☆テツコの部屋☆~映画評論館~

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デッドプール&ウルヴァリン

79点
本作は『デッドプール&ウルヴァリン』というタイトルだが、『デッドプール』シリーズの第3弾扱い。そしてこのタイトル通りX-MENでお馴染みウルヴァリンと共演し、そして今後はアベンジャーズの一環としてマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の一部に組み込まれることになる。あぁまだまだ続くんだ(笑)。
2017年の『LOGAN/ローガン』で死んだはずのウルヴァリン。しかしその時間軸が消滅の危機にあると知ったデッドプールが、タイムマシンを使ってマルチバースの世界を飛び交うややこしい展開。
マルチバースといえば『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』で旧スパイダーマンの2人、トビー・マグワイヤとアンドリュー・ガーフィールドがトム・ホランドと共闘したが、本作でも過去のマーベルキャラがいくつか登場。なんだよまたマルチバースかよ、と思ったものの、大勢の馴染みあるキャラが復活するとそこはやっぱり面白い。
ただ内容がまとまり切れておらず、ドタバタしてしまいわかりづらさが残ったのも事実。そして死んでしまったキャラを自在に生き返らせるのは、日本では『ドラゴンボール』で慣れっこのはずだが、やはりこの禁じ手を濫発すると今後は何でもアリ的になってしまう危惧はある。
そして今回からディズニーに製作が移ったのだが、血の描写が多くR-15指定となってしまい、逆になんだかんだ話題性も十分。

この後どのようにMCUが進んでいくか興味深いところだけど、もう毎度書いてるが、俺らが生きてる間は完結しないんだろうなと、ハリウッドの壮大なシリーズ進行にウンザリしながらほどほどについて行こうと思ってる人も多いのかな。

監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン、エマ・コリン、マシュー・マクファディン、モリーナ・バッカリン、カラン・ソーニ、忽那汐里
2024年  127分
原題:Deadpool & Wolverine

温泉シャーク

60点

2020年に熱海市の地域活性化を目指し、日本発の本格的サメ映画を作ろうと企画がスタート。クラウドファンディングを実施し見事1000万円を突破して、2024年に映画は無事完成。
そして7月5日から全国34館で公開されるも各地で大入り。ミニシアターランキングで1位まで獲ってしまった、知る人ぞ知る話題の作品。
熱海市をもじった架空の「S県暑海市」が舞台。温泉から特殊能力を持つサメが出てきて、市民と戦う展開。
昭和っぽい特撮に安っぽいCGを全編に散りばめ、いかにも低予算丸出しの仕上がり。しかしBGMと主題歌、そして演出は意外と凝っており、ギャグ一辺倒になってないストーリーもそれなりに悪くない。
この映画の製作に賛同した一般人と、現地のエキストラ、さらに冒頭で述べたクラウドファンディングの成果。一致協力して作り上げたその熱量は充分伝わってくる。思ったより面白かったというのが第一の感想。
しかし自主製作だけあって、有名な俳優は一人も出ておらず、ここが唯一にして最大の欠点。知名度の高い誰かが一人でも出ていればまた随分と印象が違ったんだろうが、そこはどうにかならなかったのかなと残念。
なので本作に関わった人たちが見ると大爆笑なんだろうけど、我々一般の映画ファンが見るとそこまでのめり込むことができない。そこはB級、内輪ウケ感が否めない。
次作ではぜひ本作で得た利益を使って有名キャストを起用して、さらなる馬鹿馬鹿しさを期待。こういう映画は応援したくなる。

監督:永田雅之
出演:金子清文、藤村拓矢、内藤正記、大迫茂生
2024年  77分

ザ・ウォッチャーズ

70点

『シックス・センス』の監督でお馴染みM・ナイト・シャマランが製作にまわり、娘のイシャナ・ナイト・シャマランが監督デビューを果たした作品。
内容はいつもの不気味なシャマラン節。
28歳の女性ミナ(ダコタ・ファニング)がインコを配達するために森の中に入るが迷ってしまう。なんとか小屋を発見するが、そこで起こる不可解な出来事・・・みたいな展開。
小屋で出会うのは老女とカップル。ミナも合わせて計4人で脱出方法を探る。部屋は鏡張りになっており、その向こう側からウォッチャーズが監視している。そして3つのルールを守ればひとまず殺されない。
とまぁ相変わらず意味不明の不気味でややこしい設定。シャマラン娘が監督だけれど、映画が迷走してるのは血筋なのかな。
終盤になって大きく物語は動き、一応オチは付いている。ただもう取って付けた感が半端なく、これならもっと気の利いたどんでん返しなかったのかな?と問いかけたくなる。
もはや『シックス・センス』級の名作をこのシャマラン一族に求めるのは酷なのかもしれないが、やはりどうしても期待をして映画館に見に行って、そして肩すかしを食う。その繰り返し。ぜひ俺らが生きてる間にもう1本、とんでもない作品を作ってほしいという一ファンの願いです。
ところで主演のダコタ・ファニングはもう30歳。本作では奇妙な雰囲気の主人公ミナを見事に好演している。ダコタちゃん年取ったね、と思ったあなた、鏡を見て下さい(笑)。

