会社を倒産させて自己破産する経営者が綴るブログ
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破産申立時に必要な資料

代理人弁護士に提出した資料を列記してみる。弁護士はこれらを取りまとめて破産申立書を裁判所に提出する。

当社の場合、破産申立て時には長年務めていた経理担当者を既に数カ月前に解雇済みだった。その直前に経理担当のあとを継いで覚束無い状態で業務を担当してた者も家庭の都合で退職。私は経営に必要なデータは一括して管理していた。ただ、エビデンスが必要になるものがちょっと辛かった。保険の証書って何処にあるの?みたいなことが多々あった。

作業量としてボリュームがあるのが債権の一覧だ。債権者の住所電話番号等も記載する。
財産の方は結構処分済みなものが多かった。当然、倒産する前、経営状態が悪い時に普通は財産を処分して延命するものだ。だから財産一欄を作るのは残念ながら苦にならないw。

担当者が退職済みとは言え私は経営状態を掌握していた。なので必要なデータはスムーズに出せたと思う。担当弁護士も「しっかりと管理できてますね。倒産間際の会社は混乱してるものなんですけど」と言われた。混乱していないのに倒産してしまった、情けないと見るべきか、倒産しそうなのに混乱しなかったと誇りに思うべきか微妙なところだw。

-決算書(二期分)
-直近の資金繰り表
-全ての銀行通帳(過去一年分の資金の動きがわかるもの)または当座照合表過去一年分
-賃金台帳
決算書が無い会社は無いだろう。問題ないと思うのだが。賃金台帳や資金繰り表は倒産間際の会社では用意できてない場合が多いらしい。確かに資金が足りない時の資金繰り表作成ほど辛い作業はないし賃金未払いが続いたりすると台帳も作られなくなったりする。そういう会社は多いらしい。当社は弁護士依頼の直前までちゃんとやってあった。

-債権一覧
--借入金一覧
--手形・小切手債権一覧
--買掛金一覧
--リース債権一覧
--労働債権一覧
--公租公課一覧
借入金は銀行からの計算書があるはずなので問題なくクリアした。色んなところから借りまくってたりすると大変かもしれない。買掛金も大抵の場合、多岐に渡るだろう。商品や原材料の仕入れから家賃や駐車場代、プロバイダ料金とかレンタルサーバー代とかほんとうに色々ある。滞納とかがあるとワケが分からなくなる場合が多いらしい。

-財産一覧
--現金
--預貯金一覧
--受け入れ手形・小切手一覧
--売掛金一覧
--在庫商品一覧
--貸付金一覧
--不動産一覧
--機械工具類一覧
--什器一覧
--自動車一覧
--電話加入権一覧
--有価証券一覧
--保証金・敷金一覧
--保険一覧
--その他財産一覧
--賃貸リース物件一覧
当社は父親の代からつづいている会社なのでそれなりに歴史がある。これらの中には古くから持っていて長いこと手をつけていない資産があったりする。そこを掘り起こすのは当社の場合、結構大変だった。見たこともないファイルからエビデンスを探し出したり。機械工具や什器は決算書にあるものをそのまま出せばいい感じ。ほとんど換価できないので管財人もあんまり細かく突っ込んでこなかった。

***
ちょっと慌てたというか苦労したところが二点ほど。
弁護士に正式依頼後、会社が私にかけていた生命保険を解約した。その解約をあと1-2日で終わらせなくてはならないとき、保険の証書が見つからない。証書無しで解約しようとしたら会社の印鑑証明が必要だという。印鑑証明は手元にあったので安心していたのだがふと不安に感じて...印鑑証明の日付は五ヶ月前だ。普通半年ぐらいは有効と認めてくれるのだが生命保険会社は三ヶ月以内の印鑑証明が必要だという。「ねえ、〇〇さん、ちょっと印鑑証明取ってきてよ」って頼む相手はもういない。法人の印鑑証明は法務局まで行く必要がある。ちょっとそこの区役所までってワケには行かない。忙しい時間を縫って自分で行かないとならない。印鑑証明もらって生命保険の事務所まで行ってその足で弁護士事務所ぐらいの感じで綱渡りだった。

もう一つ。一万円ほど残高があるまま十年以上放置してある当座口座があった。解約しておけば良いのに破産申立て時に残ってると厄介だ。破産申立て時には一年間の銀行口座の動きを証明する必要がある。当座の動きがあれば照合表が送付されるのだが放置してあるだけなので照合表はない。なので過去一年動きがないということの証明が必要になる。

