医師国家試験合格率を、様々な観点からランク付けする。見せかけの合格率は無意味であり、ここではあえてランク付けをしない。

 

●真の合格率(10年間合計) ベスト10

 

1位 順天堂大 97.22%

2位 自治医大 96.79%

3位 慈恵医大 96.00%

4位 横浜市大 95.48%

5位 浜松医大 95.16%

6位 東医歯大 94.76%

7位 筑波大 94.73%

8位 千葉大 94.68%

9位 名古屋市大 94.54%

10位 福島県医大 94.19%

 

医師国家試験の合格率は国公立上位のイメージがあるが、私立大が1位から3位を占め、順天堂大が1位だった。見せかけの合格率では毎年1位常連の自治医大は、真の合格率(10年間合計)では2位だった。4位以下は国公立大が占めたが、旧帝大は1校もランクインせず、最高は東北大の91.39%(20位)だった。公立大学は総じて合格率が高いが、奈良医大だけは下位(58位)だった。偏差値ベスト4(東京大、京都大、大阪大、慶應大)の中では慶應大がトップで12位だった。

 

●真の合格率(10年間合計) ワースト10

 

71位 熊本大 82.81%

72位 杏林大 82.37%

73位 愛知医大 78.64%

74位 金沢医大 78.26%

75位 久留米大 78.12%

76位 近畿大 78.06%

77位 福岡大 77.53%

78位 川崎医大 73.13%

79位 帝京大 72.75%

80位 岩手医大 71.66%

 

偏差値が低め(=偏差値の順位41位以下)の私立大が名を連ねる中、国公立大ワースト1位の熊本大が71位にランクインした。国公立大ワースト2位に鹿児島大、ワースト4位に大分大、ワースト5位に宮崎大が入るなど、九州・沖縄の国公立大学(全8校)は、旧帝大の九州大を含めて全般的に真の合格率が低かった。前回同様、今回も最下位は岩手医大だった。

 

●真の合格率(単年) ベスト10 (80校×10年間なので、1位~800位まで)

 

1位 2020年 順天堂大 99.22%

2位 2011年 滋賀医大 99.05%

3位 2014年 福島県医大 98.92%

4位 2014年 順天堂大 98.91%

5位 2019年 順天堂大 98.39%

6位 2020年 自治医大 98.36%

7位 2015年 順天堂大 98.21%

8位 2020年 東医歯大 98.20%

9位 2016年 順天堂大 98.18%

9位 2016年 慈恵医大 98.18%

 

医師国家試験の合格率は高いイメージがあるが、真の合格率100%を達成したデータは最近10年間では1個もなく、11年前の2009年の防衛医大で記録されたきりである。順天堂大は5つランクインし、高いレベルで安定している。やはり、旧帝大は1つもランクインせず、最高でも2016年の東北大で95.31%(83位)だった。

 

●真の合格率(単年) ワースト10 (80校×10年間なので、1位~800位まで)

 

791位 2017年 杏林大 68.84%

792位 2019年 福岡大 68.49%

793位 2013年 川崎医大 68.18%

794位 2017年 愛知医大 67.15%

795位 2012年 川崎医大 66.93%

796位 2019年 岩手医大 65.28%

797位 2018年 岩手医大 64.62%

798位 2019年 金沢医大 64.38%

799位 2014年 帝京大 61.94%

800位 2017年 帝京大 60.56%

 

すべて私立大が占め、順当に偏差値が低めの大学が名を連ねた。川崎医大・岩手医大・帝京大が2つずつランクインしたが、特に岩手医大と帝京大は、10年間全て700位以下で、非常に低いレベルで安定している。

 

国公立大のワースト1位は、2013年の高知大で、75.25%(760位)だった。高知大の最高順位は2017年の420位が最高で、毎年順位が真ん中より下(401位以下)である。10年間合計でワースト1位だった熊本大も同様で、最高順位が2014年の474位であり、それ以外はすべて600位以下だった。鹿児島大は、10年間合計でワースト2位だったが、最高順位が2015年の500位で、やはり毎年順位が真ん中より下である。10年間合計のワースト3位は高知大で、国公立大学では熊本大・鹿児島大・高知大の成績の悪さが目立つ。

 

●水増し分 ベスト10(水増し分が少ない方が優れている)

括弧内は、出願者数から受験者数を引いた数

 

1位 慈恵医大 0%(0人)

2位 順天堂大 0.0873%(1人)

3位 福島県医大 0.0883%(1人)

4位 宮崎大 0.1488%(2人)

5位 琉球大 0,1508%(2人)

6位 鳥取大 0.1840%(2人)

7位 信州大 0.2370%(3人)

8位 島根大 0.2497%(3人)

9位 香川大 0.3152%(4人)

10位 徳島大 0.3240%(4人)

 

慈恵医大が0%で、出願者全員が受験していた。真の合格率ベスト3に入った慈恵医大と順天堂大が、ここでも1位と2位に入り、優秀な成績を残した。真の合格率2位の自治医大は、水増し分が2.4090%(28人)あり、51位だった。見せかけの合格率(新聞に掲載される合格率)1位常連の自治医大だが、実は水増し分が多いという事実があり、注意を要する。国公立大は、総じて地方の大学がランクインした。

 

●水増し分 ワースト10

 

71位 金沢医大 6.2933%(101人)

72位 久留米大 6.7157%(106人)

73位 藤田医大 7.0686%(94人) 

74位 帝京大 7.1462%(128人)

75位 北里大 7.3588%(105人)