監督:イシャナ・ナイト・シャマラン
出演:ダコタ・ファニング、ジョージナ・キャンベル、オルウェン・フエレ、アリスター・ブラマー
2024年  102分
原題:The Watchers

クワイエット・プレイス DAY1

81点

『クワイエット・プレイス』シリーズ第3作だが、内容はタイトル通りモンスターが現れた1日目。つまり今までの前日談/スピンオフになっている。直接続編のパート3は製作中とのこと。
今回の舞台はニューヨーク。盲目で音に反応するモンスターが暴れまわる展開。映像的にはこれまでで一番派手で見ごたえアリ。
主人公は病気で余命長くない黒人女性で、アカデミー賞女優のルピタ・ニョンゴが演じている。
共に行動するのは白人男性と猫。そしてピザ屋を目指すという目的が個性的で面白い。病弱の主人公もきちんと物語の軸になっており、終盤はまさかの泣ける展開になっている。
ぶっちゃけ1作目はあまり面白くなかったが、2作目で格段に良くなり、このスピンオフで良い流れを受け継いでる印象。
映像の迫力もグンと増していて、前作までを気にいった人なら間違いなく興奮できると思う。
モンスターが「音に反応する」という設定なため、セリフが少ないのが映画を単純明快にしている。無駄に喋らないのがどれだけわかりやすいかがよくわかる。

その辺の個性を最大限に生かしたSFアクションサスペンスホラー作品・・・だけどちょっと前からのハリウッドってひとつ当たると延々とシリーズにする傾向があるんだな。『ソウ』『ファイナル・デスティネーション』『パラノーマル・アクティビティ』『ハロウィン』、そして現在進行中の『死霊館』などなど。先が気になるホラーというジャンルで、10年もシリーズ続けられると見るのに疲れてしまう。ぜひ本作は次作パート3で完結させてほしいものです。


監督:マイケル・サルノスキ
出演:ルピタ・ニョンゴ、ジョセフ・クイン、アレックス・ウルフ、ジャイモン・フンスー
2024年  100分
原題:A Quiet Place: Day One

 

ルックバック

86点

『チェンソーマン』でお馴染み漫画家・藤本タツキが2021年にジャンプ+へ掲載した読み切り作品を劇場アニメ化。主演声優はTBSドラマ『不適切にもほどがある!』の河合優実。ここは少々ネタバレ。
本作の上映時間は58分。新海誠監督の『言の葉の庭』あたりを彷彿させるコンパクトさ。ただ内容はいい意味で簡素化されており、とても見やすい。
小学4年の学級新聞で漫画を描いている主人公藤野と、不登校だが同じく漫画を描いている京本。この二人が出会い、共作してプロを目指し成長していく展開。
しかし後半、思わぬ事件で京本が亡くなり、自らを責める藤野。そして小学生時代にタイムスリップして事件を未然に防ぎ、京本を救う時間軸を作り出す。

ただ現実には京本は生き返っておらず、そのまま物語は終わりを迎える。アニメとしてのファンタジー描写から一転、リアリティを突き付けた独自性が心を撃ち抜く。


さて全体を振り返ると、京アニ事件をモチーフにした展開だったり、オアシスのDon’t Look Back In Angerを遠回しに表現したタイトルだったり、ちょっとあざとさが幼稚に感じられてしまった。
58分という時間が見やすい、と冒頭で書いたけれど、その分深いメッセージが置き去りにされたのも否めない。そこは長所と短所が同居している印象。
音楽やセリフ、そして独特な作画でとにかく冒頭から突き刺さる人には刺さる映画。もちろん個人的にも泣けると感じたものの、ここまでのネットでの絶賛絶賛の評価を見ると、それほど突き抜けた映画でもないとも思ったり。

