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20周年記念公演
『はるのこころ~『伊勢物語』惟喬親王章段より~』

脚本・演出 千野裕子




2025年10月13日(月祝)
@せんがわ劇場

脚本・演出と在原業平役の千野です。
この度もご声援と様々な形でのお力添えをありがとうございました。

 

20周年記念公演。まさかの在原業平生誕1200年。
それじゃあ『伊勢物語』でいくしかないということで、シリーズ4本目でした。
最初に二条后章段(かすがの)を扱い、次に斎宮章段(ゆめかうつつか)をやったあたりから、
「いつか惟喬親王章段もやる」

ということは言っていました。「ゆめかうつつか」に惟喬親王出しちゃってるし。
それなのに……今回、脚本を書くのがとても大変でした。
ここ最近、八犬伝に代表される「原作そのまんま書けば成立しちゃう」系の作品ばっかりやっていたので、オリジナル部分多めで構成しなきゃならないのが久しぶりだったというのもあります。
でも何はともあれ、「いかに惟喬親王を出家させるか」に悩まされました。
史料上、「病のため」とはあるのですが、その後それなりに長生きしているし、何よりそれじゃお話が盛り上がらない。
さてどうしよう。諸資料から分かる惟喬親王が出家する前の数年の出来事をにらみ続け、
・業平が渤海使の対応にあたっている
・藤原順子(五条后)が崩御している
・藤原良房も惟喬の出家の数か月後に亡くなっている
あたりを使えないかなぁなんて考え始めているところに、
・ちょっと前に藤原明子(染殿后)の四十賀があった
ことに気づいて、
「明子といえば、なんか怖い話あったな!!それ使っちまえ!!」
と、なったわけでした。
明子の話とくっつけることを思いつかなかったら詰んでました。ほんとに。

大筋はそんな感じでしたが、今回はかなり細かくいろんなところに『伊勢物語』の要素を散りばめています。
参考までに、使った『伊勢物語』の章段を挙げておきますね。
4,6,16,19,23,65,67,68,79,82,83,84,85,106
メインで使ったものからこっそり紛れ込ませたものまであります。
是非是非、『伊勢物語』片手に確認してみてください。

さて、役者としては、4回目の業平(『花にあらず』の「男」も含めれば6回目)。慣れたもんです。
今回はシリーズのなかで一番後ろの年代になるので、リアルな年齢はだいぶおじさんなのですが、そのあたりはあまり意識せず、これまでよりちょっとだけ大人、ぐらいのつもりでやりました。
演出もやっているので、なかなか稽古の時は役者に集中できないものですが、そんななかでも今回は役者として結構楽しんじゃいました。
だって惟喬親王との喧嘩が楽しいからね!
ほんと、毎回、「今日もバチバチしたぞ~!!」と大満足で帰宅し、本番を楽しみにしていました。
そしてそのまま飽きることなく本番も毎回新鮮な気持ちでやりあえました。最高。
ただしラストの仲直りはむず痒すぎて、ちゃんと固まったのは本番直前だったと思います。ごめんね。
あとは感情爆発の高子様とのやりとりも楽しく、やっぱ好きだなぁと心底思わせてもらえました。
基経を挑発するのもうきうきするし、常子に叱られるのも好き。
自分のことばかり述べてしまいましたが、90分弱の短い作品でしたが、今回はみんな「セリフの掛け合いで勝負!」という意識をしっかり持って、それぞれの役割をきっちりこなしてくれました。これが20年のチームワークというもの。

スタッフさんのお仕事は言わずもがなの素晴らしさ。
前回の『紫式部の日記』が「鏡の国の寝殿造」ならば、今回は「凍れる邸で春を待つ」とでも言いましょうか。
積もる白い雪の世界に、照明がバチっとハマって桜を幻視させる。
そこに音響と衣装も美しくかみ合って、私の書いたもの以上の世界が立ち上がっていました。嬉しい……。

