕事をしていただけだ…



成長した愛娘とその愛娘の
母親には見えない妻…

面倒くさいって~  
とか…
勝手に帰ってこいよ~
とか…

言ってはみたが…

内心嬉しかった!

高校生になっても父親に
電話してきて…

パパ~ 一緒に ご飯食べよ♪

だって… …

ほんのついさっきまでは
車の中で 浜田省吾の曲を
口づさみながら…

う~~ん♪♪。
わるくないなぁ~♪
こうゆーの全然わるくないなぁ♪

と陽気な独り言を
言っていたのに…


美優と裕子…
今二人は確実に俺を
厄介者扱いにしている…


人を呼び出しといて…

自分達が電車を間違え…

人を移動させて…

おそらく今 失敗を重ねて…

俺からの着信を…


美優
「 うわっ! ほら!きたっ!
 ママ…  かかってきちゃったよ…
はい!   ママが出て…   」

裕子
「なんでぇ~! 
美優が誘ったんでしょ…? 」

で… 
きっと美優はそこで留守電に…

裕子
「 あっー! きたっー!
今度はママにきたよーっ!」

美優
「ママっ!留守電っ!留守電っ!
早くっ!留守電にしなっー!」

で…
裕子は留守電がわからないから
一瞬出てすぐに切ったのだろう…


僕から…

はぁっー?何してんだっーーっ!!

と言われたくないのはわかるが…

何らかのミスを重ねたのは
あなた達だ…

僕は西船橋から舞浜に
あなた達のミスをカバーしに
来てるのに…

くっそぉ…!そっちが悪いのに
厄介者扱いにしやがってぇぇっ!

今頃どっちが俺に電話するかで
言い合ってんだろうなぁ!

美優
「 ママがパパに電話してよ~。
夫婦でしょ~   」

裕子
「えぇ~ ヤダよ~ 美優がしなよ~」

美優
「なんでぇ~ !  もう…パパなんか
   誘わなきゃよかったよ…。」


きっと二人の間でこれに
かなり近い会話がされてるはず…


で一体何があったのか…?

まぁ…あの二人がすることだ… 

もはや何が起きても 
驚かないし怒らない…

そう思い それだけ守ろうと決めた。

数十秒後…
何故だか美優の電話で
裕子からかかってきた…

裕子
「 パパ~   私だけど…  今どこ? 」

「俺は約束の地にいるぞ…
    約束通りになっ … …   」

裕子
「 …  …   …   」

「 で…   あなた達は今どこに …?
   車を発見してこっちに
   歩いて来てるて感じじゃない
   みたいだけど…  」

裕子
「 ビックリしない? 」

「決心してるから大丈夫… 」

裕子
「怒ったりしない?」

「それも決心できてるよ… 」

裕子
「あのね…   戻ろうと思って
   電車に乗ったんだけど…   」

「うん…  で…? 
   あっ! まさか… お前っ!  
   逆  向いちゃって木更津駅に
   いるとか言うなよ… 」

裕子
「 あっ…  はは…  それはないよ(笑)  」

「で…  どこにいるの…? 」

裕子
「 美優も私も疲れてて…    
   寝過ごしちゃって…   
   通り過ぎちゃったみたいで…
   今ね…  東京駅…   」



それを聞いた瞬間…
車のギアを入れて
Pブレーキを解除して
怒りを抑え込むように
車を発進させた…


「 ふ~ん   本当っ!退屈させない
   でくれますなぁ~   あなた達は… 
   なんだよ東京駅って…  …   …  
  まぁ…いいや  とりあえず駅出て
  どっか店に入って待ってなよ!   
  そうしたら そのまま 飯は
  その店で食べるかっ !   なっ!  
  そうしよう。
   店 決まったら情報送って…  
   向かうから… 」


さっきの決心のおかげで無駄吠えを
しないでやり過ごせた…

裕子は ほっとしたのか 
明るい声で…

裕子
「  うん♪  わかった♪   ゴメンね…
  気をつけて来てね♪  」


お前達が気をつけろっ!
と喉元まで出て引っ込めた…(笑)


「 うん…  わかってるよ。 
  じゃ また後でなっ…  」


舞浜駅から東京駅なら遠くはないし
この時間なら渋滞の可能性は低いから
そんなにはかからず着いちゃうかも…   

なんてことを思いながら東京駅周辺に到着してパーキングに車を停めてとりあえず歩きはじめた…


…  …  …  ?    …  …  …     ん!?

