「雪中キャンプ体験記」(後編)


前回までのあらすじ。

豪雪地帯へやってきた夫婦。

氷点下にもめげず、雄々しく生きる。

XCスキーも体験し、すっかり雪中キャンプに魅せられた。

しかし吹雪は降り止まず、サイトは雪で埋もれていく。

撤収は出来るのか?

無事千葉まで帰り着くのか?!

そんな中で抽選会が行われたのだった。

果たして夫婦の運命や如何に!


<<抽選会イベント>>(メインイベント)

この雑誌の恒例となった豪華景品があたる抽選会がメインイベントである。

私にとっては雪中キャンプ自体がメインイベントであり、そこで行われる行事全てがメインイベントなのだが。

過去にはルーフボックスやマウンテンバイクまでも景品として挙げられていたが、今回はだいぶ小規模となったので景品もだいぶショボクなった。

しかし当たる確率はぐうーんとアップした。

成田ゆめ牧場でのイベントのときは400家族1000人以上もあつまり、もう何が何だかという状況であった。
それに比べ11家族30人弱である。
これは期待できそうだ。


抽選はガルヴィスタッフの一人が前に出てみんなとジャンケンする形式である。
ステッカーやパワーマッチ(太いマッチでそのまま種火になる)といった小物がつづくが、いかんせんジャンケン弱ぞう。
全て一回戦負け。

うーむ。今回の目玉は「ダッチオーブン」である。
蓋にも炭を乗せることができ、まんべんなく加熱できるという代物である。

案の定、負ける。

欲しかったものではないがジャンケンに勝てないのが悔しい。

おぉ、お次は新潟のお酒だ。
夫婦で違う手を出すが、やっぱり俺は負けた。

かあちゃん頑張れっ!

お?祈りが通じたか二回戦でいきなり独り勝ちっ!

す、すばらしい。

初めての景品ゲットだ。うんうん。

その後もう一発「ダッチオーブン」が出てきたが、お父さん達がかなり熱い戦いを繰り広げ、一番声のでかいおっさんが気合で持っていった。

私は1枚ステッカーを戴くことができました。

更に昨夜お風呂であった家族から、あり余っているということで「パワーマッチ」を頂いた。

ああ、ありがたい。

ライター忘れてたんだよね。
「拾う神あれば棄てる神あり」だ。

あ、逆か。

この様子と全体写真をかなりパシパシ撮っていたので掲載されるかもしれないな。






<<お昼ごはん>>

早速頂いた「パワーマッチ」で暖をとる。

ちょっと着きが悪くて文字どおり「力づくマッチ」になってしまった。

お昼をすっ飛ばして、速効で撤収しようかとも考えたのだが、ひもじい思いをしながら雪の中の作業では、気持ちも萎えるし正確な判断もできまい。

まわりには午前中に撤収し、抽選会終了と同時にチェックアウトしていった家族もいた。

アリとキリギリスみたいなもんかな?
キリギリスさんがXCスキーをして遊んでいる間、アリさんはせっせとお片づけをして…

あーでもどうせなら、めいいっぱい遊んでからのほうがいいな。

やっぱり私はキリギリスさんなのね。

さあてあったかいもの食って撤収としますかぁ。

お昼は鍋焼きうどんだ。
セブンイレブンで売ってるアルミの鍋セットを火にかけるだけ。
以前スキー場の駐車場でやったことがあるが、なかなかイケルし簡単でGOODなのだ。

またしてもモウモウと湯気があがる。

あーうまいっ!

寒さがおいしさを倍増させる。

外は(ここも外だけど)雪が強くなってきた。
少し風も出てきてそれはそれはすごい風景だが、快適な場所にいると余裕をもって眺められる。

まったくしょうがないなぁ、ってな感じである。


<<撤収>>

うどんをたいらげると1:30を回っていた。

既に残っている家族は3組になっていた。
ガルヴィスタッフも既にいない。
15:00チェックアウトである。

うーむ、1時間半で終るかな?