『伊勢物語』に関しては、もうやりたい章段はやり尽くしました。

だから、たぶん今回で最後です。

パンフにも書きましたが、在原業平という男に導かれ、救われて今があるようなものです。

それでも、そろそろ、業平なしで走る時が来たみたいです。

信乃くんじゃないけど、「それじゃ、さようなら」かな。
……とかそんなこと言って、軽率に再演とかしだしたら笑ってやってください。

さて、次回は、いつかやりたいと思いつつもためらっていた『うつほ物語』についに手を出します。
また劇場でお会いできたらうれしいです。

2025.10.26 千野裕子

ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。

惟喬親王役を演じさせていただきました久保田です。

 

劇団20周年と在原業平生誕1200年ということで、劇団に馴染みの深い『伊勢物語』の公演。そして今回の惟喬親王章段は結構前からいつかはやるよ、と言われていたものだったので、とうとう来たかという感じでした。

実は私が客演として初めて出演したのが伊勢物語の「ゆめかうつつか」の惟喬親王役だったので、20周年で再び演じられることを嬉しく感じております。

 

一度やった役ということもあり、過去の記憶が蘇ってくるのですが、昔課題だったのが、業平との心の距離を感じる、でした。

今回よりも物理的な距離は近い(肩を組んだり、デコピンしたりしてましたw)けれども、やはり人見知り大爆発の頃なので、心のATフィールドが出ていたのでしょう。

そのころから考えると、(中の人の)心の距離は近づいたんじゃないですかね。

軽口を言い合うところとか自然になった気がします。

 

今回に限らず、千野さんの脚本にはいろんな仕掛けがしてあって、業平が行平に「親王に父上の姿を重ねている」と言われるシーンがあるのですが、その父親である阿保親王は、過去のさらぬわかれで私が演じていたので、「それ同じ人やで」と分かる人には分かるものがあったりとか。同じ作品をやってきた妙といいますか、それも楽しみポイントでした。

 

そして今回の公演の感想を一言でいえば、大大大満足です!やり切りました!

3回とも良い喧嘩、良いラストを迎えられたんじゃないかなと個人的に思います。

なんかBLっぽいみたいな感想をいただいたりしましたが…そうでしょう!

ちゃんとヒロイン?として見ていただけたのならそれもそれで正解です。

 

なんとなく自分の中では久保田第1章完、みたいな気持ちでおりますが、まぁおそらく次も出る気がするんで引き続きお付き合いいただければ幸いです。

 

最後になりましたが、ご来場いただいた皆様、及び役者・スタッフの皆様ありがとうございました。20周年という記念すべき公演に出演できたこと非常にうれしく思います。

ぜひ次の公演でお会いいたしましょう!

 

藤原高子役を演じさせていただきました、新田です。

20周年記念公演「はるのこころ」へご来場くださり、ありがとうございました。

 

 

今回の演目は惟喬親王章段ということで、高子はあまり出ないと思っておりました。

高子として出演打診をもらった時は、元カノとして冒頭にちょろっと出るくらいだろうと思いました。

けれど後日台本を読んでみましたら「あれ? なんか出番多いな?」となりました。

びっくりです。

こんなに高子と話してる暇があったら、親王と話してなさい。

だからあんな喧嘩になっちゃうんだぞ、と思いました。まったく、これだから言葉が足りない男の子は…。

 

と、そんな元カノの余裕をかましながらも、演者本人は台詞を覚えることひとつにも余裕がなく、

みなさまに相変わらず多大な心配と迷惑をかけながら、本番に挑むことになったわけです。大変。(周りが)

 

 

しかしもう20年もつきあってくれていると、劇団メンバーはなれたもので、

こんな危なっかしい演者を舞台に立たせてくれるわけです。感謝しきりです。

なんとか報いたいんですが、どう頑張ってもなかなか台詞が入らないのはなんででしょう? 加齢でしょうか?

 

しかしそんな旗上げから20年の年月を重ねた私でも、

髪を結い上げ、爪を塗ってもらい、メイクをしてもらって、

みな様の手で可愛いお姫様に仕立て上げて、舞台に送り出していただきました。

可愛いは!作ってもらえる!(他力本願)

 

そして待ち受ける舞台は、入るだけでテンション上がる冒頭の選曲、美しすぎる照明、雪と桜が混じり合う麗しい舞台――なんというスタッフさんの魔法でしょう。

本当に、感謝を尽くしてもしきれません。

団員のスタッフさんたちも、外部のスタッフ様たちも、本当に本当にありがとうございました!