あれ?   店は…?   

俺はどこに向かって歩けばいいんだ…?

そういえば連絡きてねぇぞ… …


再度の…  嫌な予感…

と感じたこのタイミングで…

今度は美優の電話から美優本人が…


美優
「 パパ…  東京駅が広すぎてわからない…  
全然 駅から出れないよ~  」


もはや… 
ここまでくればギャグでしかない(笑)
怒りもムカつきもまったく感じない(笑)


ただ…
慌ててチョロチョロされても面倒なのでそこから一歩も動かないことを指示して目印になるものだけを伝えるように言ってこちらから捜索、救助に向かう!
と伝えて電話を切った … (笑)


僕の美優と裕子とのディズニーランドの思い出はこの日の事が印象に強い…


美優が見せてくれるディズニーランドでの写真…

写真の中の美優と友達たちは皆が弾ける
笑顔で本当に楽しそうなのが伝わってきた…

仲間の中でリラックスした笑顔で写真に収まる美優を見たとき…

悩みながらも以前の高校を中退したあの時の美優の決断は本当に正しいものだったのだと腹の底から納得した…

裕子は今日 来てくれる仲間達にディズニーランドのパスポートをプレゼントして
叶わなかった入院中の美優の想いを叶えてあげようとしている…


デパ地下からの帰り道ディズニーランドのチケットをコンビニで購入したら美優の友達を迎える準備が整なうと思っていたが…

ここで僕と裕子の悪い癖が露呈した…

知識不足なうえに思い込みが強く
ちゃんと調べることをしない悪い癖…

美優の友達たちにプレゼントしたい
チケットは一年間であればいつ使っても良い便利なチケット…

そのチケットを渡したいと思っていた

しかしそのチケットをコンビニでは購入できないのを僕も裕子も知らなかった…


「あちゃー !  そうなんだ~   
知らなかったよ…  」

店員
「 そうなんです~   申し訳ありません」

裕子
「いえいえ…  私達がちゃんと調べなかっただけですから… 」


とりあえずコンビニを出る…


裕子
「 パパ…  どうする? 」

「  うん… 今 何時?」


2人同時に時間を確認…


裕子
「間に合わないよね… … 」

「でも…  間に合ったとしてもどこでその便利なチケットは売ってんだ?」

裕子
「はぁっ!  パパ知ってるでしょ!
ゴルフのコンペで2枚もらって持ってたじゃん…   ほら “使わないからやるよ“て言って待鳥くんにあげてたでしょ… 」

「自分で買った訳じゃないからなぁ…
う~ん。わからん… 」


時間を気にして焦っていた…

とりあえずどこで売ってるかをスマホで調べようとした時…

同級生で不動産屋の太田から着信が入った…

おっ! 救世主現わるかぁっ!
僕は頂いた電話だったが“もしもし“も言わずに

「太田!テレパシーを受信できるんだな!よく気付いてくれた! 本当にありがとう! 」

太田
「 … … 。 何が…? 」

「俺のピンチが分かったんだろ!」

太田
「 えっ… ? 」

「それより太田! 1年間いつ使っても大丈夫なディズニーランドのチケットを売ってる店知らない? 」

太田
「ディズニーショップ…  でしょ… 」

「それは何処にあるか知ってる?」

太田
「ららぽーと… 」


近いっ!  と思った!

しかし残された時間を考えれば行って帰ってくるのは無理かぁ…


太田
「どうしたの…?」

僕は太田に詳しく説明をした…
けど残された時間内では準備を終えて
美優の願いを叶えてあげたいと想う裕子の願いは叶わない…  
と諦めるしかないと思えた… …

太田
「じゃ後で買って届けるよ…   何枚? 」


はぁ… 僕は…  だから時間が足らない…  
間に合わないんだよ!

と思っていたので太田に…

「ありがとう。 でも太田 昼にはみんな来ちゃうから間に合わないんだよ…
ありがとな! その気持ちだけで十分だよ…   じゃ… 切るよ…  」

あまり… 
いい態度ではないのが自分でわかった…

裕子が小声で口をパクパクして僕に何かを言っている…

表情から読み取ると…

恐らく…   
バカ者!失礼だよ!ちゃんとしろっ!