意外と使った装備は少ない。
ホワイトガソリン系は全く使用せず。テーブルもオリジナルのスノコテーブルだけだし、椅子だって一脚でクーラボックスに座っていたくらいだ。

紹介が遅れたが、家のリビング&ダイニング&キッチンは奥行き2.5m、幅は2mなくて、高さに至っては170cm位か。
さらにそこに雪の重みで天井が下がるものだから二人とも中腰になり、
腰が痛いったらありゃしない。
たまに外で(うんこらせー)と伸ばしてやるのだ。

そんなスペースで大人二人がチョコンと腰掛けてご飯を食べている姿はかわいらしい以外の何物でもないな。

ま、そんなもんだからしまうものはそんなにないはず…
かと思いきやテントの中がフル装備だった。

何せ、寝袋6にエアマット2、毛布1、ブランケット2、銀マット2。
カミさんがテントの中で格闘した後には、でっかいポポロ(私が好きなお菓子の名前)の山が出来上がっていた。

車への積み込みも、右側と後ろのドアが雪で開かないので左後ろのドアだけで積み込みしなければならず、なかなかシンドイものがあった。

やっとこ細かいものが積みおわったのは2時半を回っていた。

さあてテントとタープをぶっ潰せば終了だ。

テント&タープ自体は簡単そうだが、ペグ抜きが問題だ。
フライからぺグダウンしたロープすら見つからない。
まるで大きなプリンの縁を生クリームで囲ったような状態である。
スコップがスプーンに見えてくる。

ああ、なんておいしそう。

おぉボケている場合ではない。

掘って掘って掘りまくる。

あれぇ?こんなに深く埋めてないんだけどなぁ。

「隊長―っ、発見しましたぁ」

「よしっ、ご苦労っ!!」

あぁ馬鹿夫婦。

で、テントをたたむわけだが、雨の日の撤収は経験あるけど、吹雪の撤収ってどうやるのでしょう?

答え、そのままやります。

相変わらずの氷点下なので雪が積もっても濡れはしない。
芝生と同じだと考えればいい。

雪が小降りになった間隙をついて撤収する。
まったく乾燥しているわけではないので後で干すことにして、ここではグルグルッと丸めておく。
(フライは結露でびしょびしょだった)

いい忘れたが実はこのテント今回がデビューなのである。
12月27日に御徒町で衝動買いしたもので、練習でしか広げていない。
この練習というのが笑いもんで、元旦に近所の公園で張っていたのだが、
ギャラリーのおばさんが「お泊りですか?」と聞いてきたのだった。
まあ元旦にテントの練習をしていた夫婦も変だったかもしれないけど、その質問はないだろうに。
とまあ、デビューコンサートが武道館的な華々しいスタートを切ったわけである。

さてタープもちゃっちゃっとしまって…
うーむ。鳩目が壊れとる。

♪やっぱり、僕はブルシーさ。色は違うがブルシーさ。
(泳げタイヤキ君より)

強度の点でどうしても限界が低かった。ま頑張ったほうか。

積み込みを終え、車を掘り出すと3時半を回っていた。
残っている家族はいない。

誰もいなくなった管理棟にカンジキを返し、温泉センターのフロントに、入り放題だったけど1回しか使わなかった入浴券を返しにいった。


<<帰路>>

キャンプ場を後にする。
来たときと同じくらい、いやそれ以上かも知れない吹雪の中を走る。

よくこんな中でキャンプしてたなぁ。
心なしか会話にも余裕が生まれる。

気温は2度。

とりあえず車は動いている。
銀マットで完全包装された4年目になるバッテリも問題なし。

途中のスタンドでライトについたの氷雪を落とす。
フォグランプなんぞ1回り大きいラリー車の様になっている。

地元の人にしてみれば、まだまだ今年は少ないほうだそうだ。

ボコボコになった轍を慎重に進む。

流石新潟。
チェーンを巻いている車なんぞいやしない。

全然、普通の週末の風景である。

程なくして小出ICにつく。
乗る車はほとんどなく、あっても関東ナンバである。
もうしばらくチェーンは外せなさそうだ。

六日町IC、石打IC辺りのトンネルを2、3抜けると雪はやみ、青空が広がっていた。

いやっほー。気持ちいいねぇ。

キャンプ中こんな天気だったら最高だったろうけど、きっと放射冷却により雪が降っているより寒いだろう。

オールシーズン+4駆でいけそうな状況なのでチェーンをはずす。
外したチェーンを背負ったタイヤにくくりつける。
これは汚れたチェーンを社内に持ち込まないで済むというのと私のこだわり。
スコップを背負ってる4駆をたまに見かけるが、あれと同じようなものだろう。