76位 杏林大 8.2977%(128人)

77位 愛知医大 8.3620%(126人)

78位 近畿大 9.1550%(133人)

79位 岩手医大 10.4143% (184人)

80位 川崎医大 13.3786%(221人)
 

すべて偏差値が低め(=偏差値の順位41位以下)の私立大が占めた。国家試験の合格率が低下すると、国からの補助金が減らされるため、私立大としては困る。そのため大学側が、国家試験に不合格になりそうな学生に対して、出願していても、予め卒業試験で落としておく(卒業させないことで、強制的に国家試験を受けさせない措置を講ずる)ため、水増し分が増える。

 

すべて偏差値が低めの私立大が占めたことから、元々入学してくる学生の学力に問題があり、水増ししないと医師国家試験の合格率を一定レベルに保てないものと思われる。川崎医大が突出して高いのは、高校からの内部進学者が多く、内部進学者の学力に問題があるためだろうか? 新聞等に掲載される川崎医大の合格率(見せかけの合格率)は、信用できない。

 

国公立大のワースト1位は、熊本大で、4.1130%(64位)だった。

 

●前半(2011年~2015年)と後半(2016年~2020年)の真の合格率を比較する

 

これまで2011年~2020年の10年間のデータを示したが、前半の5年間と後半の5年間に分けて比較し、真の合格率の変化を調べた。

 

 

●真の合格率 変化ベスト10

 

1位 兵庫医大 +7.520%(63位→15位)

2位 東邦大 +7.516%(69位→25位)

3位 聖マ医大 +6.23%(72位→54位)

4位 東北大 +4.83%(43位→12位)

5位 川崎医大 +4.58%(80位→78位)

6位 山口大 +4.19%(61位→34位)

7位 秋田大 +4.03%(50位→17位)

8位 高知大 +3.97%(67位→53位)

9位 琉球大 +3.38%(60位→36位)

10位 京都大 +2.94%(55位→31位)

 

これらの大学は、合格率上昇に向けて何らかの対策が行われている可能性がある。昨年と同じく、兵庫医大が1位だった。川崎医大が5位に入ったが、元々の合格率が低いため、後半5年間の順位も78位と低迷している。高知大は、10年間の合計で国公立ワースト3だが、近年の合格率は上昇傾向にある。国公立大学の後半5年間の合格率は、横浜市大、浜松医大、東医歯大がベスト3だった。

 

●真の合格率 変化ワースト10

 

71位 福井大 -3.32%(28位→57位)

72位 北海道大 -3.726%(25位→56位)

73位 金沢医大 -3.82%(74位→76位)

74位 杏林大 -3.87%(65位→72位)

75位 藤田医大 -4.30%(49位→67位)

76位 獨協医大 -4.47%(62位→71位)

77位 京都府医大 -4.50%(12位→42位)

78位 久留米大 -4.57%(73位→77位)

79位 日本大 -5.14%(24位→63位)

80位 岩手医大 -6.26%(78位→80位)

 

岩手医大・久留米大・金沢医大は前半の真の合格率が低かったが、後半はさらに低くなった。大学側の姿勢が問われる。旧帝大で北海道大がランクインした。また、公立大学は奈良医大を除いて元々合格率が高い傾向にあるが、京都府医大の低下傾向が目立った。国公立大学の後半5年間の合格率は、熊本大、大分大、鹿児島大がワースト3で、全て九州の大学だった。

 

●まとめ

 

以上より、医師国家試験の真の合格率という観点から見た、医学部受験生におすすめの大学は、次のようになる。

 

ベスト5…順天堂大、自治医大、慈恵医大、横浜市大、浜松医大

次点…筑波大、名古屋市大、千葉大、東医歯大、福島県医大、(大阪市大)、(慶應大)

 

総合的に判断したが、結果的に10年間の真の合格率ベスト10がそのままベスト5と次点にランクインした。大阪市大と慶應大は11位と12位だが、立地とネームバリューを多少考慮に入れるのであれば、次点に入れてよいだろう。

 

この10(または12)大学の中には、旧帝大は1つも入らない。医師国家試験の真の合格率だけで考えると、苦労して旧帝大に入学するのは割に合わない。東京大よりも、その近くにある東医歯大・千葉大・筑波大・横浜市大の方が合格率がずっと高く、割に合う。医学部受験生は、自分にとって何が最優先なのか、よく考えて欲しい。

 

旧帝大にこだわるのであれば、東北大が一番成績が良い。10年間の真の合格率が20位で、全体の順位はパッとしないが、それでも旧帝大の中では1位である。また、後半5年間に限定すれば全体の順位で12位と、まずまずの成績である。偏差値トップ4にこだわるのであれば、学費はかかる(私立の中では安い)が、慶應大がおすすめである。

 

4種類のワースト10すべてにランクインしたのは、岩手医大・金沢医大・杏林大だった。3つにランクインしたのは、久留米大・愛知医大・川崎医大・帝京大だった。私立では、この7つの大学が要注意である。

 

また、国公立大では熊本大・鹿児島大が要注意である。この2つの大学は、10年間だけでなく、後半5年間でも国公立大学で真の合格率ワースト3に入っている。単年でも順位がすべて401位以下である。「国公立大学だから医師国家試験の合格率が高い」という原則は、この2大学には当てはまらない。高知大・大分大も、この2大学に次いで真の合格率が低く、水増し分も高いため、要注意である。

 

以上、医師国家試験の真の合格率に関して考察した。

 

おまけの章 終了