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                   第二章 母の日常生活

                 

 

 

  

 

    

  

    「にいちゃん、どこいったー、なにしてんのん?こっちこんかいなー!」母の日常、その(53)


  2005/11/11(金) 午後 0:42   
 某月某日 自宅のマンションは、非常に便利な場所にある。身の回りの生活は、半径5分以内でほとんどの用が足りるので、有り難い。自宅から、徒歩2、3分の所にスーパーがある。今日は、母を連れてそのスーパーへ買い物だ。

「晩のおかず買~て来るから、お袋ちゃん、此処で、待っててな~」

このスーパーには、入り口横のコーナーに、4人掛けの椅子と丸い大きなテーブルが備えられていて、一休み出来るようになっている。私は、母と買い物に来たときは、ここを利用させてもらっている。母もジュースを飲みながら、私が、買い物を終えるまで、たいがいはおとなしくニコニコしながら、待っていてくれている。

「あいよ~」と母。待つと言っても、私の姿が見えなくなると、数分待つのが、母の限界である。

「にい~ちゃん、にい~ちゃ~ん、ゆ~てんのに、どこいったんっ!」母が椅子から立ち上がり、大声で私を呼ぶ。

「此処やでぇ」母が見えるようにして、母に大きく手をふる。

「なにしてるん、はよおいでぇ」

「もう直ぐ、行くから、ちょっと待っててやっ!」

「はよしぃ~や!」

「うん!」パンのコーナーが、丁度、母の座っている休憩コーナーから、死角になる。案の定。

「にいちゃん、どこいった、なにしてんのん、こっちこんかいなー!」母の大声がした。

「此処に、いてるやんか~」と、母に聞こえるように私も大声を出す。
私は、パンのコーナーに訪れる都度、母の姿が見える位置まで、行かなければならない。そして声を掛け合う。他の来店客や店員さんらが、その都度私ら親子のやりとりを聞いているようだ。

 

 

 

ト書き:当時は、まだ認知症は、珍しい存在で、周りの人たちからは、奇異の目でみられていたのだ。