Record 1.5とReason 6のデモソング。
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Chaka Blackmon — Purple Ribbonsのダウンロード
この曲のVoice Synthは好きな処理の一つなので、紹介しました。
3回目のハーモニーの後半は、すごくいい。
アウトロ前にも面白い処理が出てきますけどね。
今回は、復習になりますが、この曲のVoice Synth処理を見ていきましょう。
まず、ラックを見てみましょう。
当然ですが、AUDIO TRACKには、未処理のボーカルのオーディオが入っています。
ここにインサートFXとして、
- neptune ボイスシンセ
- RPG-8 アルペジエータ
- BV512 ボコーダー
この3つ。
そして、下にあるMIXチャンネルに、
- DDL-1 ディレイ
それから、メインミキサー側で、
- HPF ハイパスフィルター
- SEND FXの1番と2番
- WIDTH ステレオ幅
以上の3つが使われています。
SEND FXの2つは、両方ともRV7000 MkII。もっとも、当時はMkIIではありませんが。
以上のデバイス群で、このパートの処理をやっています。
グリーンの枠で囲まれた部分はオートメーションデータがある部分ですので、意識しておきましょう。
また、MIXチャンネルのラベルに「Voice Synth」と書いてあるんですけど、
見ればわかる通り、そこにあるのはDDL-1なので、奇異に感じるかもしれません。
ここは、Voice SynthのアウトプットをもらってDDL-1で処理しているんですが、
そういう意味で、Voice Synthというラベルにしたんでしょう。
実際のVoice Synthの処理は、当然、neptuneでやっています。
では、ルーティングを見てみましょう。
複雑に見えますかね。
これは、切り分けて考えるとわかりやすいですよ。
ここではAUDIO TRACKのTO DEVICEをスタートラインとして、大きく分けて3系統の信号パスがあります。便宜上、ナンバリングします。
第1系統
- AUDIO TRACK - TO DEVICE
- neptune - AUDIO IN
- neptune - AUDIO OUTPUT
- BV512 - CARRIER INPUT
- BV512 - OUTPUT
- AUDIO TRACK - FROM DEVICE
第2系統 L側
- AUDIO TRACK - TO DEVICE
- neptune - AUDIO IN
- neptune - VOICE SYNTH OUT
- MIX Channel "Voice Synth" - INPUT
- MIX Channel - TO DEVICE
- MIX Channel - FROM DEVICE
第2系統 R側
- AUDIO TRACK - TO DEVICE
- neptune - AUDIO IN
- neptune - VOICE SYNTH OUT
- MIX Channel "Voice Synth" - INPUT
- MIX Channel - TO DEVICE
- DDL-1 - Input Left
- DDL-1 - Output Left
- MIX Channel - FROM DEVICE
第3系統
- RPG-8 - CV Out 4本
- neptune - CV IN 4本
第1系統は、neptuneでの処理のオーディオ信号をBV512に渡していますが、ここでBV512をよく見てもらえばわかる通りBV512はEqualizerモードになっています。
ボコーダーとしての処理をしているわけではありません。
第2系統のL側は、neptuneでの処理のVoice Synthの音を、そのままMIX ChannelのL側の音として渡しています。
第2系統のR側は、neptuneでの処理のVoice Synthの音を、DDL-1を介してMIX ChannelのR側の音として渡しています。
これは、DDL-1のディレイ音のDryとWetをL/Rでミックスしているってことです。
では、どういう風に違うのか聴いてみましょう。
まず、Voice Synth処理前のボーカルトラック。
次に、Voice Synthのオーディオアウト。
そして、Voice SynthのVoice Synth アウト。
Voice Synthの鳴らし方は、"Say"を取り上げた時にやりましたね。
neptuneにシーケンサートラックを作成し、そこに鳴らしたいノートを打ち込んで行けばいいだけでした。
ここでは、前半5声、後半6声のハーモニーパートとしてMIDIノートが打ち込まれています。
オートメーションは、MIXチャンネルのチャンネルストリップに2ヶ所貼られています。これは、最後にステレオ幅が広がるのがわかると思いますが、その部分でWIDTHとHPFが操作されています。
HPFはローカットの帯域を徐々に狭める処理を、WIDTHは、徐々にステレオ幅を広めながら最後にわ〜っと広げています。
2回目のVoice Synthが登場する部分では、これに加えてモジュレーションホイールを動かしているのと、neptuneのSCALE MEMORYの切り替え、CORRECTION SPEEDを若干、速くするオートメーションデータがあります。
neptuneでは、ルートキー、スケール、キャッチゾーンを最大4種類、SCALE MEMORYに記憶しておくことができます。これをここで切り替えています。
CORRECTION SPEEDは修正速度で、これは補正が始まるまでの速度を設定するもので、1回目のVoice Synthよりも修正速度を速くするオートメーションデータが貼られています。
3回目のVoice Synth登場部分は、最も盛り上がる部分です。
モジュレーションホイールの動きは2回目より激しく、CORRECTION SPEEDも最速まで上げて、下げるというようなオートメーション。最後に、ピッチベンドを下げて収束します。
ここまでは、まあ普通のVoice Synthの使い方と言っていいでしょう。
この曲ではさらにRPG-8を使って、面白い処理をしている部分があります。
これが第3系統のルーティングの部分です。
neptuneのPitched Signalを0にして、AUDIO OUTPUTを無音にした上で、
RPG-8のシーケンサートラックにあるコードで、neptuneの操作をしています。
RPG-8が発するアルペジオで、MIDIのNote CV、Gate、VIBRATOとモジュレーションホイールの4つを動かしています。面白いですよね。
この曲の場合、Voice Synthが目立つ曲ですけど、このような処理をSayのように裏でやっても面白い。
一人でやる「宅録&DTM」の場合、ハーモニーのパートのクォリティを上げるのに、手っ取り早い方法の一つですし、フックとしても印象的に使えるので、使ってみてください。