小松博士のエコロジーブログ -2ページ目

「ミラバケッソ」のCMに登場する白い動物はラクダの仲間です。

「ミラバケッソ」のCMに登場する白い動物が話題になっているようです。


私の友人の一人は羊の仲間かと思っていたようですが、実はこの動物はアルパカというラクダの仲間です。

ラクダというと砂漠の動物というイメージが一般的ですが、実は南アメリカの高地にもラクダ科の動物が生息しています。


最初のラクダ科の生物は始新世中期の約4500万年前に北アメリカに出現しました。

その後、ラクダ科生物は北アメリカで多様化し、その一部は陸続きだったアジア大陸や中東に移動しました。その子孫種が現存するヒトコブラクダとフタコブラクダです。


北アメリカ大陸と南アメリカ大陸はもともとは海峡で隔たっていましたが、約300万年前にパナマ地峡の形成によって陸続きになります。

それに伴い、ラクダ科生物の一部は南アメリカにも移動しました。

その子孫の一種がアルパカです。

現在の南アメリカにはアルパカを含めて4種のラクダ科生物が生息しています。


アルパカを含む南アメリカの4種とアジアから中東の2種、計6種を残して、他のラクダ科生物は絶滅してしまいました。

化石によると、かつて北アメリカに生息していたラクダ科の生物は、さまざまな形態をしていて、現在のカモシカやキリンのような姿の種もいたようです。


ちなみに、アルパカを含めた南アメリカに生息するラクダ科生物には、背中のコブがありません。

砂漠で生活するわけではないので、特別にコブに栄養を蓄えておく必要はなかったのでしょう。

その代わりというか、彼らは高地の気候に適応して、毛皮が発達しています。

確かに、羊のような毛並みです。

家畜として毛が利用されていて、日本でも、アルパカの毛でできた衣類が販売されています。


このように、砂漠のラクダとは見た目の印象がずいぶんと異なるアルパカですが、

顔をよく見ると、目や口の形はやっぱりラクダだと納得できます。


共通の祖先から枝分かれした種が、環境に適応して様々な形態に多様化した例として、

ラクダ科生物は進化の教材としても興味深いです。

ブドウの表面に付いている白い粉は?

ブドウの果実の表面には白い粉が付いていることがあります。


農薬だと思っている人がいるようですが、そうではありません。

これはブルーム(bloom, 果粉)と呼ばれるもので、果実の表面から分泌されるロウ物質でできています。

食べても問題ありません。

むしろ、ブルームが付いている果物は新鮮なものとみなされ、市場価値が高まるそうです。


多くの種類の果物にブルームが付いています。

特にブドウ、リンゴ、スモモなど、表面が滑らかな果物ではよく目につきます。


果実の皮(果皮)の表面は一般にクチクラ(角皮)と呼ばれる丈夫な膜でできています。

このクチクラに含まれるロウ物質が果皮表面から押し出されたものがブルームです。


クチクラという名前は聞いたことがなくても、リンスのCMでキューティクルという名前は聞いたことがあるでしょう。

日本では、ヒトの髪の毛の表面にあるクチクラのことを特別にキューティクルと呼ぶことが多いようですが、

実は、キューティクル(cuticle)とはクチクラ(cuticula)の英語読みで、本来は、生物の体表を覆う丈夫な膜一般を意味します。

クチクラの成分は生物の種類によってさまざまです。


ブルームを見て農薬だと思う人は、お店で売られている野菜や果物には農薬が当たり前に付いていると考えているのかもしれません。

実際には、現代の日本で一般に販売されている農作物から残留農薬が検出されることは極めてまれで、0.5%以下の割合です。

基準値を超えるものはさらに少なくて、0.05%以下です。

【厚生労働省:食品中の残留農薬検査結果等の公表について】

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/060418-1.html


何らかの目的で、農薬が検出される農作物を市場から手に入れようとするならば、200個以上の農作物を買い集めて、ようやく1個が手に入るかどうかという計算になります。

肉眼で確認できるほどに大量の農薬が付着している農作物を店頭で見つける確率は、ほぼゼロといってよいでしょう。


農薬については意外な話がいろいろあるので、また別の機会に紹介します。