的な事だろうと思ったがそのまま電話を切ろうとした時…


太田
「 なに…?美優ちゃんの友達
すぐ帰っちゃうの…?
別に来てすぐ帰る訳じゃないでしょ?」


あっ!そっか!… (笑)
そうだ!太田の言うとおりだ…

帰るまでに渡せればいいんだった!?

慌てて僕は…

「 そうそう! ゆっくりしててくれるよ♪
太田のその気持ちだけで十分なんだけど出来れば一緒に行動も頂いてもいいですか?  本当!助かりますよ~! 」


太田
「  …  …  …  。 」

「  え … えぇ…   と  …   …  」


太田
「 …  …   で … 何枚…? 」


「8枚… … 。 です … …  」

太田
「 ふ~ん  了解…   届けるよ 」

「 あっ…  うん…  ありがとう… 」


この同級生の太田は母親から不動産会社を受け継いで地元の佐倉で不動産で生計を立てている…

極端に口数が少なく大勢人がいる場ではほとんど口を開かない…

昔からの仲の仲間はよく理解している為
無理に話をふって会話に参加させようという気遣いはとうの昔に捨ててある…

本人も発言が必要な時は促さずとも発言する…

しかしながら誰かが連れてきた仲間の仲間みたいな人で周りを気遣える心優しい人が会話の輪に入った時は僕は秘かにドキドキしてしまう…

仲間の仲間みたいな人が我が地元の飲みの場で会話の輪に入るとゲスト的扱いにどうしてもなってしまう…

自分が会話の中心になってしまう事に多少の申し訳なさを感じるのか…
会話のバランスを計ろうと口数の少ない太田に会話をフルようになる…

ここが悲劇の入り口だと気付くのは地元のメンバーでも僕くらいだ…

しかしこれから起こるであろう悲劇を致し方ないことだと捉えているので僕は気付かない振りをする…

気遣いのできる優しい客人は自分の事ばっかりでは申し訳ないと思い簡単な質問を太田に優しく投げ掛ける…

客人
「 ねぇねぇ 太田くんは仕事は何をしてるんですかぁ?」

僕は心の中で…

あちゃー!  ヤバいぞ…  
とドキドキし始める…

そのまま太田は180°真逆に顔を向け
伝家の宝刀 “フルシカト“ で質問の答えとする…

だいたいの客人は あまりの

“フルシカト“

に…  あれ?  聞こえなかったかな?

と思うらしく再度 タイミングをみて同じ質問を投げ掛けてみる事をしてしまう…

客人
「ねぇねぇ!太田さんは仕事は何してるんですかぁ~?」

またまた太田は180°首振り技術で

伝家の宝刀“フルシカト“

で2度目の質問の答えとする…

どの客人もこれまでの人生で初対面の人にここまでの無視をされた経験は皆無であろうと察するしかなかった…

それでも初めての土地で初対面の人達に囲まれながらも気遣いのできる心優しい客人はテーブルをひっくり返すことをしないで原因は自分にあるのではないかと思いを巡らす…

何度か僕も客人から小声で…

客人
「すいません…  あの人の名前は
“太田さん “で間違えじゃありませんよね…?  」

「 えぇ…  正真正銘の太田でございます… 間違えていませんよ… 」

その確認後 客人は再度 同じ質問をするが
難なく

“伝家の宝刀フルシカト“

でかわされてしまう…

僕は心の中で…

もう諦めてください…     

と思っていた…


それでも心優しい客人は小声で…

客人
「 あの…こうすけさん…  太田さんに職業を聞かないほうがいいんですかね? 」

太田の極度の人見知りを熟知している事と…

この客人の気遣いという優しさを感じた僕は円満を求めて…

「あっ…  うん…  そうですね…  
何かあるのかも知れませんね…  
よく判りませんけど…  
きっとそうなのかも知れませんね…」

奴が職業を聞かれることへのコンプレックスなど一切ないのはわかっていたけど 客人に太田は極度の人見知りだとも言えず…

この時は含みを持たす表現で事態の終息を計った…

客人は何かを納得したように無言で数回頷いて それ以降 太田に気遣いの優しさで話かけることはなかった…

太田は本当に世話の焼ける極度の人見知りなのです…(笑)