めっちゃ上がりました!

 

 

そんなおかげさまで、「お前は稽古でCの成果物を納品し、小屋入りでAを納めるな」と演出に叱られながらも、

ゲネあたりから藤氏の女として素敵なお姫様になれました。

そんな私に付き合ってくれた共演者のみんなも、本当にありがとうございました。本当に。特に私と絡んだ方たち。

なかでも兄上と業平は、絡む量が多かったので、演者としては足を向けて寝られぬ感謝です。

でもなんか、役としては「兄と在五殿には手をかけさせていいか」みたいな甘えがあったかもしれません。いやいや、いけない。ごめんね、ありがと。

 

 

そんなわけで、今回もたくさんの人に支えられながら、高子として舞台で生かしていただきました。

そして、そうやって藤氏の女として成長していく高子を見守ってくださった、ご来場のみなみな様!

本当に本当にありがとうございました!!

 

 

これまでの20年の間も、そうやってたくさんの人々に支えていただき、劇団も、私も、今日まで辿りつくことが出来たのだと思います。

重ねてになりますが、20周年記念公演を支えてくださったスタッフのみなさま、ご覧下さったお客様方、

そして赤子が成人になるまでの間、一緒に活動してきてくれた団員のみんな、本当の本当にありがとうございました!!!

 

 

 

 

 

 

 

 



​ご来場、誠にありがとうございました


紀常子役 松です


常子はキシャ伊勢物語、オリジナルキャラクターでした。父(有常)から「変わった娘」と言われていましたが...割と普通の人だったんじゃない?と思っています。

観に来てくれた友人に「もう本体じゃん」と言われたんですけど...「変わった」にかかっていないことを願うばかりです。ち...違うよね...違いますよね...(真実を知るのは怖いので追及しないことにしました)

常子よ、経済的に働く必要はないのに、暇だからと宮中を駆け回っているのどういうことなの。まあ、暇だからいいのか。


今回の濃ゆい登場人物の中では、自分で自分の幸せの基準を決めていて、さっぱりしていて、なんだかいろんなことに巻き込まれたり、夫が夫なので()いろんな噂をされたりしているけれど、なんだかんだ自分軸で生きやすそう。

理解ある妻...というよりも、興味はそんなにない。多分。親王の出家も単なる情報共有。また言葉交わしてないわこの人たちって思ってた。(個人の解釈です)


そしてストレートに言葉を伝える人。言葉を交わしてきなさいよ!の台詞は回を増すごとに火力が増していて。ほら、愛情ですよ、愛情。

業平のことはそれなりに好きだったんですけど、独占欲はないし、高子様にも気持ちがあるのも知ってますし、渤海使のために毎晩帰ってくるんかいって本気で思ってた。

私も高子様love飛び出すハート

でも正妻という立場は事実なので、高子の背中の押し方に非常に悩みました。

正妻ですけど?マウントにならないように、そして常子は年上。大人な余裕を見せるために、高子様に幼く作っていただきました...感謝魂が抜ける


階段を降りる時に業平が手を差し伸べてくれるシーンがあったんですけれど、あれは本番でしかやっていなかったんですよね。ゲネ終わりに「やるね」と言われたきりでした。練習するの忘れてました。

衣装靴が大きめで、割とすぐ脱げるので業平には立ち上がるのを待っていただきましたにっこりたまには常子に時間使ってくれてもいいよね!