これがバカバカしい話で一ヶ月分の出入金記録を出すだけで450円だかの手数料がかかる。一年分というのが何処から何処までと判断されるのか判らないので14ヵ月分を依頼。この手数料だけで5400円だ。しかも出力までに二日かかった。銀行口座をたくさん持ってる会社は破産申立て時に手間がかかるので注意したほうがいい。けど、申立前に解約しても直近の決算書に記載があれば過去一年分のエビデンスは求められる。来季当たり倒産するなって思ったら口座を整理しておいたほうが良い。と言ってもそんな後ろ向きな事を考える経営者なんていないと思うのだが。

ここまでの時系列まとめ(その二)

ここまでの時系列のまとめ|会社を倒産させて自己破産する経営者が綴るブログ
上記エントリーの続編です。特定を避けるため日程はかなりずらして書いてます。

2010/09/06(月)
解雇通知を出した筈の社員がほぼ全員出社する。おまいらどんだけ会社が好きなんだって呆れるやら嬉しいやら。部下たちは仕入れ先や顧客の説明に駆けまわる仕事を継続。このころから当社に対して未払いが残っている取引先は絶対にただじゃおかねえと脅しとか締め付けとか締め付けをを始める。

2010/09/07(火)
部下から「A社だけは説明できないっす。会社が支払えないなら俺が自分の金で買掛金を払うっす。」って言われた取引先があると報告される。私も心配していた取引先だ。「お前が払う必要はない。俺に任せろ。」とアテのない約束をする。

2010/09/09(木)
A社に大して出来ることを全力で考えた末、出来上がった筋書きを実行に移す。何とかなりそうって目鼻がついた。このエントリー参照。昼ごろに未払いのある会社の社長が当社に説明に来るって話になっていたのだが直前でドタキャンされて担当部長だけが来る。ここで担当部長を見方に引き込みさらに社長を追い込む作戦開始。

2010/09/10(金)
ブッ殺されるのを覚悟の上でA社の社長に説明に行く。ブッ殺されずに済みある程度のご理解をいただく。夜に未払い社長から全額支払うとの連絡があった。ありがとうございます、助かりました、口だけの礼を述べる。出社している社員には出社は今日までにしなよ、と伝える。

2010/09/13(月)
殆どの社員が出社する。おまいら...。弁護士から連絡が入り銀行口座を全て現金化して09/15に持ってくるようにとの依頼あり。びっくらこいた。

2010/09/14(火)
話がついていなかった買掛先からクレームが入り始める。09/10が支払い予定日だった取引先だ。20万以下の少額なので目をつぶっていたのが何件かある。出来ることに関しては対応するようにする。部品を渡すとか。


2010/09/16(木)
弁護士と正式契約。札束抱えて赴く。夕方17:30から始まって21:30頃まで打ち合わせ。頭を丸刈りにする。反省してっていうより気分転換。

2010/09/17(金)
会社が受取人の生命保険を解約。法務局に行って印鑑証明貰う。その足で生命保険事務所に行って解約。

2010/09/22(水)
銀行口座の一つをオンライン確認したら不審な動きが。差押食らったか?

2010/09/24(木)
銀行口座を差し押さえたのは日本年金機構だった。数万円ぐらいしか入ってないので実害は些少。けど、このタイミングであればされど数万円というべきか。税務署も売掛金差押準備に取り掛かっている動きが認められる。弁護士曰く驚くべき速さらしい。

2010/09/25(金)
年金機構から売掛金差押のラブレターを貰う。売掛金はこの時に考えていた破産処理の大切な原資。弁護士に連絡すしたら「破産手続きが開始したら差押は無効です」との連絡を受ける。

2010/09/27(月)
弁護士からメール。ごめんごめん。税務署は破産手続き後も差し押さえできるんだって。間違えてた。って内容。マリワナ海溝より深く落ち込む。税務署と社会保険事務所の動きが早いので破産手続きを前倒しにするよう作戦練り直し。その日のうちに弁護士は破産申立のため裁判所に。

2010/09/28(火)
債権がない会社名義銀行口座の解約手続き。弁護士の連絡で郵便局に行ってみると大量の郵便物が溜まってた。郵便局は破産手続き受任通知が会社に貼り出されると郵便物を留め置くらしい。税務署からのラブレターも混じってたけどそのまま弁護士に渡す。

2010/09/29(水)
裁判所に赴く。裁判所の人(判事?)二名と破産管財人となる弁護士、俺の代理人の弁護士で状況の確認。僅か十分ほどで破産手続き開始決定がなされる。その後、俺、代理人弁護士、管財人弁護士の三者で状況の確認。