ファッションでやるのはナンセンスだが、非常用スコップがすぐ取りだせる位置にあるのは合理的である。
自己弁護。
いまエスクードは2本も背負ってたりする。

チェーンをはずして3kmで土樽PAが見えてくる。
それも全車強制収容。
ここでチェーンを外せと放送されている。

あー。ここで外せばよかったンじゃんかぁ。
土樽は関越トンネルのすぐ近くのPAである。

ところがこのPAを出るとトンネルまで2kmというところで渋滞である。
ノロノロではなくガッチリ止まったまま動かなくなった。
トンネル内での渋滞をさけるため流入規制らしい。トンネル出口は赤城まで20km以上の渋滞だそうだ。
おお、世間はスキー渋滞だったかぁ。

久しぶりだな。

余裕をかましてる場合ではないけど、する事もないのでボケーッと周りの車を見渡す。

スノボーが多いね、やっぱり。
ナビとルーフボックスの普及も著しく感じる。
でかい4駆より箱形のワゴンが増えた。
皆さん荷物が増えたのね。
人のことは言えないけど、器がでかくなるから荷物が増える。荷物が増えるから器がでかくなるんだな。
だから私はエスクードで十分。自己完結。失礼。だって暇なんだもん。

やっとこさっとこ赤城に着いたときには8:30であった。

気温はー7度!

なんと新潟よりも寒い。

車の屋根に乗っていた雪は帰る間に溶けてなくなるだろう、と思っていたが、カチカチに凍りついている。
うーむ、このまま多分千葉まで持っていってしまいそうだ。
路面も凍っている。

渋滞を避けて下道(17号)を行ってしまおうかと考えたが、凍結路が続くんじゃたまらない。
ちんたらちんたら関越を練馬まで行くことにした。

通過タイムから状況を想像してくだされ。
上里SAにPM10:00。
練馬にAM0:00。
途中ご飯休憩で自宅についたのはAM1:30であった。
もちろん本日月曜日はお休みさ。


<<備品整理>>

1月26日(月)は備品整理の日。

流石にナベを磨いたりナタを研いだりはしないが干し物だけは一丁前だった。

アパートの柵といわず、ベランダといわずブルーシート、テント、フライ、ロープ、ペグ、椅子、干しまくる。

あ、大家さん、どーもこんにちは。

う、何のお仕事しているのかしら視線だ。

スタンドで車を洗車機にかける間、ホースを借りてチェーンとスコップとスキーキャリアをゴシゴシ洗う。

それをまたベランダに干し、完全に乾してから錆止めをして収納。
おぉ普段はネクタイもほっぽりなげてるのに、なんて豆ゾウなんでしょうね。
あとは箱根細工のようにコンテナなどを押入にうまく納めれば終了。

お疲れさまでした。

あぁ、また行こうね。



(いるかいないかわからないけど、雪中キャンプに行く方へのアドバイスを以下に記しておきます。)

(多分、自分たち以外に、いないんだろうけど…もし行くようでしたら、参考にしてください。)


<<ノウハウ>>

(足元)

ソレル社のブーツが脱ぎ履きしやすさ、暖かさかたの点でベスト。
長靴と底の厚さを比べてその差に驚いた。
購入せずとも代用品はある。

長靴は必需品。
防寒の意味からかなり大きなサイズのものを用意して厚い中敷をして綿以外の厚手の靴下を履こう。
ロングスパッツがあればGORE-TEXのシューズも可。

今回は運良く無料レンタルされたが、カンジキはあるとうれしい。
脱着が面倒だが小さなスノコを靴にくくりつける手もあるかな。
でも脱ぎ履き、脱着など細かい手間の有無が寒い中では大きなファクターをしめてくるのだ。
グローブ、手袋をしたたまま出来るかどうかが判断基準になるだろう。

