長崎県島原市での日教組大会取材で現地のホテルに泊まり、夜遅く広い共同風呂に一人浸かっていた時のことです。6,7人の集団が1列渋滞で行儀よく入ってきました。様子から、機動隊の1個分隊だな、とすぐわかりました。右翼の街宣車が走り回る島原の街は、右翼と日教組、そして機動隊だらけ。そのホテルもその3者とマスコミが混在していました。
 
 
 隊員たちは、湯船の周囲にぐるりと座りました。こちらの姿は湯けむりで見えていなかったと思います。突然、一人が大声で泣きだしました。「俺たちは命がけで皆を守っているのに、どうして帰れ、なんて言われなくてはいけないんだよ」。よその県からきた機動隊なのでしょう。声の調子から、泣いているのは年配の分隊長のようです。若い隊員らは神妙に聞いていました。見たくない姿ですが、隊の絆の太さを示す分隊長殿の慟哭に「うらやましいな」と、一匹狼の記者は思いました。
 
 
 沖縄県の米軍訓練場移設工事編場で1018日、警備に派遣されてきた大阪府警の機動隊員が、反対活動家に「さわるなコラ どこつかんどんじゃボケ 土人が」と発言。差別的な暴言として大問題になっています。これに対し松井大阪知事が「相手もむちゃくちゃ言ってるんでしょ。鬼畜生のように、けだもののように。個人的にたたくのはどうか」と擁護のツイートをしたのでまた問題となっています。
 
ボケ発言の瞬間の動画をネットで見ましたが、若い隊員です。乱闘服は着ていますがヘルメットは着用していず、そんなに緊迫した現場にもみえません。しかし、大学紛争時代も遠く、今の機動隊員は集団警備の経験不足が言われています。たぶん、現場警備の切迫した空気にのまれたのでしょう。隊員は安全な金網越しに反対派と対峙して、大声でわめいています。撮られているのも知らぬげに。こんなボケな機動隊員があるでしょうか。
 
 
 きちんと教育しなかった大阪府警機動隊に緩みがあったのです。最後には全員排除・逮捕というむき出しの公権力を行使する公僕として、住民を「土人」呼ばわりするとは驚きです。とは言いながら、人間として、ついついカッとしてしまうことは分かります。ただ、そこで肩を持つのでは、松井知事も公僕として失格です。
30余年前の風呂場の分隊長殿は、湯けむりから出て来た一般人の筆者に、驚いたように「見苦しい所をお見せし、すみませんでした」と礼儀正しく謝りました。その言やよし、です。