父キングマンボの持ち込み馬キングカメハメハ。5戦4勝、3着1回。
 
唯一敗れた中山コース・京成杯3着。それゆえ、皐月賞を使わずNHKマイルカップに参戦することを決めた。
 
大本命不在、皐月賞。
 
 
最有力候補となったのは、地方競馬・ホッカイドウ競馬に所属するコスモバルクだった。
 
2歳時、ホッカイドウ競馬、ダートで4戦2勝、2着2回。好成績ではあったが、そこに中央・芝で活躍できる保証など、どこにもなかった。
 
鋭い相馬眼で知られる『マイネル』軍団の総帥・岡田繁幸氏が購入、妻である岡田美佐子さんの名義で走らせるコスモバルク。
 
岡田氏の相馬眼はコスモバルクを中央・芝レースを走らせた。
 
 
百日草特別(500万下)を11頭立て9番人気で勝利。
 
ラジオたんぱ杯2歳S(G3)、ミスティックエイジ、ハイアーゲーム、ブラックタイド、中央の素質馬、実力馬を相手に逃げ切り勝利。
 
3月、皐月賞トライアル・弥生賞。5戦4勝、朝日杯フューチュリティS2着のメイショウボーラーを2番手から差し切り、勝利。
 
 
中央、3戦3勝。地方所属のままフェブラリーSを制したメイセイオペラ以来、芝G1で初、クラシックで初の『てっぺん』を狙う・・・・・・『地方の星』コスモバルクだ。
 
 
 
 
新馬勝ち後、ラジオたんぱ杯2歳Sを1番人気で4着だったブラックタイド。
 
父サンデーサイレンス、母ウインドインハーヘア。1歳下の全弟が、ディープインパクトだ。
 
3歳になり、若駒Sを勝ち、きさらぎ賞はマイネルブルックの2着。
 
皐月賞トライアル・スプリングSは後方から強烈な差し脚を伸ばし、重賞初制覇。
 
皐月賞有力候補となった。
 
 
 
 
コスモバルクと同じザグレブの仔。同じ岡田美佐子さん所有のコスモサンビーム。
 
中央、栗東・佐々木晶厩舎に所属。コスモバルクとは違う道からスタートした。
 
中央の素質馬・評判馬には負けたくない・・・・・・思いはコスモバルクと同じだった。
 
 
3戦目に未勝利勝ち。小倉2歳S2着、ききょうS1着、京王杯2歳S1着。
 
朝日杯フューチュリティSを4番人気でメイショウボーラーをクビ差、差し切り。G1制覇。
 
『2歳チャンプ』の称号を勝ち取った。
 
 
皐月賞へ向けて、トライアル・スプリングSはブラックタイドの5着と敗れた。
 
皐月賞こそは・・・・・・。同じ思いのコスモバルクとも初対戦、燃えないわけはない。
 
 
 
 
京成杯を勝って一気に有力馬に名乗りを上げたフォーカルポイント。
 
3戦2勝、3着1回で臨むサンデーサイレンス産駒、ハーツクライ。
 
新馬戦から4連勝。朝日杯フューチュリティS2着、弥生賞2着、快速逃げ馬メイショウボーラー。
 
 
混戦、皐月賞。人気度外視。一発を狙う馬たちがそろった。
 
 
 
4戦1勝、2着1回、3着1回。トライアル・スプリングSを11番人気で3着。
 
皐月賞出走権を得たダイワメジャーも出るからには・・・・・・一発を狙う馬だった。
 
 
父サンデーサイレンス、母スカーレットブーケ(重賞4勝)。全姉に桜花賞3着ダイワルージュがいる良血。この年生まれる3歳下の半妹がダイワスカーレットだ。
 
良血でありながら、気性の激しさが関係者を落胆させたダイワメジャー。わがままで気に入らないことがあれば頑なに反抗する。
 
新馬戦のパドックでは激しく暴れ、終いには歩くことを拒否するかのように、地面に腹ばいになってしまう、という前代未聞の姿をさらけ出した。
 
競走馬としてあるために、厩舎vsダイワメジャー、日々の戦いだった。
 
皐月賞の権利を獲り、なんとか恥ずかしくないレースを・・・・・・できることなら、有り余る素質を存分に発揮してほしい。
 
厩舎の願いだった。
 
 
 