以下は大活躍だった自作靴チェーンである。






(ウエア)

インナー(下着)にTシャツは適さない。
というか綿は汗をかいたら冷えてしまうので、汗かきには致命的だ。
まだ高価だが新素材のインナーがうれしい。
中間着はセオリー通り塗れなくて蒸れないフリースを着用したが、そんなに気を使わなくても良さそうだ。
シャツにトレーナ、セータでも大丈夫だろう。

アウター(上着)は防風、防水、防寒機能を持つものとなる。
私はGOREの雨合羽を着ていたがスキーウエアでも十分。
事実カミさんはスキーウエアだった。

あと、おろそかになりがちなのは首廻りと頭部である。
やはり綿以外の素材を襟元に巻く。
よく言われることだが、ここの防寒をしっかりすると1枚着込んだことに相当する。
私はヘア(イヤ?)バンドを襟元まで入れて対応していた。

また帽子はかぶるべきで頭部を冷やすと脳の働きが鈍くなり正確な判断が出来なくなるという。
(頭を冷やす必要があるときもあろうが。)

今回はほとんど降雪だったのでフードをかぶっていた。
イヤマフラーやフェイスマスクも動き易さを妨げない程度に有効活用しよう。

手は軍手、スキーグローブ、レイングローブ、オーバミトンといろいろ試したが、
保温はインナーがあるものが暖かいし、作業は指が分かれているものがしやすい、という当然の結論になった。
スキーグローブがいいかな。
ただし濡れるので2つ、もしくは代わりを用意しておこう。

(アイテム、グッズ)

スコップは必要。
四角いのが断然有利。
人数分あれば作業も効率的だが、雪洞作りでもしないのであれば2つあれば十分。

なんて言うんだろう、雪かき棒?かな。トンボみたいなやつ。あれもあるとうれしい。
伸縮したりブラシが付いていたり便利である。テントや車の出入りの雪払いに小さなブラシか柄付きタワシがあると便利だろう。

もはや家ではテーブルにまでなって確固たる地位を築いた感のあるスノコは、小さなものはまだまだあるとうれしい。
ただじっとしている時とかに、スノコの上に足があると直接地面にあるより冷たくないのだ。
テントの入り口におけば下駄箱になるし、テントの床に入れればそこはテント内のテーブルになる。
またちょっと物を置いておくのに雪の上だとすぐ潜ってわからなくなるのでそんなときにも重宝する。
おかしかったのは、周りが金属製の七輪を雪の上で使っていると七輪がどんどん雪を溶かして沈んでいってしまったことだ。
すぽっという感じの七輪拓のできあがりである。
そのときもスノコを敷いたのだった。

テント内での暖房は湯たんぽだけだったが、これが侮れない。
朝まで全然冷めなかったし、寝袋に入った瞬間、とても幸せな気分にしてくれた。
ペットボトルでも代用できる。
何も寝るときでなくとも抱えていてもいいかもしれない。

(テント)

本文でも触れたが、地面からの冷気を4層でシャットアウトした。
ブルーシート、テント、銀マット(5mm厚)、エアマット、毛布。
ここで一番有効なのがエアマット。
結露に弱い段ボールを敷くより、運搬にかさばる銀マットを2枚重ねるより、毛布を3枚重ねるより、エアマット1枚の方が効果は絶大である。断言する。

ここでブルーシートの裾を20cmでも立ち上げておくと寒さが違う。
今回は裾そのものが雪で埋まってしまったので余り関係なかったが、雪のないところでの設営時には実行しておこう。

このときフライから雨が入らないように工夫すること。
そうしないと雨天時にウォータベットに寝る羽目になる。

フライには表に撥水、裏に防水である。
今回は新品であり加工済みなのでそのまま使えた。

立てる時は入り口を風下に向けること。
今回のように一晩でテントが埋まるような状況では、朝、本当に出られなくなる。

雑誌や諸先輩方の受け売りも含めいろいろ述べたが、
あくまで以上が、1泊雪中キャンプの体験記である。

終わり