今回はPR(広報)の外部コミュニケーションの一部であるメディアについてみていきたい。

宣伝活動におけるメディアの威力は強い。だからこそお金をだして宣伝してもらう「広告」というサービス業が成り立つわけだが、弱小ボランティアでこれをやるお金はないし、JHKの主催者としてはそんな所にお金をかけるならその分義援金に回したいという気もあった。

ビジネスモデル的には、もっとリターン(この場合「義援金」)を大きくするのであれば、本来であればある程度投資と割り切ってお金を使って宣伝するというやり方もあっただろう。もしかしたらやり方次第で今より義援金の桁が増えていたかもしれないが、JHK立ち上げ時は投資する人もお金もなかったこともあり、「広告」は選択肢になかった。ではどうしたか?

これまでにも述べた通り、震災直後はニュースで毎日地震や津波の映像が流れていた。つまりこのニュースにのって、JHKの活動をメディアに取り上げてもらえるようにすればよかった。と言うは易く行うは難し、でなかなか大変ではあった。

大抵の場合、ジャーナリストはジャーナリストで自分たちのネットワークで知り合いを探し出して取材をする。そうでない場合は、やはり食いついてもらえるだけのニュースバリューがないと難しい。

よって、まずはジャーナリストに取材してもらえるようにアンテナを張った。つまり、彼らがニュースソースをサーチするであろうと思われる所に露出する必要があった。その為にありとあらゆるコネを使わせてもらった。例えば、JHKではオランダ日本大使館、オランダ日本商工会議所、蘭日貿易連盟の告知欄を使わせてもらった。またFacebookつながりでメディアの連絡先情報が集まるようになった。さらに、Twitterを駆使して地元ソーシャルネットワーククラブ経由、ジャーナリストや、広告代理店などを紹介してもらったのは大きかった。

広告代理店にはボランティアベースで、JHK主催のイベントのプレスリリースを作ってもらって、関係各所に送ってもらった。一度このようにメディアコンタクトができれば、都度イベントのアップデートをするなど細かい作業の繰り返しである。また、JHK内部でも誰かが取材を受けたら、別イベントの宣伝はもちろん、メディア連絡先をメンバーでシェアしてお互いにサポートしあうこともした。

このように日本関係のイベントを幅広くサポートすることで当然JHKの露出は増えた。それに伴い新聞、ラジオ、テレビと機会は増えていった。そうすれば当然JHKにサポートしてもらいたいというイベント主催者も増えてくる。そしてそのサポートをしてまた露出が増える、という好循環がうまれることになり、オランダ国内でのJHKの認知度はあがっていった。

またニュースバリューを作り出すという意味では、有名人や著名人に参加してもらうことを念頭に置いた。JHKで主催したイベントには何度か日本大使に足を運んで頂けた。そうすることで、在蘭日系企業のおかげで潤っている地元市長(日本で言うと都知事レベル?)や、オランダ赤十字社のトップも巻き込むことができた。また個別にオランダの有名人にアプローチをして協力が得ることができたのも大きかったと思う。こうやってある意味ニュースを主催者側で作っていくことも重要と思われる。
PR(広報)の一環として、組織内の公衆(Public)と関係(Relation)を築くことは、前にも触れた通りである。会社の場合、社内報などがこれにあたる。

JHKは前述の通り、一番安くて簡単で早い方法ということでFacebookのグループページを内部コミュニケーションとして利用した。まず最初に、JHKの活動趣旨に同意してもらえる人には協力者としてFacebookのグループメンバーになってもらった。一度メンバーになってもらったら、後は協力者としてグループページへの書き込みは原則自由とした。従ってグループページは、イベントを開催するにあたっての協力者募集や告知欄として活躍した。

ネットで炎上という話はよく聞くが、幸いにしてJHKではそういうことはなかった。これはFacebookが実名主義であること、海外在住日本人社会は狭いので、知り合いの知り合いの知り合い程度でグループが形成されていたことも理由の一つではないかと思う。

JHKはアンブレラ・オーガニゼーション(雨傘式構造?)として、オランダにおける日本の震災支援の活動をサポートすることもグループ活動の目的の一つとした。そしてFacebookのグループページは、このサポート活動に強力な威力を発揮した。