4月18日、皐月賞。
 
1.マイネルマクロス
2.メイショウムネノリ
3.コスモサンビーム
4.カリプソパンチ
5.フォーカルポイント
6.キョウワスプレンダ
7.ブラックタイド
8.メイショウボーラー
9.ミスティックエイジ
10.アポインテッドデイ
11.グレイトジャーニー
12.マイネルブルック
13.メテオバースト
14.ダイワメジャー
15.マイネルデュプレ
16.ハーツクライ
17.スズカマンボ
18.コスモバルク
 
 
1番人気コスモバルク、2番人気ブラックタイド、3番人気コスモサンビーム。
 
4番人気フォーカルポイント、5番人気ハーツクライ。
 
 
スタートよく飛び出したのは、福永祐一騎乗のメイショウボーラー。
 
外から果敢に2番手に上がった。この皐月賞を任されたデムーロが乗るダイワメジャーだ。
 
 
10番人気、我の強さではどの馬にも負けないダイワメジャーを、どう乗るか?デムーロ。
 
 
メテオバースト、メイショウムネノリが行き、コスモサンビーム・バルジューがつけた。
 
そのすぐ後ろを行くのが、コスモバルクだ。
 
 
中央の芝を走り出してからコスモバルクの手綱を取るのは、ホッカイドウ競馬のトップジョッキー・五十嵐冬樹。
 
中央馬に勝つッ! その思いは五十嵐とて同じ。体の芯から震える衝動を抑えて、五十嵐は時を待った。
 
 
打ち破りたい敵は、後ろにいる。
 
 
後方3頭目にハーツクライ・安藤勝己。
 
その後ろにフォーカルポイント・横山典弘。
 
最後方に控えたのが、武豊が手綱を握るブラックタイドだ!
 
 
 
1000m通過59秒7、ペースは遅くない。
 
淀みないペース。
 
速くても、先頭を切るメイショウボーラーには理想だった。
 
 
父タイキシャトルのスピードで2000mを乗り切って見せる!
 
 
3コーナー、さらに加速した。2番手グループに4馬身の差をつけ、先頭を切った。
 
差を詰め切れない後方馬群が、もがいていた。
 
 
 
直線、先頭を走るメイショウボーラー。
 
襲いかかったのは、
 
2番手、デムーロが強気で攻めたダイワメジャーだ!
 
ダイワメジャーの気性の荒さを、プラスに変えた。
 
 
メイショウボーラーを交わし、ゴールをめざすダイワメジャー。
 
驚嘆の声が場内から上がった。
 
 
ブラックタイドも、ハーツクライも、フォーカルポイントも、後方からは何も来ないッ。
 
 
ひたすらゴールをめざすダイワメジャー。
 
交わされながらも懸命に粘るメイショウボーラー。
 
 
2頭に迫るのは、
 
コスモサンビームだ!
 
 
その外から、五十嵐冬樹、渾身のムチ。
 
コスモバルクだッ!
 
 
思い描いた後ろの敵は、来なかった。
 
前に切り替えた五十嵐。
 
 
思いを前に、爆発させた!
 
 
怒涛の伸びを見せるコスモバルク。
 
迫った!
 
メイショウボーラーは交わし去った!
 
 
あとは、
 
ダイワメジャーだッ!
 
 
 
競走馬になれるのか?
 
周りが、戸惑いしかなかった気性の持ち主、ダイワメジャー。
 
 
血の強さが、上回った。
 
 
覚醒ダイワメジャー。
 
 
コスモバルクの追撃を振り切った。
 
 
1着ダイワメジャー
1馬身4分の1
2着コスモバルク
2馬身
3着メイショウボーラー
1馬身4分の1
4着コスモサンビーム
4分の3馬身
5着ミスティックエイジ
 
フォーカルポイント9着、ハーツクライ14着、ブラックタイドは16着に敗れた。
 
 
(つづく)