まぁ俺みたくそこは深く勘繰らず、素直な気持ちで見れば普通に泣けると思う(笑)。


監督:押山清高
声の出演:河合優実、吉田美月喜
2024年  58分

ハロルド・フライのまさかの旅立ち

59点

本国イギリスで初登場1位、日本ではミニシアターランキングで2週連続1位になった話題の作品。
主人公は定年退職し妻と平穏な生活を送っていた爺さん、ハロルド・フライ。彼のもとにかつて一緒に働いていた女性から、余命わずかと知らせる手紙が届く。800キロ離れた彼女のもとへ、徒歩で向かう展開。
設定は2022年作品『君を想い、バスに乗る』によく似ている。SNSで話題になるという設定も一緒。あちらはバス移動だったがこちらは歩きというのが大きな違いなので、印象も違うっちゃ違うんだけれど。
さて本作、実話を元にしているそうだが、予告やポスターで見るようなコミカルさは映画が進むごとに失われ、徐々にシリアスになっていく。
終盤は特にハロルド爺さんの懺悔・贖罪へとテーマが変わり、意外さはあったもののそこは期待したような感動はなかった。おそらく見たあと「思ったのと違う」と感じた人が多かったのでは。笑えて泣けるような心暖まる雰囲気を期待すると肩すかしを食いそう。
劇中で出会う人は良い人ばかり。ロードムービーとして見るとそれなりのクオリティを維持しているものの、やはりクライマックスからエンディングへの深刻な流れ、そして徐々に明かされるハロルドの過去の悪い行為、そして明かされなかったいくつかの真相など、だいぶ本筋から逸れた内容で、エンドロールが上がるときにはこれじゃない感が頭の中を駆け巡った。逆な意味で「まさかの旅立ち」。

タレントのLiLiCoさんが某番組でこの映画を涙ながらに紹介していたけど、この人何見ても泣くよね。俺に欠けてるのはそういう素直な感性なのかな(笑)。

監督:ヘティ・マクドナルド
出演:ジム・ブロードベント、ペネロープ・ウィルトン、リンダ・バセット、アール・ケイブ
2022年  108分
原題:The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry

マッドマックス:フュリオサ

68点
2015年公開『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚物語。前作でシャーリーズ・セロンが演じた女戦士・フュリオサの若き時代を描く。監督はこのシリーズ全作で指揮をとっているお馴染みジョージ・ミラー。
ほぼ「行って帰ってくる」だけだった単純明快な前作に比べると、今回はフュリオサの子供時代からをわりと丁寧に描いている。ただその分、上映時間は2時間半近くなってしまい、ストレートに楽しめた過去作に比べるとダークな一面もやや強くなっている印象。
そしてフュリオサのキャラが前作から大分変ってしまった。演じたアニャ・テイラー=ジョイはシャマラン監督の『スプリット』や今年公開された『デューン 砂の惑星PART2』などでお馴染みだが、シャーリーズ・セロンとは見た目も性格もほぼ別人。
そして昨今の多様性の都合上なのか、やたら女性の強さが表現されている。序盤で母親が処刑され自らも連れ去られるフュリオサ。暴君に飼われながらも復讐の機会を伺い、16年後に出世し復讐に討って出る展開。
アクションは相変わらずすごいがCGなので現実味も薄く、命がけで撮影していた70年代の初代マッドマックスが懐かしく感じられる。ハリウッドはしばらくCG禁止の縛りを設けた方がいいのではといつも思う。
さてマニアの間では謎に評価が高い前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だが、実は興収18億円と大してヒットしていない。個人的に過大評価だと思ってるこのシリーズ。あまり期待して見に行くと「あれっ?」と思いそう。

そしてマッドマックス5作目となった本作だけど、そういえば最後までマックス出てこない(笑)。

監督:ジョージ・ミラー
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース、トム・バーク、ラッキー・ヒューム、ネイサン・ジョーンズ
2024年  148分
原題:Furiosa: A Mad Max Saga

関心領域

64点

2024年のアカデミー国際長編映画賞など、数々の賞に輝いた話題作。
時は第2次世界大戦下、ポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所。強制労働とガス室、銃殺、そして劣悪な環境による病死が蔓延した忌まわしい施設。
そして本作の舞台はその収容所ではなく、すぐ隣にある所長邸宅。普通に暮らす所長ルドルフ・ヘスとその一家の日常を淡々と描く。
この映画の特徴は、収容所の中は一切見せないこと。