2010/10/01(金)
会社のイントラネットの中枢であるサーバー機(リース物件)を返却する。社内DBのバックエンドはローカルディスクに切り替えられるようになってるので取り敢えずデータは見れるけど。手塩にかけて構築したシステムがなくなり何度目かの喪失感を味わう。

2010/01/04(月)
管財人弁護士からなんで差押が早かったか知る。業界情報サイト経由で破産情報が回ったらしい。09/15が弁護士との契約と受任通知発送。09/22には破産情報が出てる。代理人弁護士も管財人弁護士も見たことがないスピードらしい。業界の特殊事情があるのかも。

2010/10/06(水)
NTTが光回線の引き上げに来る。会社は電話も繋がらなくなりネットもできなくなった。また喪失感。

2010/10/07(木)
会社名義のドコモの回線を解約。また喪(略

2010/10/08(金)
会社名義で割賦支払い中で俺が常用しているプリウスを返却する。23歳の時に車を持って以来、初めて自分用の車がない身分になる。24年ぶりか。移動は自転車で済ますことが多いので実際に困ることは殆ど無いけどまた喪失感。

2010/10/11(月)
俺と一緒に二人代表の一人会長取締役である父親の破産手続きのための打ち合わせの予定だったが予定変更。目下のところの破産手続き最大懸案事項の為に父親の破産手続きを遅らせる作戦を取る。この最大懸案事項についてはこのブログで書くかどうか悩み中。

差押との攻防

このエントリーの中に間違いがありました。破産手続き開始後にも税務署は差し押さえが出来るそうです。参考になさる方はお気を付けて。

弁護士に破産手続きを依頼すると債権者に受任通知が送付される。一般の債権者はこれで取り立てできなくなる。しかし、例外がある。税務署と日本年金機構だ。

【税務署と年金機構に対する滞納について】
会社経営している人以外には分かりづらいと思うので簡単に説明する。会社は普通の売買と同じように仕入れ先に消費税を払い、売り先には消費税を請求する。支払った消費税と受けとった消費税の差を税務署に納めなくてはならない。これが三ヶ月に一度、請求が来る。この支払がなかなか厳しいってのは資金繰りに苦労したことのある経営者だったら誰でも理解してもらえると思う。

同時に年金と健康保険。これは月々の支払だ。年金は社員の給料から天引をしている。健康保険は天引き分と会社負担分の両方だ。それも毎月、年金機構に支払わなくてはならない。

これらの支払いは割と簡単な交渉で先延ばしに出来る。銀行より新しい融資を引き出すよりよっぽど簡単だ。資金繰りの相談に銀行に行くと新規借り入れより暗に(またはあからさまに)これらの滞納を勧めてくる。

ご多分に漏れず当社でも消費税と健康保険・年金を滞納している。であるから税務署と年金機構は債権者となる。この債権者は差押を執行する権利がある。この差押に強大な力があるのだ。払込通知書(事実上の請求書)が来てその都度説明していればある程度は待ってもらえるがそれを無視したり、再三再四の引き伸ばしに応じられないとなると差押となる。

【税務署等の差押とは】
税務署等の差押の対象で先に狙われるのは銀行口座だ。残高がある日突然、ゼロになったりする。その次に売掛金になる。不動産とかはほぼ確実に抵当権が付いているので狙われないようだ。売掛金に付いては税務署から顧客に対し会社ではなくて税務署に支払ってくれって話になるようだ。これは聞いた話だけど売掛金に対する差押予告ってやつをやられるだけで相当に辛いらしい。税務署から顧客にこんな連絡が行く。「貴社では〇〇社と取引がありますね。〇〇社は税金を滞納しています。差押をしたいので買掛金の状況を教えてください。」

こんな連絡が入ったらまともな会社は取引を躊躇するだろう。こんな連絡を主要な取引先にされる。これは経営者にとって事実上の死刑宣告に等しい。ただでさえ経営が苦しいところなのに取引先から取引を打ち切られる可能性が高くなるのだ。

驚いたのが弁護士に依頼して最初に言われたのが「現金を全部引き出して持ってきて下さい」と言われたことだ。正式依頼の段階で数百万の残高がある。それを全部持って来いと。これも差押対策なのだ。

私は勘違いをしていた。弁護士が受任通知を出せば税務署も年金機構も債権の取立が出来なくなると思い込んでいた。けど、それは間違いだった。途中で疑問に思って弁護士に聞いた。「今の段階(正式依頼した後)でも税務署や年金機構は差押が出来るってことは売掛金に対してもそれが出来るってことですよね?」これに対する弁護士の答えは「そうです。だからこのケースでは迅速にやらないとまずいんです。」

