-遠山月子の-明日はどっちだ。
遠距離恋愛、仕事、過去、街で見かけた変な人(笑)…
日常・非日常を綴るつれづれ4コマ。


 
ご自由にお持ち帰りください。喜びます。



遠山 月子
Tsukiko Toyama

秋田県出身、遠距離恋愛中の27歳。
芸者~アパレルなど離職、転籍、解雇の合間にフリーデザイナーとして生活をつなぐ。主要ジャンルはホラーイラスト。
しっかり者の家系の中で異端のアウトロー。そこそこ波瀾万丈。
http://ripcurrent.web.fc2.com/


富竹 晴久
Haruhisa Tomitake

月子の恋人、現在24歳。
アシンメトリーな前髪にこだわり有りの、のんびりふにゃふにゃ。
とにかくでかい身長183cmくらい。機械に強い。
優しいけれど無責任なことは言わない、意外にはっきりした外見草食系。
これをロールキャベツ男子というらしい。


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最近のこと…

違和感世界律。

心理学を学んだのも今は過去となってしまった。
運動錯視と言ったかは忘れたが、多くの人も経験があるのではないだろうか。
自分が乗っている電車は停車していても、隣の電車が動くとまるで自分の乗った電車が動いている気がする場合がある。
それと似ている、と思ったことがある。

付き合う男付き合う男が全員、おかしくなっていくという女社長がいた。
皆最初は至って普通らしいのだが、次第に鬱っぽくなり行動も奇異なものへ変わっていく。
女社長が元々、そういう傾向のある人間を選んでいるとか、そういう傾向の人間に好かれやすいという理由もあるのかもしれない。
事実、「そういう傾向にない」男と付き合っても1年と経たずに別れた。
「そういう傾向にある」相手だと、相手は鬱っぽくなり苦しみながらも女社長から離れようとはしなくなるので、別れた彼は至極真っ当な思考力、精神状態だったのだと妙に納得する。
それはそれとして付き合う男が変になる最たる理由は、彼女が相手を惹きつけながらも認めないところにある。
男の自信を削いでいく。
男たちは認められようと必死になればなるほど、彼女に認められずに空っぽになっていく。
言ってみれば対価の支払われない重労働のようなものだ。
しかも雇い主は彼女以外にいないと思うほど、絶対的な存在感を相手に与える。
反面、女社長も鬱の傾向がある。
もの凄く強いのに消え入りそうに弱い…というアンバランス感もモテる理由だろうか。
だが自分が認められない相手に諭されることが何より嫌いなので、男達が彼女を支えようとしたところですれ違うばかりなのだ。

自分が電車に乗っているとしよう。
一般に誰もが目的地をもち、そこへ向かう。
身を委ねた電車がスムーズに進んでいると最初は思うのだが、そうではなく、常に反対側の車両が動いている。
それに気付かなければ、いつまでも次の駅に着くことはない。
しかも女社長は対向の電車に乗っている。
この圧倒的な違和感を認知せず追いかけようとしても、追いつくということがない。

彼女一人だけが乗った電車はといえば停車駅もなく、ただ燃料の尽きるまで走り続けるだけのような気がする。
誰かが乗った電車が停まっている駅を、幾度となく通過するだけだ。

顔無シ人。

不意に起きた、起こるはずのない事象に対して人は無防備だ。
幽霊の 正体見たり 枯れ尾花。
理解してしまえばどうと言うこともないが、理解できていないうちは仮想のものもリアリティをもって迫ってくる。

私事だが昨日今日と連日、夜にゆったりと道を歩く老婆と近所で会っている。
丸い背に、か細い脚腰。街灯の下、不安を煽るようなスローモーションの歩みと、なびく白髪。
日本昔話のように山奥で出会ったら絶叫もするだろうが、ここは仮にもすぐ近くに国道が走っているベッドタウン。
失礼な話である。
だが例え散歩だとしても徘徊だとしても、遅めの時間に二晩連続で会うと少し緊張してしまう。
老婆が私の住むマンションの入り口の前に差し掛かろうかというとき、私の足が相手の歩みを追い越した。
老婆に背を向け、オートロックと手動のハイブリッドなドアを開けて中へ。
勢いよく閉じてくるドアをいつものように背中で受け止め衝撃を緩和しようとした…が、ドアが閉じてくる気配がない。

背筋が凍った。
先ほどまで、ゆっくり歩いていた老婆がいつの間にか私の後ろでドアを掴んでいる……のを、想像してしまった。

振り返ると、ドアがゆったりと閉じてきた。
考えてみればバネが効かなくなっていたのか、引っ越してきた当初よりも最近はドアが強く閉まるようになっていた。衝撃音も酷い。
おそらくは住民が管理会社に話したか、気付いた管理会社がドアを直したのだろう。
酷いのは自分の妄想力である。

話は変わるが、M子という男にモテモテの元キャバ嬢がいた。
S男はM子が実際にモテているのを見たことはなかったが、M子に「今日電車でナンパされた」「前に付き合っていた、少し病んでる男が一日に70件も電話をしてくる」と言われると、そうだろうなと思う。
よく知りもしない男達に嫉妬もした。
ある時、M子はバイト先の店の前で、遠距離恋愛をしていた元彼に会ったという。
「あいつ、いるはずがないのに…わざわざ飛行機を使って東京まで会いにきたんだわ。」
それから度々、元彼がバイト先の店の周りに現れるようになった。
M子が休憩中に「今日も来てる」と電話で話すたび、S男は「俺が追い払いに行こうか?」と言った。
無視するから大丈夫、とM子は言っていた。
ある日、とうとう家の近くで見かけたと言う。
S男がM子の家まで行き、二人で過ごしていると玄関のインターホンが鳴る。M子が出た。
が、 誰もいない外が映し出されるばかりだった。
「絶対あいつよ!」
S男はM子につきまとう元彼に苛々した。ストーカー行為だ。
しかしそれ以後、元彼はM子の前に現れなくなった。