割と早いタイミングで業平に手を離されてしまうので、自分がはけるまで空中で手を差し出してました。特に打ち合わせはしていないけれど、2日目の夜公演では若干長めに手を差し伸べてくれていたきがします。

リアルな世界では言葉を交わしていないので、私も常子に怒られそうです。


常子と高子様、文子様との心の距離の違いにも悩みましたが、最も苦戦したのは「可愛く転ぶ」でした。転ぶ=受身をとって次の動きに備えるがここ最近の役で定着しすぎた結果、「転び方が毛野(八犬伝)」と言われて大苦戦。敵討だ!は今回いらない。軍率いなくていい。


そうだ!か弱い方はきっと体幹がないはずだ!と意気込んだところ、バランスを崩してリアル転びをしたり、明子様の美しい横顔を独り占めしているのに怖がらなければいけなくて、なんと忙しいこと。


まあでも、初参加の公演(伊勢物語「さらぬわかかれ」)では、自分のことでいっぱいいっぱいすぎて、多分こんなこと考えられていなかったよな...キャッチボールできていなかったよな...と。

御簾の上げ下げとかチケットもぎり係も兼ねてだと思ってお受けした客演依頼。今ではこんなに多くの方と関われているなんて...想像していませんでした。

衣装、受付、楽屋、舞台、照明、音響、そして皆様のオペレーションがなければ成り立ちません。

キシャに関わって下さった皆様に感謝を込めて


そしてちょっぴり携わった「きしゃぼん。2」

多くの皆様にお迎えいただけたようで嬉しいです。ありがとうございます。


またどこかでお会いできますように

(Photo by Y.Yamabuki)


最後まで読んでくださった皆様へ

楽屋に行ったら、ネイルを塗り合うお姫様がいらっしゃったので動画にしました♪癒されてください笑



平和すぎる。可愛い。






 紀有常役を演じさせていただきました、吉田です。

20周年の節目となる公演も無事終了しました。ご来場いただいた皆様、スタッフの皆様、本当にありがとうございました。活動20年となりましたが、活動できるのは皆様のご支援あってこそだと切に感じます。

 

 さて、表題のとおり今回、私個人としては久々の本公演出演と相成りました。そして、これまで何度も利用させていただいているせんがわ劇場、実は今回初めて立つ舞台でした。これまで舞台設営や制作周りでの参加だけだったんですね…

アナザーワークスには度々出演していたのですが、そちらは小劇場公演でしたので…出演者一同にも驚かれました(笑)

そんなわけで、劇場ホール規模の演技や発声など、上演前は地味にプレッシャーを感じておりましたが、終わってみれば個人的には気持ちよく芝居ができたと思っております。

 

 今回演じました紀有常ですが、在原業平と惟喬親王の親戚関係であり、「とも」の間柄でした。今回メインとなった二人のような関係性にはなれないものの、年長者として、親族として二人を優しく支える役回りでした。立場上、業平の思う「友」というよりも、文字通りの「供」の側面が強かったかもしれませんね。

花見の席や和歌のやりとりなど、楽しい思い出になるといいというのは本心ではありながらも、藤原氏との政争に敗れてしまった哀愁、親王への後ろめたさ、いたたまれなさ。業平に対しては、軽口を言い合いつつも、自身の親族(親王=甥、娘)を気にかけてくれる信頼感。演じるうえではその辺りを意識していました。

また、私個人としては、節々で「言葉が足りない」というセリフを印象付けて、終盤の常子から業平への叱咤激励を際立たせたい、際立たせられたらいいなあ…という思いもありました。(親王と業平の喧嘩の場面がクライマックスなのは間違いありませんが、私はその前のシーンがあってこそだと思っています。)肝心なところでのすれ違い、紀親子で放った「言葉が足りない」がキーワードとして皆様に届いたならこれ幸いでございます。

あとは、お芝居の進行上、「親王が出家したのは有常のせい」などと言われてしまった(『伊勢物語』上ではそんなことはないそうです)妻の出家の話は、せっかくなので哀愁たっぷりで演じさせていただきました(笑)。しんみりする場面が多かったのですが、演じてみるとシーンごとに特徴がある面白い役でした。

 

 最後に、重ねてになりますが、ご来場いただいた皆様、関わってくださったスタッフの皆様に感謝申し上げます。

今後とも、気力体力続く限り、劇団の活動に尽力していきますので、引き続きのご愛顧をいただけますと幸いでございます。

本当に、ありがとうございました。