2003年のクラシック、中心的存在となって鎬(しのぎ)を削ってきたサンデーサイレンス産駒。
 
古馬となって、天皇賞春は5歳馬、ホワイトマズル産駒イングランディーレの大逃げ大勝利にあった。
 
宝塚記念は古豪7歳、晩成の外国産馬タップダンスシチーの軍門に下った。
 
 
天皇賞秋、もう勝たなくては・・・・・・天皇賞春2着、宝塚記念4着、ゼンノロブロイの思いは強かった。
 
鎬を削った3歳は、ダービー2着、菊花賞4着、有馬記念3着。
 
すぐそこにあった『てっぺん』は、いつも幻に終わった。
 
今度こそ、今度こそ、追い続ける『てっぺん』。
 
 
鞍上に迎えた短期免許のオリビエ・ペリエ。G1奪取の請負人。
 
秋の『楯獲り』に出たゼンノロブロイ。思いは果たせるか?
 
 
 
 
ゼンノロブロイとともに戦い続けるサンデーサイレンス産駒リンカーン。
 
菊花賞2着、有馬記念2着。リンカーンもまた、『てっぺん』に近かった馬。
 
 
天皇賞春は1番人気も謎の13着惨敗。雪辱を期した宝塚記念で3着、古豪の前に惜敗。

生まれ持った激しい気性、競走馬にとって『善』となれば『悪』ともなる。
 
リンカーンにとって天皇賞秋、『善』と出る『悪』と出るか?
 
 
 
 
2002年、NHKマイルカップ覇者テレグノシス。
 
最良の輝きは失せたか?続く悪戦苦闘。
 
この春、安田記念2着。ようやく輝きを取り戻したか?
 
10月、毎日王冠・芝1800mを勝利し、2000mの天皇賞秋に勝負するマイル王。
 
 
 
 
G1・2着3回、銀メダルコレクター・ツルマルボーイ。6歳にしてつかみ取った栄光。
 
安田記念勝利。自分の形を貫いた、後方一気の差し切り勝ちだった。
 
2冠目を狙った宝塚記念は6着。
 
 
競走馬として高みを見続けてきたツルマルボーイ。
 
力そのままに走れるのは、あと何走なんだろう・・・・・・。考えまい。
 
力いっぱい走るだけだ。いつものように。
 
 
 
 
5歳にして開花したマーベラスサンデー産駒シルクフェイマス。
 
4歳暮れの条件3連勝から、5歳となり日経新春杯・京都記念、重賞連勝で5連勝。
 
天皇賞春3着、宝塚記念2着。
 
半年で一流馬の仲間入りを果たした。
 
一気に上り詰めるか!頂点。
 
 
 
 
逃げるか?世界の良血ローエングリン。
 
重賞4勝。安田記念3着、G1でも結果を出したバランスオブゲーム。
 
8カ月ぶりの復帰戦、サクラプレジデント。
 
菊花賞、天皇賞春、宝塚記念、3度のミラクルを起こしたヒシミラクル。
 
 
 
3歳、皐月賞馬ダイワメジャーの挑戦。
 
前哨戦オールカマー9着惨敗で皐月賞馬の権威は剥奪されたか?12番人気。
 
 
 
良血牝馬参戦。3歳・桜花賞馬ダンスインザムード、4歳・エリザベス女王杯勝利のアドマイヤグルーヴ。
 
大きく人気を下げていた。アドマイヤグルーヴ9番人気、ダンスインザムード13番人気。
 
 
 
 
10月31日、天皇賞秋。
 
1.ヴィータローザ
2.テレグノシス
3.シェルゲーム
4.ダンスインザムード
5.ツルマルボーイ
6.トーセンダンディ
7.マイソールサウンド
8.アドマイヤグルーヴ
9.サクラプレジデント
10.ローエングリン
11.ナリタセンチュリー
12.シルクフェイマス
13.ゼンノロブロイ
14.ヒシミラクル
15.バランスオブゲーム
16.リンカーン
17.ダイワメジャー
 
 
1番人気ゼンノロブロイ、2番人気テレグノシス、3番人気ツルマルボーイ。
 
4番人気リンカーン、5番人気シルクフェイマス。
 
 
シェルゲームが行く気を見せたが、すかさず追い抜いて先頭に立ったローエングリン。
 
果敢にハナを切った。
 
2番手に下げたシェルゲーム。
 
3番手、内ピッタリをダンスインザムード、外にマイソールサウンドがつけた。
 
トーセンダンデイ、バランスオブゲーム、ダイワメジャーが行き、サクラプレジデントが続く。
 
一団の馬群。
 
中団につけたアドマイヤグルーヴ、シルクフェイマスの間に突っ込んできたのが、
 
ゼンノロブロイだ。
 
その後ろにリンカーン。
 
 
一団の馬群が途切れた後方。
 
ツルマルボーイ、ヒシミラクルが並び、
 
ナリタセンチュリー、
 
テレグノシス、
 
ヴィータローザ、
 
バラバラで続いた。
 
 
 
1000m通過60秒1、平均ペース。
 
スピードタイプ、ローエングリンにはもってこいのペースだ。
 
 
スムーズに飛ばすローエングリン。
 
軽快な足取りのまま直線に入った。
 
逃げ込みを図る。ローエングリン。
 
 
横に広がる馬群。
 
 
内から迫った!
 
 
ダンスインザムードだッ。
 
単騎免許で来日中のクリストフ・ルメール。
 
インのポケットに入り、機を窺っていた。
 
 
ダンスインザムードの後ろをなぞるように、突っ込んでくる。
 
アドマイヤグルーヴ・武豊だ!
 
 
人気から外れた良血牝馬2頭。内から、大波乱の逆襲かッ?
 
 
 
外から伸びてきたのは、1番人気ゼンノロブロイ。
 
敵は前。直線に入って切り替えた鞍上・ペリエ。
 
 
猛然と差し脚を伸ばしてローエングリンに迫ってきた。
 
 
 
最後の坂を駆け上がった。
 
 
ローエングリンの逃げ脚が鈍った。
 
 
いまだッ!
 
並んで交わし、先頭に立ったダンスインザムード。
 
ルメールの手綱さばきが冴えた!
 
 
追随するのはアドマイヤグルーヴだ!
 
 
外から来るのはゼンノロブロイ。
 
リンカーンも、テレグノシスも、ツルマルボーイも、思っていた強敵は何も来ない。
 
いま、この時、牝馬に負けてなるかッ!
 
王者となるための誇り。ゼンノロブロイの内からほとばしる熱き心。
 
みなぎるエネルギーの爆発。
 
 
ダンスインザムードに襲いかかった。
 
 
大外から、やっと姿を見せたツルマルボーイ。
 
鋭く差し迫るその脚を超え、
 
ゼンノロブロイは爆発した。
 
 
 
ルメールをとらえたペリエ。
 
王者となったゼンノロブロイ。
 
 
天皇賞秋、『てっぺん』。
 
ゼンノロブロイ、王者への序章だった。
 
 
1着ゼンノロブロイ
1馬身4分の1
2着ダンスインザムード
1馬身半
3着アドマイヤグルーヴ
クビ
4着ツルマルボーイ
1馬身
5着ローエングリン
 
 
(つづく)