今回は、第2回目でお話した「相続登記ってしなければいけないの」の続編として
「相続登記をしない場合におこりうる不利益」を又お話したいと思います。
私の友人で区役所の職員と以前話していた時に登記の話題が出ました。
友人がある土地を区の土地として利用したい為に買い取り交渉をしようと不動産登記簿を調べていました。すると
所有者の登記が90年以上されていない、イヤな予感がして調べてみると案の定、長い間相続登記がされずに放置されていたのでした。
戸籍の除籍事項を調べたりして現在の所有者を探していましたが、
ついに現在の所有者に辿り着くことができませんでした。
固定資産税も長期にわたり支払いが無く、土地の有効利用もできず、役所としては
困っているという話でした。
長期にわたり、相続登記がされないと、現存する不動産についても所有者が不明であり、そのままの状態が今後も続くことが予想されます。
もし、買い取り希望地の相続人が存在するのであれば、土地を有効利用したり、若しくは区に売って利益を得るのにもったいない話だと感じました。
前回もお話したとおり、相続登記は義務ではないので、放置されてしまうことは結構多いようです。
放置されることにより起こる不利益を私の過去の相談事例からご紹介します。
相談事例 遺産分割協議を行って、法定相続分とは異なる分割協議となったが、(若しくは法定相続分で相続する合意をしたが、相続不動産については分割をしない旨の合意をした)名義変更(登記)をせずに放置していたところ、相続人の債権者が
法定相続分どおりの相続登記を行った事例。
例:Aがなくなり、Aの配偶者Yと子らB,C,Dが相続しました。
遺産分割協議でCが遺産である不動産を相続することになりました。
Cは不動産について相続登記をせずに放置していました。
そうしたところ相続人であるBの債権者(Bに金銭を貸した者)であるZ銀行が
A名義である不動産について法定相続分であるY1/2、B1/6、C1/6,D1/6の相続登記をしてすぐにB持分に対して差押の登記をしました。
Bの債権者のZ銀行は、債権者代位権を行使することによりBについての登記を行うことができるのです。(BがAからの相続による所有権移転登記を行う権利を代位行使することになります)
そうすると遺産分割協議で不動産を相続したCは、遺産分割による登記をするより前にZ銀行からB持分に対して差押登記をされた場合、Z銀行に対して自分の権利を主張できなくなります。(不動産は全て自分の所有なので差押を取り下げろと主張できないと言うことになります)
これは「遺産分割により法定相続分と異なる権利を取得した相続人は登記を経なければその権利を第3者(ここではZ銀行)に対して主張できない」ということが最高裁判例によって示されているからです。
※ 債権者代位権とは債権者が債務者の有する権利を債務者に代わり行使することにより、債務者の財産を保全する制度です。