大国は内から崩せ ~明石元二郎大佐のロシア工作~ | 朝倉新哉の研究室

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全ては日本を強くするために…

NHKで『坂の上の雲』が放送されましたが、

その中で明石大佐の工作はどのように描かれていたのでしょうか。

私は見ていないのでわかりません。

よって、『坂の上の雲』で描かれた内容とは、全く関係ありません。

『統帥綱領』 大橋武夫 建帛社

に書かれた内容をもとに、明石工作について記します。

以下は、『統帥綱領』からの引用です。

>>>
ソ連という国は侵略されても敗けない国である。
それが日露戦争ではたいして侵略もされないのに、日本に敗けた。

日本陸軍は満洲で連戦連勝し、ついに奉天会戦で大勝を博したが、
ロシアにとっては侵略した中国の領土を僅か300キロ日本にゆずったにすぎない。
ロシア自身は痛くも痒くもないはずである。

日本海軍は日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を全滅させたが、
完勝した日本艦隊もバルチック海まで進攻して、
ロシアの本国を脅かすまでの力はなかった。
ロシアは和平の席に出る必要はないはずであった。

ロシアが手をあげた直接の原因は、国内に革命がおき、政府が転覆しそうになったことである。

明治34年、明石元二郎中佐(36年大佐)は田村参謀次長の密命を受けて
ヨーロッパに渡り、35年ロシア公使館付武官となり、
綿密透徹したロシア国の体質研究にもとづく構想により、
ロシア共産党に働きかけて、農民労働者の暴動、水兵の反乱、在郷軍人の招集拒否運動、
満洲への軍隊輸送妨害工作などを扇動し、武器、弾薬、資金を供給するとともに、
ロシア政府の極東における軍国主義政策の非をならして、
ついに無政府状態に陥らせ、ロマノフ政権に戦争継続意欲を放棄させたのである。

この明石工作に感歎したのは、当時のドイツ皇帝のウィルヘルム2世で、
「明石1人で、大山満州軍20万に匹敵する戦果をあげた」
と言い、10年後に起きた第一次世界大戦ではこの手を真似て、
ついに帝政ロシアを崩壊させている。

明石工作は理想的に行われて成功した謀略のモデルケースである。

一、日本はロシア政府を倒したかったし、ロシアの革命諸党もその政府を倒したかった。
  すなわち、ロシアを敗戦に導きたいという共通の目的をもっていた。

二、ロシアの革命勢力は有力で、革命気運は醸成されていたが、
  革命実行のためには武力が足りなかった。
  日本にはロシアを攻める武力はあったが、攻め破って、
  首都を占領するだけの力はなかった。
  すなわち、お互いに助力を必要とした。

三、日本軍が満州でロシア軍を攻撃することは、ロシアの革命運動の武力支援になったし、
  ロシアの革命諸党の騒乱行動は在満ロシア軍を背後から牽制して、
  日本軍の作戦を容易にすることができた。
  すなわち、お互いに役に立った。

明石は綿密な情勢分析によって右の基本条件を的確につかみ、
ロシアの革命諸党に連合戦線を結成させ、資金と武器、弾薬を供給して
その勢力を強化するとともに、その騒乱行動と日本の軍事行動を調和して、
総合威力を発揮させることに努めたのである。

謀略は点火作用である。
爆弾をもっていない相手を、謀略で爆発させることはできない。
謀略はだますことではない。
そんな謀略は永続しないし、大きな仕事はできない。
>>>
国家戦略研究
明石大佐は、大将にまで昇進、台湾総督を務め、総理大臣になる
可能性もあったが、55歳で亡くなった
(ウィキペディアより転載)


ロシアは、もともと”爆弾”をもっていたのです。

ロシアのもつ”爆弾”=反政府勢力に、

明石大佐の工作は、火をつけたのだ、と言えます。


ウィキペディアには、
>>>
明石は日露戦争中に、当時の国家予算は2億3,000万円程であった中、
山縣有朋の英断により参謀本部から当時の金額で100万円(今の価値では400億円以上)を
工作資金として支給されロシア革命支援工作を画策した。
>>>

とあります。

十分な工作資金があったからこそ明石工作は成功したのです。

『孫子』にも、

>百金を惜しみて敵の情を知らざる者は不仁のいたりなり

とあります。

謀略にカネを惜しんではならないのです。

ロシアをはじめ、大国は、同じような弱点を抱えています。

少数民族の問題です。

ロシアや中国のような広大な国土が1つの国である必然性はないのです。

ここを突けば、内側から崩すことができます。

明石工作は、対中国戦略の手本でもあるのです。

”中国も内から崩せ”ということなのです。

中国の脅威を取り除く最良の方法は、”内から崩す”ことです。

”内から崩す工作”をやらなければ、日本は属国への道をたどるでしょう。


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