ある夜なにげなくドライブをしていた。
 
人気(ひとけ)のない田舎道の信号待ち。
 
急に血相を変えた美しい女性が叫びながらドアを開けようとしている。
 
乱れた着衣。
 
そして後ろを振り返りながら必死にこちらの車に乗ってこようとしている。
 
何者かにひどい目にあわされそうになり逃げてきたみたいだ。
 
どうやら寸での所で助かったらしい。
 
 
 
 
チャンスだ。
 
 
 
 
女性はドアロックを解除するように叫んでいる。
 
 
 
しかし…
 
 
 
田舎道を走っていて気がゆるんでいたのと長い信号待ちのせいなのか…
 
 
 
 
先程屁が出てしまっていた…
 
しかも車内にこもる硫黄の数倍の濃度はあろうかと思われる異臭…
 
窓を開けようとしていた矢先の出来事だったので助かった。
 
もし開けていればその周辺を巻き込んでの大惨事になっていたに違いない。
 
それはワカっていたが目撃者もいないだろうとたかをくくっていた。
 
そして犯行前の予期せぬ出来事との遭遇。
 
俺が犯罪者になる前にその女は俺にブレーキを踏ませた。
 
いわば俺にとっての恩人だ。
 
僕は考えた…
 
 
 
しかし…
 
考えて出した答えはNOだ。
 
 
 
考えてみろ。
 
 
 
 
そこで俺がロックを解除したとしよう。
 
切羽詰まった女が急いで乗ってくる。
 
無我夢中で走り息切れをおこした切羽詰まった女が思いっきり異臭を吸い込む。
 
『きゃー』と叫んで飛び降りる。
 
そして車から飛び降り俺のもとから走りさって行く切羽詰まった女。
 
助けようとしている者に対してそれか?
 
 
 
 
 
そんなムカつく女を助ける選択をする程俺はバカじゃない。
 
 
 
そうやって僕は無事にそのムカつく切羽詰まった女の罠にはまるコトなくその場から去っていったのである。