4戦4勝で桜花賞を制したダンスインザムード。
全姉ダンスパートナー、全兄ダンスインザダーク、当時、日本有数の良血牝系。
メジロラモーヌ以来18年ぶりの関東馬による桜花賞制覇も相まって、『牝馬3冠』の期待は広まった。
美浦・藤沢和雄厩舎、鞍上は3戦目フラワーカップから手綱を取る武豊、先行・好位からの抜け出しという安定したレースぶり。
何一つ不安のない大本命として、オークス『2冠』達成・・・・・・関西馬を待ち受けた。
兄・姉ともに関西馬。関西馴染みの血統ダンスインザムード。
そやけど、そやからかそ、ダンスインザムードに負けてられへん・・・・・・関西牝馬たちの闘志が沸き立った。
阪神ジュベナイルフィリーズ制覇。2歳女王ヤマニンシュクル。
父はトウカテイオー、その父は無敗の『3冠馬』シンボリルドルフ。母父はイギリスの無敗の『3冠馬』ニジンスキー。
偉大な両祖父をもつヤマニンシュクル。
桜花賞3着から狙う、オークス制覇。
桜花賞2着はアズマサンダース。
父サンデーサイレンス、母は桜花賞17着、オークス7着、スプリンターズSではサクラバクシンオーの4着となったスピード馬オースミシャイン。母父はシンボリルドルフだ。
まだ1勝の身なれど、札幌2歳S2着、チューリップ賞2着、桜花賞2着。最強の1勝馬。
名門・トウショウ牧場(旧=東正牧場)。
祖母サマンサトウショウ、母タバサトウショウ。魔女の血を引く?スイープトウショウ。
桜花賞トライアル・チューリップ賞を勝って5戦4勝。
調教も気が向かなければ、まったく動かない。天性のじゃじゃ馬もレースでは強さを見せつけた。
ただ、じゃじゃ馬スイープトウショウは、いつも後方。大事な一戦、阪神ジュベナイルフィリーズは届かず5着。
桜花賞も、届かず5着だった。
届かすことができるのか。どうする?鞍上は若き池添謙一。
全兄リンカーンと同じく遅れてやってきたグローリアスデイズ。
2戦目未勝利戦勝ち、忘れな草賞3着、フローラS2着でオークス出走を決めた。
兄リンカーンへの期待がそのまま妹へ。
桜花賞は7着と崩れたダイワエルシエーロ。
父サンデーサイレンス、母は桜花賞2着のロンドンブリッジ。
桜花賞こそはがんばりたかった一戦。
オークスは10着と敗れた母ロンドンブリッジから、距離的にもより厳しくなったオークス。
それでも、めざすしかないッ。悔しさ募る母のために・・・・・・G1制覇。
ダンスインザムードを援護するか? 関東の伏兵。
『ヤマニン』対決、西のヤマニンシュクルに対抗するか?東のヤマニンアラバスタ。
全兄にペインテドブラックがいるサンデーサイレンス産駒ギミーシェルター。
レイホーソロン、サマニベッピンと続く牝系レディインブラック。
5月23日、オークス。
1.スイープトウショウ
2.セカンドノホシ
3.ラグレスロマニー
4.ドルチェリモーネ
5.ダンスインザムード
6.ヤマニンアラバスタ
7.ヤマニンシュクル
8.アズマサンダース
9.ギミーシェルター
10.フレンチアイディア
11.メイショウオスカル
12.ウイングレット
13.ダイワエルシエーロ
14.マルカフローリアン
15.レイナシンフォニー
16.グローリアスデイズ
17.レディインブラック
18.シルキーフレンド
1番人気ダンスインザムード、2番人気ヤマニンシュクル、3番人気アズマサンダース。
4番人気スイープトウショウ、5番人気グローリアスデイズ。
単勝1.4倍、圧倒的1番人気となったダンスインザムード。パドックでの大量の発汗。鞍上・武豊の唯一の不安だった。
ウイングレットがハナを切った。
2番手、外から積極的に上がって行ったのはダイワエルシエーロだ。
逃げ馬だった母ロンドンブリッジの血が騒いだか?
アズマサンダース、メイショウオスカル、ギミーシェルターが続くあと、内に入ったダンスインザムード。
馬群の中で、鞍上・武豊はダンスインザムードを落ち着かせた。
その後ろの列、インで潜むスイープトウショウ。
遅れずにまともに出た。
池添謙一には、ジョッキーとして半分の仕事は終えた心境だ。
あとは、前のダンスインザムードを徹底的にマークするだけ。
スイープトウショウに並んでグローリアスデイズ、レイナシンフォニー。
後方から行くのはヤマニンシュクル、レディインブラック。
最後方に並ぶヤマニンアラバスタ、ドルチェリモーネ。
一団で続く隊列。1000m通過、62秒0。
明らかなスローペースで流れた。
向こう正面で、ウイングレットに代わって先頭に出たのはダイワエルシエーロ・福永祐一だった。
血統的にムリ、と言われ続けた2400m。
後ろから差すより、前で粘る作戦か?
主導権を取り、スローに落とし、3コーナーからヨーイドンの競馬ができれば・・・・・・。
スローは肌で感じたダンスインザムード・武豊。
いつになくテンションの高いダンスインザムードを外に出すワケにはいかない。内で抑える武豊。
グッと我慢はスイープトウショウ、池添謙一とて同じ。
3番手にいるアズマサンダース・蛯名正義も、
後方から末脚にかけるヤマニンシュクル・四位洋文も、
グローリアスデイズ鞍上、ベテラン岡部幸雄も、
すべてが待った。ダンスインザムードの動き出し。
時の流れのままに、一団が移動し、迎えた直線。
ダイワエルシエーロに懸命に並びかけようとするウイングレット。
しかし、ダイワエルシエーロは、しっかりした脚取りでゴールをめざした。
差を開く。
内から外に持ち出したダンスインザムード。
ようやく、前を見た。前にいるのは、ダイワエルシエーロ。
迫ろうとするダンスインザムード。
その伸び脚に、キレがないッ。
どうした?ダンスインザムード!
ダンスインザムードの、さらに外に持ち出したのがスイープトウショウだ!
じゃじゃ馬スイープトウショウが、お利口娘に変わった優等生レース。
ここからだッ。激しく、強く、おまえの荒々しさを見せてやれッ!
一気の豪脚。
伸びあぐねるダンスインザムードを差し切った!
前を見た。
前にいた、ダイワエルシエーロ。
ダンスインザムードさえ交わせば・・・・・・だが、前にいたダイワエルシエーロ。
ぬおおおゥーッ!
ダンスインザムードを置き去りに、スイープトウショウ。
渾身の猛追。
後方では、ヤマニンシュクルの追い込み。
シュクルに負けない!
ヤマニンアラバスタ・江田照男も末脚鋭く。
ダンスインザムードに襲いかかった!
そして、
ヤマニンアラバスタがダンスインザムードに並びかけた時、
前方で、ダイワエルシエーロがゴールを駆け抜けた。
スイープトウショウの猛追も、叶わなかった。
1着ダイワエルシエーロ
4分の3馬身
2着スイープトウショウ
3馬身
3着ヤマニンアラバスタ
ハナ
4着ダンスインザムード
1馬身4分の1
5着ヤマニンシュクル
(つづく)