けどその反面 人が好きで人の輪の中にいたいと思う想いも強い…

極めて人見知りな極めて不器用な地元の仲間…

その仲間にディズニーランドのチケットの配達をお願いして裕子と二人で美優の仲間を迎える準備のため部屋に戻った…




あと少ししたら…

美優が愛した仲間達が美優に会いに来てくれる…

「多感な時期の繊細な
    子ばかりだぞっ!  」

と心の中で自分に確認させた…

涙を流すのはやめよう


なるべく明るく…   


なるべく笑顔で…


みんなが悲しんでるなら


悲しまないようにしてあげたい…  


それが難しい事だとは


分かってはいる…


それでもそうしたいと思う


彼女達の人生は


これからが本番だ…


人からの手助けが望めない


状況での苦境は


きっと来てしまう…


人生は楽ではないから…


そんな時こそ


美優を思い出して欲しい…


これから僕と裕子が伝える


闘った美優のことを覚えていて


思い出してもらいたい


苦境を越える力にして欲しい


どんな時も… 


とまでは言わないが


なるべく笑顔の方がいい事と


笑顔から物事が好転する事が


あることを知っていて欲しい…


この先で自分に試練が


来るときまで忘れていても


構わない…


“苦しい“と感じた時


“辛い“と思った時


そんな時こそ…


命の瀬戸際で笑顔を見せながら


闘った美優の事を…


そんな時こそ…


美優が見守っている事を…


思い出して欲しい


美優がいないことは


寂しいけれど悲しい事では
ないんだよ


とだけ伝えよう…


そして…


涙は流さず…


なるべく明るく…


なるべく笑顔で…


美優もそれを望んでいるだろう…




















早いもので… …

美優が生きていたら…


今月の18日で22才になっていた


あの日から3年以上の歳月が流れた…


来年の1月20日が来れば丸4年になる…


元気に生きていれば大学4年生…



僕は仲間のおかげで何とか今日まで


生きて来れたと言っていいだろ…


1日 また1日と時間が過ぎて行く


ことに2人が遠く離れて行く感覚


に苦しめらていた…


そんな時 双子の弟から 


「2人は過去にはもういない…

   未来でお前を待っているんだ。
  
   1日また1日と離れているんじゃない

    近づいて行ってるんだよ…  」



その言葉で僕は


怯えながらも顔を上げ前を


見たのを覚えてる…




あの日から大川原さんは


僕の仲間になってくれて


今は一緒に同じ目標を


目指してくれている。


あの日から今日まで


新たな仲間との出会いが


僕に力をくれている。


当然 これまでの仲間も


相変わらず僕を支えてくれている…


新たな仲間達は…


人を楽しく明るくすることに


生き甲斐を持っていたり…


表現することに喜びを感じていたり


作品を作ることに全身全霊を


傾けたり…


自分の納得のために魂を燃やして


周りの人々を感動の渦に巻き込んだり


地域の人達の役に立とうとしたり…


しかしながら皆 謙虚だ…


方々は口々に…


“ そんな立派なものじゃない…

  ただ単に己の好きでやっている。

  けど…  もし本当に誰かの為に

  なっているなら 

  それは…  心底 冥利に尽きる… “


と皆が同じ事を口にする


僕の周りの皆が頑張っている…


新しい仲間も


昔からの仲間も


皆  新しい自分になろうと


日々 己の試練に耐えながら


明日をも知れない不安の中で


実らないかも知れない努力を


日々  黙々と…自分の意思のみを


強い原動力として…



そんな1人1人から

強いメッセージを投げつけなれてる

気持ちになる…


伊集院  静 先生の本の中の言葉に

勇気をもらう…

“悲しみに甘えるな…“

“不運と思うな… “

その本を手にしたのは

別に救いを求めた訳ではなかったが

勇気をもらえる言葉に出会えた…


この世は 探さなくても

必ず出会えるように
 
なっているのか…?


ドン底の暗闇に落ちたら

救ってくれる何かに

出会えるようになっているのか… ?

ありがたいような…

ありがたくないような…


じゃ! 始めっから落とすなよ!


なんて事を今でも思うが…

それも… そろそろ…  

悲しみに甘えてること
になるのかな…?

いろんな事を知った今…

泣き続けていい環境では

ないような気がしてきた…



  





美優、裕子…


先で待ってろ!


いいもんを必ず見せてやる!


俺達は不運じゃない!


必ず証明してやるからなぁ!