イングランディーレの大逃げに屈した天皇賞春、人気組。リンカーン、ゼンノロブロイ、ネオユニヴァース、ザッツザプレンティ。

 

宝塚記念で雪辱を期すことになった。が、ネオユニヴァースはレース後、右前脚浅屈腱炎を発症。球節亀裂骨折も判明し、放牧に出ることになった。

 

9月には引退が発表されることとなり、ネオユニヴァースにとって天皇賞春が最後のレースとなってしまった。

 

 

クラシックで鎬(しのぎ)を削ってきた、世代のライバルたち。

 

サクラプレジデントは体調不良で走れず、ネオユニヴァースは回避。

 

残された4歳精鋭、宝塚記念で覇を競う。

 

 

 

ダービー2着、菊花賞4着、有馬記念3着。そして、天皇賞春で2着、ライバルたちのなかで最先着したゼンノロブロイ。

 

関東のリーディングトレーナー・藤沢和雄厩舎、体質が弱くデビューが遅れたゼンノロブロイがクラシックに参戦したのはダービーからだった。

 

厩舎期待の素質馬。

 

古馬になって体質は万全、本格化を迎えたはず。もう獲らなくてはいけないG1。

 

敵は世代ライバルだけじゃないッ!

 

 

 

喘鳴症の一種、喉頭蓋エントラップメントの手術で皐月賞を見送り、ゼンノロブロイと同じくダービーからの参戦だったリンカーン。

 

同じサンデーサイレンス産駒ぞろいの有力馬のなかで8着惨敗。

 

悔しさを糧に菊花賞、ダンスインザダーク産駒ザッツザプレンティこそとらえられなかったが、同じサンデー産駒ネオユニヴァース、ゼンノロブロイには競り勝って2着を確保。

 

有馬記念も、古馬の王者シンボリクリスエスには遠く及ばないものの、2着に健闘。

 

 

気で走る馬。天皇賞春1番人気13着の大敗は、歯ぎしりする思いだった。

 

宝塚記念には、不甲斐なかった自らへの『怒り』をぶつけるッ。

 

 

 

皐月賞8着、ダービー3着、サンデー産駒の牙城を崩せなかったザッツザプレンティ。

 

父はサンデー産駒ダンスインザダーク。

 

サンデー産駒全盛のなかで次の時代をつくる!サンデー『エピソード2』。

 

思いの丈をぶち込んだ菊花賞優勝、ジャパンカップ2着。

 

 

燃え尽きたか?有馬記念11着、天皇賞春16着。

 

いやいや、『エピソード2』は、まだまだ終わるわけにはいかない。

 

 

 

3頭だけではない4歳馬。

 

ダービー4着、フェブラリーS2着、芝・ダートで走るサンデー産駒サイレントディール。

 

『サンデー産駒初の3冠は私が獲った』、牝馬3冠馬スティルインラブ。

 

しぶとさで喰らいつく。ダービー6着、菊花賞6着、有馬記念7着、天皇賞春4着、マヤノトップガン産駒チャクラ。

 

 

 

 

4歳馬に負けてられない歴戦の強者(つわもの)。

 

 

条件馬として過ごした3歳、4歳。突然に開花した5歳、シルクフェイマス。

 

日経新春杯・京都記念、重賞連覇。天皇賞春3着は実力の証明。

 

父マーベラスサンデーはサンデー産駒。サンデー『エピソード2』。

 

 

 

ダンスインザダーク産駒、安田記念を勝ったツルマルボーイ。

 

『ツルマル』の悲願を果たしたサンデー『エピソード2』。

 

最後方から、豪脚は見られるか!

 

 

 

3歳時に宝塚記念挑戦、3着に逃げ粘ったローエングリン。

 

マイルに焦点を合わせて走り抜いたG1獲り。安田記念1番人気で果たせなかった5着。

 

宝塚記念、2200m、再び逃げの激走見せるか?

 

 

 

 

すべてを負かせて見せるか?

