第32話「女の友情なんて・・・」
「もう最悪ぅ。」
「なんだよ、いきなり。」
「だってさ、先生、聞いてよ。
学校で△△高校は絶対無理だって言われたんだもん。」
ハァ・・・ヽ(;´Д`)ノ
優香ちゃん、そりゃしょうがないんじゃないの?
君、いつ勉強してましたっけ?
君が真面目に勉強しているところなんか見たことありませんけど。
「もうマジムカツクぅ・・・。『真面目に考えてるか?』とか言うんだよ?
あの先公、ホントあったまきた(怒)」
そりゃ学校の先生の言うことが正しいよ、なんて言おうもんなら、
今度は俺が集中砲火を受けちゃうから言えないけどねw
ま、今まで遊びほうけてきた罰ですね。
そういうのをな・・・
自業自得っていうんだよヾ(´▽`)
よく覚えておきやがれっ!!
「まあ、学校の先生もチャレンジ校より、
確実に入れる安全校を受けて欲しいんだよ。
別にお前だけにそんなこと言うわけじゃないしさ、
あんま気にするなって。」
俺もいいこと言うなぁ。
ま、この時期になりゃ、誰だってナーバスになるもんだしね。
大人の包容力でこのワガママ娘を見守ってやろうじゃないですか。
「絶対ウソ。」
「・・・・・・。」
俺の包容力っていったい・・・_| ̄|○ililil
「な、なんでだよ。」
「だって、静香なんか○○女子受けるのに、
ダメって言われなかったんだよ。オカシイよ、絶対。」
「別におかしくないと思うけど・・・」
そうなんです。静香ちゃんは、第一志望校を
都内の○○女子に決定したのです。
しかも何と、学校推薦で受けることに!!
どうやら、このことが優香にとっては面白くないようでして・・・。
「おかしいよ、だって、私と静香なんて成績かわんないじゃん。
何で静香が推薦でさ、私はレベル下げろとか言われるわけ?
絶対納得いかない。」
とてもアツイと思われていた女の友情もこんなもんかい・・・。
っていうかさ・・・
いつからお前と静香の成績が
変わらないんじゃ、ボケッ!!
(;゚皿゚)キー
「
ま、まぁまぁ、お前だって頑張れば大丈夫だって。」
「・・・先生、なんか適当に言ってない?」
(゚Д゚;≡゚Д゚;)
ギクッ(汗)
ふんっと俺を一瞥すると、またがっていた椅子から立ちあがり、
「帰る」とカバンを肩へぶらさげる優香ちゃん・・・
「か、帰るのか? 自習していかなくていいのか?」
「もういい。先生、冷たいし。」
そ、そ、そんなこと無いってば(汗)
つうかなかなか鋭いじゃん。
お、俺はだな、自分の生徒は分け隔てなく平等に心配して
平等に面倒みてるんだからさ(棒読み)。
「いいっていいって。ま、静香のこと、しっかり見てあげなよ。
じゃね。バイバイ。」
そ、そんな冷たいこと言っちゃイヤイヤ。
あ・・・ホントに行っちゃった・・・ヽ(;´Д`)ノ
玄関の窓ガラスを通して、向こうに歩いていく優香の姿が見えます。
何だか寂しそうだなぁ。
静香、優香、智恵、この仲良し3人組も
最近じゃ一緒に行動することが少なくなってきました。
学校じゃどうなのかは分かんないですけど、
少なくとも塾じゃ一緒にいることがほとんど無いんだよね。
この時期になると、クラス授業そのものがほとんど無くなって、
今は生徒一人一人が自分の取りたい講座を好きに選んで
受講する受験システムに移行しちゃってるんですよ。
要するに、自分の苦手だと思う教科に絞って、
授業に出てくればいいわけなので、
だから、優香と静香の出る授業もバラバラなんです。
それにしても・・・
まいったなぁ。後で優香のフォローしとかなくっちゃなぁ・・・
やっぱり優香も俺の生徒だし、心配だからなぁ。
ま、優香は併願推薦でなんとか保険つくらせて、
それから希望校を受けさせてやればいいか。
ああいう思い込みタイプは、
自分の思い通りにやらせるのが一番なんだよねぇ。
塾側の方で、「ここを受けた方がいいんじゃないか?」とか
希望外の学校を受けさせたところで、あとで必ずと言っていいほど
不満が吹き出るに決まってるからね。
生徒の性格を見極めるのも大切な仕事なんです。
俺が中学生と遊んだりするのも、
けっしてイヤラシイ気持ちから来てるのではなく、
ただただ彼女たちのことを見極めようと思ってるからこそ、
仕事だと思ってつきあってるだけなんです、ハイ・・・
あ、嘘つきました。スミマセン・・・
「先生、今、時間あいてますか?」
「あれ? お前、いつ来たの?」
静香がノートと筆箱をもって来てました。
「私? さっき来たとこ。何でですか?」
「いや、さっきまで優香がいたんだけど、知ってる?」
「ううん。へぇ、優香来てるんですか?
今日塾に来るって言ってなかったけど。今どこにいるんですか。」
「さっき帰った。」
「ええええ、もう!? 何しに来たんだろう・・・。」
愚痴を言いに来たんだろうねぇ・・・。
まさか、お前のことをブチブチ言ってだなんて、
口が裂けても言えないよ・・・。
「そっかぁ。あ、先生、ちょっと見て欲しいんですけど。」
と、優香のことはあまり気にすることなく、
ノートを「はい」って俺に渡す静香ちゃん。
ホント女の友情ってこんなもんかい・・・ヽ(;´Д`)ノ
「だからね、これを俺に渡されても困るって言ってるでしょ!?」
静香に渡されたノートは、作文練習用のものでして・・・
何で数学講師の俺が、作文の
添削をするんだよ?!
(;゚皿゚)テメコノヤロ
「だって・・・先生に見て欲しいんだもん。」
そ、そんな甘えた声を出したってダメなものはダメー。
「けちっ。」
不満そうな顔でノートを受け取る静香ちゃん。もう、しょうがないだろ。
俺が添削したんじゃ、ろくな添削になんないさ。
それに、俺が相手だったら・・・
交換日記になること間違いねぇじゃん(汗)
「もうズルイよ、先生。最近、全然教えてくれない。」
だからさ、それは不可抗力でしょ?
お前さ、推薦なんだもん。試験科目って・・・
作文と面接しか無いんだから。
「じゃあ、今度、面接練習やってください。」
ん・・・それぐらいならしょうがないか・・・
じゃあ、今度時間あるときな・・・
「やったぁ♪ 約束しましたからね。じゃあ・・・
今度、先生の家で面接の
練習ね♪」
ゼッタイレンシュウニナラナイノガメニミエル・・・。
「だいたい俺の家でなくたっていいじゃん(汗)」
「1対1の面接だから2人きりの状況が必要なんです♪」
本当にいろんなこと考えるなぁ、お前は・・・ヽ(;´Д`)ノ
受験まで・・・あと29日・・・。