【今回の差押の実態】
正式依頼の前に税務署と年金機構には「09/20頃まで待ってください」と連絡してあった。その頃になれば受任通知が税務署等に回ると思ってた。私は直接対応しなくても済むし、裁判所が立てた破産管財人の指示に従って税金等も支払われることになると思ってた。

ところが弁護士に対する正式依頼から裁判所の開始手続き決定の間(この間、一般の債権者は取り立てが出来ない)にも税務署等は差し押さえができるのだ。だからこれらの債権者には弁護士からの受任通知は回らない。差押を促すことになってしまうからだ。

税務署にしてみれば09/20頃まで待ってくれと依頼されたのに連絡がない。会社に電話すると誰も出ない。これはおかしいと思って事務所に来てみれば弁護士の張り紙がある。となるとすぐに差押に動くのだ。これを私が先に知っていれば9月末頃まで先方に連絡して引き伸ばしをするのに。この辺、弁護士の説明が少なかった。いや、私の察しが悪かったのか。

まず、年金機構が動いた。銀行口座のうちの一つを差し押さえられた。残高は弁護士の指示によってほぼ全額引き出されていたので差し押さえられた金額は五万円ほどだった。数百万円置いてなくて良かった。

次に年金機構から「差押調査謄本」というのが届いた。貴社の売掛金は差し押さえたよって通知だ。これが会社じゃなくて自宅に届いた。

また、税務署からは弊社の取引先複数に差押予告の連絡があったようだ。「税務署からこう言われたんだけどどうしますか?」みたいなメールが複数届いた。どうしろとは言えないが出来るだけ弁護士や管財人の依頼通り動いてくださいとお願いする。

この差押は裁判所の破産手続き開始決定がなされれば無効になる。(この部分が間違いです。破産開始決定が出ても税務署は差し押さえ出来るそうです。)差押が早いか開始決定が早いか、という攻防になる。

売掛金の差押は当社の全取引先になされるわけではない。あくまで税務署と年金機構が取引先と認識している相手だけになる。その取引先を彼らがどうやって知るか。税務署に届けてある決算書を見るのだ。決算書には先期の取引先と金額が記載されている。去年までの取引先は今でも取引があると推定できる。その中でも主要取引先を狙い撃ちしてくるのだ。そのタイミングで売掛金があれば差押は「ビンゴ」となる。

今月末に何件かの入金が、あるがそのうち一社がビンゴだった。ただ、この取引先はファクタリング契約をしているのでそれをキャンセルすれば支払いはだいぶ先になる。ファクタリングのキャンセルは弁護士に任せた。その他のビンゴな取引先は来月の入金予定。破産開始決定後なので差し押さえされないだろう。

同時に09/30破産申立、翌週に破産開始決定のスケジュールを前倒しにする。弁護士が裁判所にネゴして09/30に破産開始決定するように動くようになった。これで売掛金の差押はほぼ免れるだろう。

【なぜ差押に逆らうのか】
私と弁護士は差し押さえされないように頑張ってる。それは何故か。私は破産するので会社の売掛金がどうなろうと知ったこっちゃ無いと言うことも出来る。弁護士側にも既に報酬を支払っている。彼の取り分も差押の如何で増減することはない。

私は事業を畳む上での責任を考えて今まで行動してきたつもりだ。社員や取引先にできるだけ迷惑をかけない事業の終わらせ方を考えたのだ。このタイミングで差押をされるとそれが全て台無しになる。

事業を畳む時点で一番被害を被るのが銀行とその後ろ盾である信用保証協会、その次が税務署、年金事務所であると最初から思っていた。出来ればこれらに全ての迷惑を押し付けたいとまで思ってた。銀行と保証協会は取引先が破綻するのは織り込み済みだろう。銀行に対する殆どの債務は保証協会に譲渡される。保証協会はもともと高い保証料取ってるんだからそのくらいのリスクは被ってくれって感じだ。消費税と年金事務所にはそこまで割り切ることが出来ない。それでも彼らが抱える数多くの不良債権のうちの一つになっただけだと思うことにしている。

これから入ってくる売掛金を出来るだけ多く確保するのが私の最後の仕事だ。それが破産管財人と裁判所の決定で公正に分配されれば良いと思ってる。当然、私の懐が潤うわけではない。

弁護士にしても破産管財人に引き継ぎやすいってのもあるようだけど、私の責任の取り方は社会正義に適うと考えてくれているようだ。だから協力してくれているのだと思ってる。

と、同時に税務署と年金機構が持っているこの大きな力は過剰なのではないかとも感じるのだ。
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