さて、今回は初の試みで、自分の書いた歌詞でなく、人の書いた歌詞に技術的な解説を加えていくということを行ってみます。今回は福岡のインディーズバンドIORYの歌詞について解説をしていこうかなと思います。なお、この解説は私の独断と偏見で行いますのでIORYの意図しない部分もあるかもしれませんが、まぁ気にしないで下さい。転載については許可を得ております。
Rotation lyrics & music IORY
水面に揺れる空を見ていた
流れる雲は西へと向かい
巡り巡ってまたこの場所
ただ漂っていた心の奥で
静かな風は時に激しく
形あるものを通り過ぎてゆく
包んで壊してを繰り返し
Ah Rotation
耳を澄ましてよ
かすかに聴こえる
命の鼓動が
埋もれて消える
海は呼吸をするかのように
波を寄せては砂を連れてく
涙こぼれても海に還り
Ah Rotation
耳を澄ましてよ
かすかに聴こえる
命の鼓動が
微笑み癒える
Rotation
そうでしょう?
耳を澄ましてよ
かすかに聴こえる
命の鼓動が
生まれて育つ
<解説>
まず、字面を読んで気づくのはおそらく「輪廻転生」をテーマにしているのかなという事でしょう。輪廻転生というと死を扱わないといけないのでどうしても血なまぐさい表現が必要となったりして、聴く側にも心の準備を必要とする場合があります。しかしながらこの歌詞は異様なほどにさっぱりして清らかに前向きなメッセージが受け止めやすく入ってきます。
何故、あっさり受け止めやすく入るのか、ここで用いられている技法について解説していきます。
1 情景、視点の動かし方
この歌詞では動いているものが大きく分けて二つあります。
A主人公が見ているあるいは感じているもの。
B「命の鼓動」
元来歌詞の中では情景の動きは大きく、しかし「方向転換は0-1回」がよいです。
こうすることで歌詞全体の一体感が増します。また聴く人もイメージしやすいです。
Aの場合、視点は「空から水平線最後は海」と上から順に下がってきます。しかも海と絡める為に、最初敢えて空を直接主人公に見せるのではなく水面に映ったものを見せています。
Bの場合はサビの最後のフレーズに注目して欲しいのですが「埋もれて消える→微笑み癒える→生まれて育つ」と死から再生の順に動いているのが分かります。サビの最後のフレーズの母音が全てuになっており、一旦流れがそこで確実に一呼吸おかれる構成になっています。
こうした情景の動きは聴いていてはっきり認識できない事が殆どです。
オリジナル楽曲などを聴いているうち、スーッと心に入ってくるものとそうでないものがあると思います。だいたい心に入りやすいものは情景の動きの方向転換は少ないのです。つまり聴く者の無意識に配慮した技術ですね。
2 比喩の種類
この歌詞をpick upしてご紹介しようと思ったのは、比喩のセンスが素晴らしかったから。
輪廻転生など「死」に関するものをテーマとして扱うときは、どうしても痛かったりあるいは汚かったり生々しかったりする表現を扱わざるを得ないことが殆どだし、そうした表現を扱わなければ伝わりにくいです。鬼束ちひろさんなどは「苦悩」を表現する為に生々しい言葉を積極的に選んでいますよね。死を扱う場合も生々しい言葉を選ぶ方が本来であれば伝えやすいです。
しかし今回見て分かるように比喩に用いられているのは海や砂や風など清らかなものばかりです。なおかつ時代がどれ程変わっても変わらず存在しているとても大きなものばかりですね。
敢えてその大きな存在の中で命を「死から再生へと」動かす事で動きを際立たせています。
生々しい言葉は人間に眼を背けたい衝動を起こします。しかし、この歌詞のように清らかで美しいものを扱う場合はすんなり聴く者の気を引きます。その中でシンプルに命が「死から再生へ」向かう。だから聴く者の無意識に情景が認識され届く。
こんなところでしょうか。
しかも重厚なテーマなのにアレンジは敢えてPOPであっさり。逆に巡る事が非日常ではなく日常的に起こっている事なんだと伝わります。
そんな彼らのライブが11/5福岡のHEART BEATであります。
噂では年内福岡最後との事。
未体験の方、彼らのステージを体験してみては?
IORY HP
MOBILE http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=IORY_web
PC http://iory4.web.fc2.com/index.html
福岡市中央区天神1丁目13?28つくしビルB1
電話
092-715-3926
HP
http://web.me.com/heartbeatstation
HEART BEAT
住所