非営利団体の運営に関わったことのある方なら経験済みだと思うが、基本的に運営側の人間には多大な事務負担がかかる。私自身、JHKを立ち上げて初めの1ヶ月は、寝ている時以外ずっと運営事務をやっていた。毎日が16時間(?)労働で、食事もろくにとる暇がなかった。そういう状況下で、全てのイベントの管理をすることは不可能である。となると、タスク・アロケーション(仕事分担)をせざるを得ない。会社組織で言えば、管理職を決めて各部や課の活動管理を任せることである。非営利団体であってもこれらをきっちりすれば問題ない。

JHKのイベント企画は基本「私、XXやります!」と、手を上げた人が自然とイベント責任者となった。ただ、イベント企画中に人手が足りない、イベント告知のちらしをただで印刷できるコピーショップを知りたい、イベント最中の演奏者が必要、など様々な質問や募集など、いちいち運営側で対応できない。しかしこれを全てFacebookに書き込んでもらうことで、メンバー同士で問題解決ができると同時に、仲介事務が削減された。さらに、ボランティアに参加したいけれど、何をしていいのか分からないという人にとっても、ここの告知欄は役に立った。さらにメンバー同士でコミュニケーションが生まれたことで、連帯感も作り出したといえる。

このように、ソーシャルネットワークの強みを生かすことで、理想的な内部コミュニケーションを生み出しただけでなく、かなりの事務負担の削減が出来たと言えるだろう。
「PR(Public Relations)」は日本語で「広報」と訳されるが、一般には日本語でPRというと宣伝広告などのみをさすことが多いように思われる。しかし実際には言葉通り、公衆(Public)と関係(Relation)を築くことがPRなので、正確にはもっと広義である。この場合の「公衆」とは株主、取引会社、顧客、消費者、社員、政府、メディアなどあらゆるステーク・ホールダーが含まれると言える。すなわち宣伝広告は、顧客や消費者に対する情報発信=PRであり、それ以外にも投資家情報、社内報、ホームページ、プレス・リリースなどもPRである。

ITが発達した今日、広報のあり方も変わってきている。ソーシャルネットワーク(Mixi、Twitter、Facebookなど)を上手に使えば、公衆に安価で簡単にタイムリーな情報発信ができる時代になったとも言える。

JHKは前述の通り、Facebookで活動を始めた。周りの年配者(失礼!)には「新しい形のボランティア」とびっくりされたが、海外在住の40歳代位(?)までの日本人は軒並み皆Facebookのアカウントを持っている。だからこそ1晩で100人のグループメンバーに膨れ上がったとも言える。今振り返ってみれば、JHK設立メンバーにとって当たり前の便利なツールがFacebookだっただけの話で、別に現代版の効率的PRを狙ってFacebookを始めた訳ではない。

実際にFacebookではグループを作り、まずはJHK設立の趣旨に同意して協力してもらえるメンバーを募集した。最終的にはこのグループページをJHKの内部コミュニケーションに使用した。ただこれでは内部の会話が丸見えになってしまって、外部への情報発信には不向きであることから、外部用はファンページ(http://www.facebook.com/JapanHelpenKan)を作った。

さらにTwitterアカウントも作成しFacebookと連動させ、JHKの親善大使とも言えるフォロワー(Twitterアカウントをリンクさせること)の多いソーシャルネットワークのプロ数人にお願いしてJHKのツィート(つぶやき)をリツィート(JHKのつぶやきをそのまま親善大使につぶやいてもらうことで、親善大使のフォロワーにつぶやきが伝わる仕組みのこと)してもらった。これだけで数千人に一気に情報発信ができる仕組みになった。

そして最後の仕上げはホームページの作成だった。これだけは素人には手が出せない。とはいえそこにかけるお金も時間もない。そこで、仮ページは学生にお願いしてとりあえずその場しのぎの物を作ってもらい、その間ウェッブ作成のプロをTwitterで募集(勿論、ボランティアで!)、その日のうちに手を上げてくれた人にお願いして今のサイト(http://www.japanhelpenkan.nl/)が出来上がった。

大まかな仕組みはこんな感じだった。では次に詳細を見ていきたいと思う。