序盤で一見平和に見える邸宅、しかし徐々に聞こえてくる隣からの銃声や悲鳴、罵声。
邸宅の住人はそれらを全く気にしない。自分たちの家の中だけが「関心領域」であり、壁1枚隔てただけの収容所で行われている恐ろしい行為は全く関心の領域外、というわけ。この比較が映画の肝となる。

例えば収容所で、ルドルフ所長はユダヤ人を効率的に「始末」するために焼却炉を導入する。邸宅に帰るとそんなことは全く表に出さないが、その思想は子供たちに無意識に、そして確実に伝染しているのが怖い。


さて収容所内は全く描かず、邸宅内だけで進むアイデアは一見秀でているように感じられるが、実は映画としては意外と途中で飽きる。予告を見ると凍り付くんだけど、1時間40分もやるとそこは間延びしてしまった印象。映画館では後ろの方でイビキが聞こえたり。まぁ寝てる人にとっても関心領域ではなかったんだろう(笑)。

監督:ジョナサン・グレイザー
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー、ラルフ・ハーフォース
2023年  105分
原題:The Zone of Interest

からかい上手の高木さん

75点

漫画、アニメ版で大ヒットを記録していた人気作品を2024年に連続ドラマ化。そしてドラマの10年後という設定なのが今回のこの映画版。
中学時代に同じクラスの隣同士の席だった女子・高木さんと男子・西片。西片はいつも高木さんにからかわれており、今日こそはからかい返してやる!と意気込んで毎回返り討ちにあうパターン。
ドラマ版の主人公は月島琉衣と黒川想矢で、この2人は演技力が未熟なものの、純粋な中学生の初恋を実に上手く表現していた。
そして原作ではそのまますんなりと2人が付き合うことになるところが、ドラマ版だと最終回で高木さんがパリへ引っ越してしまう。
そしてこの映画版で10年ぶりに再会となるわけ。そこが実にまわりくどい。
しかもすでに24歳になっている2人が、なぜかドラマ版と同じからかい合いを繰り返しており、そこが痛い。
特に高橋文哉は黒川想矢の演技下手なとこまで似せていて、だったら最初からドラマ版の2人でよかったのに、と思った次第。
結局、今が旬の永野芽衣と高橋文哉を事務所の都合でキャスティングしただけに見えるんだな。
映画版はこの2人以外、周辺の人物のエピソードも盛り込まれており、そこは確かに悪くなかったけど、人気作品「からかい上手の高木さん」の映画版としては、これじゃない感が拭えなかった。主題歌はいいね。
 

監督:今泉力哉
出演:永野芽衣、高橋文哉、鈴木仁、平祐奈、前田旺志郎、志田彩良、白鳥玉季、江口洋介
2024年  119分

ミッシング

71点

『空白』でお馴染み吉田恵輔監督作品だが、今回の後味の悪さはさらに上を行っているのでこれから見る人は注意。
そしてここは思い切りネタバレしてます。

ある街で起きた幼女失踪事件。映画はその3ヶ月後、未だ何の手掛かりもない状態から始まる。
憔悴しながらもビラを配る若い父母、協力するテレビ局の記者、犯行を疑われる妻の弟、そしてSNSに集中する誹謗中傷。映画の流れは実際に起きた件を彷彿させる。
例えば『空白』では古田新太の猪突猛進さが思わず笑ってしまう部分もあったんだけど、本作は心が休まる部分が微塵もない。いったい幼女はどこに行ってしまったのか。その葛藤と苛立ちが全編を支配する。


ここからネタバレ。
結局女児がどこに行ったのか、生死はどうなのかは最後まで一切明かされない。この映画を見た人は感情移入し、せめて居場所だけでも教えて!と思っただろうが、その期待は無残にも裏切られる。
最近こういう丸投げの映画増えたよな・・・と思った。2018年米アカデミー作品賞の『スリー・ビルボード』もこの手法だったし。
真相がどうなのかは観客の想像に任せるのもいいけどさ、こういう先が気になるサスペンス的内容でそれやるのはもはや反則だと個人的には思う。
そして映画は結局、誹謗中傷を訴えるあたりで終わる。バッドエンドにすらなっていない。これだけ引っ張って何の結論も出さないのはどうなのか。悪いのは誹謗中傷ってオチも安直に感じられた。

 

監督:𠮷田恵輔
出演:石原さとみ、青木崇高、森優作、有田麗未、中村倫也、小野花梨
2024年  119分

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