 

7歳、タップダンスシチー。

 

G1となって以来、勝ち星のない7歳馬(現表記、2000年までは旧表記8歳)。

 

それだけではない。3着まですら来たことがない劣勢年齢。

 

 

オープン出世が5歳3月、18戦4勝だったタップダンスシチー。

 

初重賞制覇が5歳9月、朝日チャレンジカップ。初G1出走が5歳暮れ、有馬記念、2着。

 

晩成タップダンスシチー。

 

同世代の馬たちが引退し、また、力を失くしていく6歳に6戦4勝、3着1回。

 

金鯱賞を勝ち、宝塚記念3着、京都大賞典を勝ち、ついにはジャパンカップを9馬身差の逃げ切り圧勝。

 

不可能というデータへの挑戦。それが、タップダンスシチーだ。

 

 

父プレザントタップ、母オールダンス。アメリカ・ケンタッキー生まれの外国馬。

 

気性の激しいタプダンスシチーを、『パドックでタップダンスを踊っていた』と語る佐々木晶三調教師。入れ込みチャカチャカして、レース前に消耗していた体力。パドックでタップダンスを踊らなくなって、強くなっていったという。

 

タップダンスを忘れたタップダンスシチー。その走りに、年さえ忘れたか?

 

 

 

 

6月27日、宝塚記念。

 

1.シルクフェイマス

2.トレジャー

3.ゼンノロブロイ

4.ローエングリン

5.ザッツザプレンティ

6.サイレントディール

7.ダイタクバートラム

8.リンカーン

9.チャクラ

10.メイショウドメニカ

11.スティルインラブ

12.ホットシークレット

13.ツルマルボーイ

14.ダービーレグノ

15.タップダンスシチー

 

 

1番人気タップダンスシチー、2番人気ゼンノロブロイ、3番人気リンカーン。

 

4番人気ツルマルボーイ、5番人気ザッツザプレンティ。

 

 

ゲートが開くとともに、大外から前をめざすタップダンスシチー。

 

しかし、ハナを奪ったのは内、4番枠から飛び出したローエングリンだ。

 

 

ローエングリン・横山典弘がハナを譲らない。

 

ホットシークレットも飛ばして2番手に上がった。

 

3番手に下げたタップダンスシチー。内から並ぶのはシルクフェイマスだ。

 

 

サイレントディール、ゼンノロブロイが並び、そのあとにザッツザプレンティ。

 

 

中団後方から行くリンカーン。

 

スティルインラブ、チャクラが続き、

 

最後方、ツルマルボーイだ。

 

 

 

3ハロン34秒3、1000m通過58秒5。ハイペース。

 

ローエングリンが作り出したペース。

 

 

2番手ホットシークレットを6馬身、引き離した。

 

さらに3馬身離れてタップダンスシチー。

 

さらにまた5馬身あとにシルクフェイマス。

 

さらに3馬身、サイレントディール。

 

さらに3馬身、ゼンノロブロイ、ザッツザプレンティが並んだ。

 

 

完全にバラけた前の馬、馬、馬、・・・・・・。

 

 

最後方からは、前が見えない。

 

 

このハイペースに、勝負に出たタップダンスシチー。

 

鞍上・佐藤哲三、向こう正面からスパートした。

 

 

ハイペースもなんのこそッ。

 

グイグイ追い上げるタップダンスシチー。

 

 

 

3コーナーで、先頭に立った!

 

ピッタリ付いてきたのは、シルクフェイマス・四位洋文だ!

 

 

懸命に追い上げようとするゼンノロブロイ。

 

予想外の展開か? G1・102連敗中、田中勝春。

 

 

その後方に取り付いたリンカーン・武豊。

 

内から進出はザッツザプレンティ、ミルコ・デムーロだ。

 

 

 

一気に流れを速めたタップダンスシチーが先頭で直線に入った。

 

内から迫るシルクフェイマス。

 

 

2頭が完全に抜け出した。

 

 

横に広がった後続馬群。

 

 

外から迫るゼンノロブロイだ、リンカーンだ!

 

内を突いてザッツザプレンティ。

 

 

4歳が、前2頭を追った。

 

 

来るなら、来い!

 

7歳、魂の走りをみせてやるッ。

 

 

タップダンスシチー、見据えた先のゴール。

 

一完歩、一完歩、

 

深く、強く、激しく、緑のターフを蹴った。

 

 

 

轟く蹄の音、沸き上がる大歓声。

 

 

突き抜けたゴール!タップダンスシチー。

 

高く、高く、鳴った、タップダンス。蹄の音。

 

 

1着タップダンスシチー

2馬身

2着シルクフェイマス

4分の3馬身

3着リンカーン

クビ

4着ゼンノロブロイ

2馬身2分の1

5着ザッツザプレンティ

 

 

(つづく)