盗んだバイクで走っている。
あの日、よしかっちあんの‘行こか!’で決まりやった。
いくらか癖ある運転とはいえ、話しながらのハンドルさばき。
俺の取立て免許に比べれば、余裕をかましてくれる。
が、その自信の伝わる背中にしがみついてはいても、
命、預けるには不安がよぎるのは、なぜか・・・。
プロローグ 俺たちの星
‘オニ・オン・座って・知って・るか?’。
よしかっちあんの声がマフラーの爆音にまぎれて、
途切れ途切れに聞こえる。
‘俺の星や’ポツリと言う。
言われてみれば違うとも言えない、先に言った者勝ち。
にせよ、普段はテリトリーに無関心、
座布団一枚の広さがあれば、
自分の世界が無限に作れる才能を持つよしかっちあんにしては、
単細胞な言葉だ。
しかし、話題が座布団から宇宙へ飛び出すには、
いとも簡単な確立された条件が、目の前に存在していた。
地上を走る俺たちの前方には、
暮れ泥む宇宙がどっかりと覆いかぶさっているではないかい!
背中越しでは俺には見えないが、
茶褐色で透明感あり、デリケートな薄皮を一枚剥がせば、
艶のある白色野菜に変身。
アラカルトの妃、タマネギに似た星、オニオン座。
きっと感動のあまり涙さえ伴う星にちがいない。
俺の想像の域のままを乗せ、バイクはサービスエリアに突っ込んだ。
休憩は、ひとつ飛びにサービスエリアで取ることにしている。
‘ほな、明日も無事故運転、拝んどこか’
両手を合わせて、東向くよしかっちあん。
その東の夜空に、のたりと横たわるオリオン座。
紺碧の冬の夜空のまだ見ぬオニオン座へ、再び思いを馳せる。
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