身体は順調に回復を見せていた。私の状態を見て病院側からは次にリハビリ病院に入院するように進められた。リハビリ病院とは社会復帰を目指して日常的な生活を送るための訓練を身につける施設のことだ。

高次脳機能障害を抱えているとはいえ、身体的には軽度の障害で自立歩行ができてしまう私にとっては、中ー重度の障害者に混じってリハビリすることには躊躇いもあって、申し出を先延ばしにしてもらった。

しかし脳梗塞がいつまた再発するのか予断を許さないことや、糖尿病の治療にはまだ見通しが立っていない不安感は拭えず、さらに入院中に予約をしないとリハビリ病院に入れないことを知り申込みを決めた。

私の家からは近場でこのようなリハビリ病院があることを知ってはいた。知人も同じ脳梗塞で入院していたというので安心もしていた。私はパンフレットを受け取ったときによく読まずにここを指定していた。

しかしこれがそもそもの間違いの元であった。リハビリ病院は病院であってもホテルに近いものだった。質とサービスの出来に違いのある病院なのである。パンフレット選びにはより慎重になったほうが良い。

私が快適であった病院からこのリハビリ病院に入院したその日に、医師の先生からこのように言われた。「君は入院の途中でドロップアウトしないでおくれよ。なにしろうちでは結構そうした人が多いからね」。

時は8月末、コロナウイルスの感染者の増加でテレビを賑わしていたころに、私が入った病室は5人ベットの真ん中のポジションだった。お隣のベットとはカーテンを挟んでいてもわずかに15〜20cm足らずであった。

かつていた病院では4人の部屋でお隣りとの間隔も2m以上はあったように思われる。このリハビリ病院では、集団クラスターの発生がニュースで頻繁に騒がれているときも、どこ吹く風のことであったようだった。