「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

読んだ本の数は10月もわずかに5冊、これはもう不調というより読書習慣を失くしてしまったか。

こんなことが続くなら、このブログも意味ないなー、などと思いつつ。

◆普通の子(朝比奈 あすか)
これはもう衝撃、身につまされる本でした。自分自身、小学校時代にいじめの被害者にも加害者にもなったことがあるので。同窓会にも一切来ないし、被害者の人生がかなりつらいものになったであろうことは容易に想像がつくので、今はただ後悔しかない。

リアルすぎて、ページを繰る手が止まらなくなった。

◆DTOPIA (安堂 ホセ)
恋愛リアリティショーのお話だった。芥川賞らしくないテーマと思ったら、芥川賞らしいよくわからないお話だった。ミスユニバースの女性を巡って国の名前を冠して争う十人の男性、その中の一人の日本人、おまえと二人称で呼ばれるキーズが主人公。物語はその友人?のモモの視点で書かれる。中盤は恋愛リアリティショーそっちのけで金玉がどうしたとかの二人のグタグタな昔の関係の話。結局よくわからんかった。

◆嘘と隣人(芦沢 央)
芦沢さんは大好きな作家さん。今回も楽しみに手に取りました。退官した刑事が自分が昔係わった事件に関連した案件に遭遇、普通の人、意外な人が吐いた毒、真実にたどり着く。地味ながらダークな短編連作。

◆母の待つ里(浅田次郎)
毎年「新潮文庫の100冊」に選本される浅田さんの作品、でも今年のこの作品がいままでで一番おもしろかったかも。単純な人情ものではない、ひねりが効いている。都会の仕事人間の孤独と過疎化、厳戒集落の孤独、それをビジネスチャンスとするカード会社。最初は胡散臭い話と思ったが、カード会社の思惑を超えて生まれた母子の絆、良いお話でした。

◆人魚が逃げた(青山 美智子)
青山さんらしい短編連作。銀座の歩行者天国で逃げた人魚を探す王子という不思議なシチュエーションにそれぞれの人生が交錯する。ちょっと無理なんじゃと思うところもありながら、それなりに楽しく読めました。