数日後、S男はM子の元彼と出くわす。
二人も顔見知り故、憤りを隠せないながらもS男はM子の元彼と話をした。
「ずっとM子のバイト先の近くうろついてたらしいけど、俺はお前がM子に近づくのは許せない。大体、仕事はどうしたんだ?」
それを聞いて元彼が首をひねる。
「俺はM子に会いたいから来た。でも東京に着いたのは昨日。それに、キャバ復帰するから店に来ていいよって言ってきたのはM子本人だよ。」
言われてみれば、そんなに長期の休みを社会人がとることは難しい。
S男は、元彼が来ているというのがM子の嘘だったと知った。
しかも、キャバクラ復帰は知っていたが自分で元彼を呼んでいたとは知らなかった。
ずっと、元彼と電話やメールのやり取りをしていたことも。
S男は性懲りもなく暫くM子と付き合っていたが、やがてM子が全く別の男と付き合うことを選んだため別れた。

「ただなぁ、未だにあの時のことで一つ疑問があるんだよ。」
それが何なのかは、私も気づいていた。
「あのインターホン、誰が鳴らしたのかなぁ。単に近所の子供がピンポンダッシュしたのか?」
その偶然を、すぐさま自分の舞台の小道具に仕立てるなんて恐ろしい。
もしM子の情念がインターホンを押した犯人なら、もっと恐ろしい。

無人ノ墓。

何を突然、小説の真似事を始めたのか?と思う人も少なくはないに違いない。
が、これらは実際にあったことだ。
いや当時の嘘と本当の境目が、数年経った今でも私にも判別しきれないことも多々あるため事実とは異なるかもしれない。
それでも、私から見た事実を書いておこうと思う。
尚、改めて登場させる人物の人となりや背景などを、なるべく特定されないよう改竄していることをお断りしておく。

Kという男友達から、彼の愛しのOなる女性の話を聞き違和感を感じた私は一人、都内の墓地を目指した。
丁度、ある伝手からWという男性の話を聞いた頃だった。
WとNという二人は親友同士でありながら同時にどちらもOと付き合っていたが、Oは死んだと聞かされ疎遠(この場合この言葉は正しくなさそうだが)になったらしいということ。
この話は、Kは知らない。
そしてそのKには、Oは「自分は結婚歴があり、Nという男と結婚していたがNは死んだ」と話していた。
地方に暮らしているはずのWとNのもとへ行って確認するには時間も費用もかかるので、Oが話の中でKに言った、Nの墓があるとされる墓地へ行ってみることにしたのだ。

結論を言うと、Nの墓はなかった。

思ったよりも広大な墓地だったのでここでも確実なことは言えないが、事務所で調べてもらったのだ。
NとOが本当に結婚していたとして、墓はどちらの名義になっているのか?
わかるはずもない。
Oが偽名であるならば戸籍に記されているだろう(と予想した)苗字、養子と宣っていたので謎の父の苗字、など4通りの苗字で調べたが、Nの墓は見つからなかった。
Nの親族の誰かが名義人であれば情報も少ないしほぼお手上げだが、Nが珍しい苗字であったことが幸いしたというべきか。
その珍しい苗字が一致するデータはない、と言われた。

ちなみに、墓地で墓を検索する場合だが、必要なのは故人の名前ではなく登記した名義人の名前なのだ。(場所によるとは思う)
その墓地で聞いた理由は、
「生きている人はある程度限られるが、亡くなった人は過去に遡り生きている人以上にたくさんいる」からだそうである。
だがOの場合、死んだ人が生きていたり、生きた人が存在しなかったりするのだから参る。

ただ、Oにとって誰かしらは確かに死んでいる…根拠はないが、そんな気がした。

一、了。

「あの道の前に、大きなバルコニーがある白い家があるでしょ。お城みたいな。
あそこが、あたしの実家なのよ。
でも今は、昔からお世話になってる近所の一人暮らしのおじいさんが倒れちゃったから、両親はその家にいるの。
今、あのお城には誰か知らない人が住んでる。
そうそう、あのバルコニーをつたって強盗が入ったことがあったんだけどね、あたしが倒しちゃった。
警察が来てね…覚えてる?中々連絡できなかった日があったでしょ。
それとここに来るまでに大きな会社があったでしょ。
父はあそこの代表取締役なのよ。
でも変わり者だから今は引退して、農家やってるの。変人でしょ。
母には何人も愛人がいて、あたし実は今の父とは血の繋がりがないのよ。
養子ってことになってるの。
あ、また。
この手紙、失踪中の兄から。
お金を無心してくるのよね…私がAとして名前と顔が売れちゃったから、それを知ってお金を寄越せってね。

その辺に座って。
あなたとお酒を飲もうと思って、あなたのためにワイングラスを新調したの。」


これらの全ての言葉を、彼は一切疑わなかったという。
彼、の名前は伏せておく。
お城のような家も、大きな会社も無関係な人の持ち物だった。
優しく寂しいじいさんは存在しなかった。
強盗事件もなかっただろう。

翌日、彼のために新調したというグラスを、友人と彼女が合わせているのを彼は見た。
約1年後、燃えるゴミに仕分けされた「兄からの無心の手紙」が、単なる町内会案内だと知った。
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