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長野は上田紬(うえだつむぎ)、飯田紬(いいだつむぎ)、伊那紬(いなつむぎ)といった様々な紬が知られています。かつては他の紬の産地同様、各家から機の音が聞こえていたそうですが、現在では織屋は数える程度に減少してしまいました。
素朴で温かみのある信州の紬については改めて取り上げたいと思いますので、今回は長野県安曇野市にある天蚕センターをご紹介します。



安曇野市天蚕センター

安曇野市にある天蚕振興会の施設です。

センター内には天蚕の飼育から製糸までの工程を、実際に使う道具やビデオ、写真を観ながら学ぶことが出来ます。また、天蚕糸を用いた着物や帯が展示してある他、ショールや根付等の商品の販売も行っております。


上の画像は右から家蚕(かさん)、天蚕(てんさん)、柞蚕(さくさん)のそれぞれの繭です。

本来、天蚕(てんさん、やままゆが)は大型の野生絹糸虫であり、江戸時代から天蚕の飼育が始められたと伝えられています。大型の柞蚕繭とほぼ同じ大きさで、家蚕繭と比べると重さは約3倍にもなりますが、生糸量はやや劣ります。



種糸として羽化させた天蚕を蝶籠の中で飼育します。天蚕は5日という短命である為、羽化後直ぐに雌雄一対を蝶籠に入れて交尾させる必要があります。

(蝶籠部分拡大)

交尾後、雌は籠の目から胴体を出して網目の外側に卵を産み付けます。産卵数は150~250個程度になるうそうです。
これらの卵を採取し、蚕を育てていきます。


採取した卵を20~30個ずつ、台紙に糊付けしていきます。


上の画像は糊付け用のブリキ製の型と刷毛です。使う糊は雨に当たっても流れにくいわらび粉を溶いたものを使用します。


5月下旬頃、孵化2日前に卵を糊付けした紙を短冊状に裁断し、飼育樹(クヌギ)の枝にホッチキスで留めます。この工程を「山付(やまづけ)」と呼ばれます。

孵化直後の蚕は約5㎜、3日経つと10㎜とクヌギの葉を食べてどんどん成長していきます。そして4回の脱皮(四眠五齢)を経て完全変態します。蚕が吐き出す糸は総長700メートル程、葉で巻き込むように繭床を形成し萌黄色の繭を作ります。

繭は糸を紡ぐ用(繰糸)と卵を孵して生育させる用(種糸)とに選別します。


天蚕の特性を生かしながら自然の中で飼育された天蚕は、座繰り操糸機(ざぐりそうしき)と手紡ぎの昔ながらの手法で繭から糸を繰ります。こうして得られた天蚕糸は光沢のある美しい萌黄色が特徴であり、空気を含んでいる為軽く、そしてしなやかです。

期間限定の企画かもしれませんが、私が行ったときは機織り体験も出来ました(有料)。

布を紐状に裂いたものを織り込んでいく裂き織(さきおり)の技法を用いて、所々天蚕糸のわたも織り込みながらコースターを織ります。出来上がった物は記念に持って帰れましたWハート






余談…
長野と言えば善光寺!

 

善光寺の本尊御前立は7年に一度御開帳され、今年がその年に当たります。5月末までそのお姿を拝することが出来、期間中は本堂も早朝4時半から参拝可能で、史料館も5時半から開館しているそうです。

朝の6時前ですが、既に参拝者でごった返しています。



善光寺

山号:定額山

宗派:無宗派(天台宗・浄土宗)

創建:7世紀頃

本尊:一光三尊阿弥陀如来立像



無事に参拝を終え、参道でおやきを買い食いしながら善光寺の東にある城山公園内へ…

長野県信濃美術館

善光寺御開帳記念”いのり”のかたち-信濃の仏像と国宝土偶「仮面の女神」「縄文のヴィーナス」-


それから少し足を延ばしてちょっとマニアック(?)な展覧会へ…
長野市立美術館
-信仰のみち 善光寺・戸隠・飯縄・小菅・斑尾・妙高-
-狐にまつわる神々-

早朝の善光寺に始まり、充実した長い一日でした。