災害に遭った気の毒な人たちを助けるのは正しい。そうあるべきだ。しかし過剰な助けは、自助・自力努力を損なうかもしれず、他のケースの被災者に比べて不公平・不公正かもしれない。


これまでから一挙に2倍!​

 今回の能登半島地震は、まさにそれに当たらないのか。

 政府は1日、能登半島地震の復旧・復興策として今年度予備費から1167億円を追加支出することを決めたが、その一部にまさにこの不公平・不公正なバラマキが含まれる。

​ 地震など自然災害で自分の住む住宅が壊れた場合、被災者再建支援法で300万円支給される。ところが今回の能登半島地震では、被災規模の大きかった奥能登6市町の高齢者世帯などにさらに最大300万円を上乗せ給付する新制度を、岸田バラマキ政権は打ち出した。支給額は、最大でこれまでの2倍の600万円になる(写真)。​

 

 

 

 

 高齢者過剰優遇批判を気にしてか、バラマキ岸田は24日になって子育て世帯の一部も対象に加えることにした。

 災害に備えるには、個人は高い保険料を払って地震保険に入っている。むろん今回は、地震保険とは関係ない。全く備えていない高齢者らに、それだけばらまく。

 支援金は、国と都道府県が出資する基金から、すなわち税金から出している。
 

多くの矛盾、不公平​

 引上げを相談された全国知事会は、「自助、共助、公助のバランスが重要」などと否定的な見解を出した。これには、東日本大震災や熊本地震の被災県も同調した。

 それなのに、今回だけ支援金を一気に2倍化する理由は、全くない。支持率低迷に喘ぐ岸田バラマキ政権が人気取りで打ち出した策としか思えない。

 まずこの措置には、多くの矛盾、不公平がある。

 これまでの地震被災者に比べて、能登半島地震だけなぜ一挙に2倍なのか。

 借家の人たちは同じ被災者なのに、なぜ支援されないのか。
 

自分の費用で耐震化した人は馬鹿を見るのか​

 今後もし首都圏直下型地震や南海トラフ巨大地震で大量の住宅被災が起こったら、それでも今回のような倍額支援をするのか。いずれも今後30年内に70%(首都直下型地震)、70~80%(南海トラフ地震)とされている(20年現在)が、大規模になるから、財政的にとてもできないはずだ。

 例えば南海トラフ地震の場合、300万円の給付だけでも8兆円以上になる。それでも被災者は、能登半島地震では600万円支給されたから出せ、と要求するだろう。すると給付だけで10兆円以上になるだろう。こんなことができるはずがない。

 さらにこれまで自力で自宅の耐震化補強をしたり耐震住宅に建て替えたりした人たちの努力は、何だったのか。「正直者が馬鹿を見る」ということで、いいのか。壊れていなければ、支援金は出ないのだ。

 自助である地震保険に入る意欲を、薄れさせることにもなる。自分は何もしなくとも、最後はお上が何とかしてくれる、という甘えを助長させるだけだ。
 

悪い先例を残す岸田の人気取りバラマキ策​

 政府の弁明では、過疎地だからコミュニティー維持のために特別な支援が必要だということらしいが、狸の出るような過疎地の孤立集落に高齢者をそのまま居住させることの方が問題が多い。

 コンパクトシティーという考えのように、街中に安い家賃の公営住宅を建て、そこにコミュニティーごとにまとめて引っ越ししてもらう方が、行政の今後の負担ははるかに少なくなる。医療や買い物に困る高齢者も、その方が生活にずっと便利になるだろう。

 何かあったらすべてお上におんぶに抱っこ――またしても岸田は悪い先例を残すことになりそうだ。


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