子どものころ、母親は居なくて、父親は毎日俺のことを殴ったりけったりしてたよ。

 友だちも居なかった。公園に行って誰かと仲良くなろうとしても、近くに居る、母親だか何だかそういう連中が、「あの子とは遊んじゃダメよ」とかって子どもに囁いて、仲間外れにされていたんだ。

 一昔前のマンガみたいだろう?けど実際にあったんだよそういうことが。

 で、そう言われた子どもってのはね。俺のことを、関わってはいけない奴ってのと同時に、悪役だって、そういう風に認識し始めるわけだ。子どもって生き物はいつだって悪役を求めてるんだよ。いつの時代でも、あいつらはヒーローが大好きだからな。

 で、奴らの理屈だ。悪役ならやっつけてもいい。っていうふうになる。お前ら大人も一緒だろうけどな。とにかく、悪役ならやっつけてもいいっていうのが子どもの理屈で、そして俺は悪役だった。小さい頃からずっとな。

 けどな、聴いてくれよ。俺もヒーローは大好きだった。理由は簡単だよ。とにかく格好良かったからさ。
 それにさ、父親も同級生も、俺のことをみんないじめてきたけど、テレビの中のヒーローだけはこの世界でただひとりだけ、俺に危害を加えてこなかった存在だったからな。

 悪役を可哀想だって?そんなに風に思ったことはないよ。だってあいつら、あんなにも醜悪で、格好悪いし、とにかく悪い奴らなんだぜ?

 同情や共感したりするよりもむしろ、なんで俺はあいつらと同じように醜悪で格好悪い存在として見られているんだろうって、そこんところを疑問に思ったな。悪役は大嫌いで、それで、何で俺は悪役じゃなきゃいけないんだろうって、そういうふうに考えるようになったんだ。

 答えが出ないまま、俺は何年もヒーローを見続けたよ。中学生になって高校生になって、同級生がヒーローから興味を失ってもずっと、俺はヒーローだけを見続ける人生を送って来たんだ。他に友だちがいなかったっていうのもある。何で俺が悪役じゃなきゃいけないのか、誰も教えてくれなかったせいっていうのもある。答えを知るのに、結局ヒーローを頼るしかなかったってわけだ。二十歳になっても、二十五になっても、俺はヒーローを見続けたよ。

 それで、気づいたんだ。ものすごくシンプルなことだったよ。悪役っていうのはね、みんな人間に害意を持った存在だったっていうことさ。

 あいつを殺したい。嫌がらせしたい。傷つけてやりたい。そういうふうに思った奴らが悪役なんだよ。

 ものすごい解放感だったね。世紀の大発見をしたような気分だったんだ。だって、ほら。父親にも同級生にも、俺はいままでただの一度も、害意なんかもったことはなかったんだから。自分は悪役だから仕方ないって、そう思って、仕返ししてやろうとか、そういうことはいちども思ったことがなかったんだから。

 要するに俺は悪役じゃなかったんだ!人生がはじめて報われたような気になってさ。飛び跳ねて喜んだよ。嬉しくて嬉しくて嬉しくてたまらなかったんだ。

 けど、喜べたのも少しの間だけだったね。すぐに、怒りが湧いて来たんだ。

 だって、そうだろ?俺が悪役でないなら。じゃあ先に、害意を持っていたあいつらこそが真の悪役じゃないかってね。

 俺を殴った父親も、同級生たちも、その親たちも、見て見ないふりをした世界中のすべての奴らも。
 なんていうことだって、ね。愕然としたよ。みんなみんなみんな悪役じゃないか。
 
 気づいてしまったら、後はもう、使命感だけが湧いてきたよ。ヒーローはだって、テレビの画面越しにずっと言い続けてきたんだ。
「この世のために、悪は滅ぼさねばならない」って。

 分かるかい?この世のためなんだよ。俺があいつらを殺したのは!

 殺すことが目的じゃなかったんだぜ?この世界のため。平和を守るために俺があいつらを殺さなきゃならなかったんだ。

 なぁ分からないかな。それともあんたも悪役の仲間なのかい?だったらあんたのことも殺さなきゃいけなくなる。

 誰も分からないのか?

 俺はヒーローなんだよ! 


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 おはようございますジョニーです。


 生活リズムがメチャメチャです。


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 正義って何ですかね。


 
 勝った人?