はぁ~
暗い部屋の中自分のため息の声だけが響く
凪沙に会いたい
頭に浮かぶのは仕事の事や自分の事ではなく凪沙の事ばかり
おもいっきりこの手で抱き締めたい


承志はあの時逃げた自分に後悔していた
凪沙の本当の気持ちがわからなくて
一緒に住む事を拒んでる凪沙を見て 自分が思ってるほど凪沙は思ってないんやないか?
と思い悩む自分が嫌で 凪沙からやっぱり今までの関係に戻ろうと言われるのが恐くて逃げた
あの時はすぐ会えるって思ってたから…



俺とみさきは今社運をかけて売り出し中のサプリメントに異物混入が相次いであった為 取引先に謝りに行った
東京本社の売上の大半をしめている商品なだけに 全て総動員で手分けしてあたっていた
方々に行き忙しかったが…凪沙の事を考えない日はなかった
そんなクレーム対応に加えて
自社工場の建設と作る為の機材の打ち合わせをこの部署たった10人でやっていた
しかも新しい開発商品の研究も続けていた為にあまり電話もできなかった
大阪で引き受けた方が使える人も多いし 気心を知れた取引先も多いからやり易い
でも それを本社と支店でのなんやややこしい関係で新しく始めるものは本社から みたいなのがあり 無理だった
そんなくだらない理由で俺と凪沙は会えないなんてな~
1週間か過ぎ 落ち着いてきたごろ 新たな事件が起こった 
このあと売り出し予定の新作商品のサンプルからも異物混入があり 大至急どこで混入されたか調べると同時にもう配送されてしまった取引先からの回収手配に負われた
そんな事が頻繁に起こったら会社自体の信用もなくなる
まず 原因を突きとめる為に今製造過程にある工場全てに抜き打ちで検査をしに行った

どこの工場も承志達が行くとあわてた

ここも他と変わらない設備で 入口を入ると受付があり、そこを抜けるとガラス張りで外からも監視できるような作りの中 長いライン作業の為一列に並んでいた
そんな中で承志は見てしまった
閉ざされたその空間で作業しているのは 明らかに日本人ではない人々
ここの工場では日本人以外の登録はなかったはず… 資料を見直す。
しかも 人数も多い
この工場の責任者は?
名前は…なんで東京の支店長の名前やねん おかしいやろ
承志「ここの責任者はどこですか?」
ガラス越しに大声で尋ねる。

しかし、もくもくと作業しているどこの国の人かわからない人達は
一斉に承志の方を見るがすぐに無言のまま作業に戻る
はぁ~?なんで?
叫び衝撃だった
日本語がまったく通じない
俺の標準語があかんのか?
声聞こえなかったのか?いや 振り向いたんやから 聞こえてるやろ?



後ろからみさきが来た
みさき「承志さん…今回は作業工程だけの抜き打ちやから…」
承志「そうやけど…どう雇ってるんかは調べなあかんやろ」
そう言うとズカズカと部屋の中まで入っていってしまった
みさき「はぁ~」
工場のベルトコンベアーが並ぶ部屋の奥に後からつけたような不自然な扉があった
なんや? 
承がは素早く来客用の白い防塵服を羽織る
エアーの中を抜け作業している人達の後ろを通り扉を目指した

仕方なくみさきも承志の後を追って作業場の中へ入った


みさき「ここで日本語わかる人居ますか?」
30人位の人々が一斉に振り向くがやはり皆一言も話さない
みさきは異様な空気を察した
みさき「承志さん 一旦帰りましょう!ここの人達なんかへんやし・・・・・」

と言ってるのに!
承志は奥にあった扉を開け中へ入ってしまった

みさき「もう・・・・人の話全然聞けへん」

深いため息の後承志の後を追った

奥の部屋の中は長い廊下があり 一瞬刑務所?を連想させるような無機質なコンクリートの壁とドアが並んでいる

そのドアの前にはごみ袋が出でいたり生活の匂いを感じる

承志「うわぁ~」

いきなり服をひっぱられて驚いた

下を見ると子供が自分の服の裾を引っ張ってる

「おじちゃん誰?」

承志「おっ 日本語わかるん?」

承志は子供の目線にしゃがむ

「うん ここの偉い人の友達?」

承志「ここの偉い人はどこに居るん?」

「今日はいないよ いつも土曜日来る」

承志「おとうさんはあの中にいる?」

「いない 違う作業部屋」

 

その時みさきが追い付いてきた

みさき「承志さんその子は?」

承志「ここに居った この子話せるで」

みさき「自分名前は?」

「ゆうき おっちゃんは?」

みさき「おにいさんは みさき」

承志「俺は承志 でそのお父さん居る仕事場は?」

ゆうき「あっち でも入っちゃいけないんだよ」

承志「俺は偉いから大丈夫やで」

ゆうき「ふ~ん」

承志「お父さんは日本語話せるん?」

ゆうき「うん 少しね」

 

ゆうきの案内で迷路のような生活スペースの通路を抜け奥の部屋へ辿りついた

外のインターフォンを押すとすぐに開いて中からアラブ人?のような男が出てきた

「ゆうきここへは来ちゃだめだといった!なんで来た!」

ゆうき「この人偉い人の友達だよ」

「あなた達は?支店長のお知り合いですか?」

承志「えっ・・・・ここの責任者って支店長なん?」

海咲「なんで支店長が?」

次の瞬間誰かに口を塞がれたと思ったと同時に視界が・・・・・・・・

 

目を開ける

まだ頭がぼんやりする 

だんだん目が慣れてきた

コンクリートの壁に囲まれた窓もない部屋だった

奥に人が倒れてる?

ん?海咲?

のたのたと近くまで這って近づく

承志「海咲!大丈夫か?」

海咲「承志さん?ここは?」

承志「わからへんけど 閉じ込められたみたいやな」

 

 

つづく