「出来レース」の安保法制与党協議 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 見かけは真剣に競っているように見
せかけながら、実は結果が決まってい
ることを「出来レース」と呼ぶ。安全
保障法制をめぐる自民、公明両党の与
党協議の推移は、この言葉がふさわし
い。ギャンブルや交渉事で発覚した場
合、「談合」、「八百長」と指弾され
ても当然だが、政治の世界では、そん
な目くらましが堂々とまかり通ってい
る。自衛隊の海外の武力行使を際限な
く広げる解釈を、実質合意したのも同
然で、多くの国民が無関心のまま、事
実上の改憲作業がどんどん進行してい
る。


 ブラックユーモアを込めて言えば、
今こそ「我が国の存立が脅かされ、国
民の生命、自由及び幸福追求の権利が
根底から覆される明白な危険がある」
局面ではないか。このまま、与党合意
が決着すれば、たやすく「戦争をする
国」になるのは必至である。


 そもそも、この文言を入れた昨年の
閣議決定以前に公明党は、安倍政権が
導入しようとした集団的自衛権行使の
具体ケースの多くが個別的自衛権で対
応できるとしていた。それがいつの間
にか、容認姿勢に転じ、公明党支持者
からもなお反発を招いている。


 今回も同党執行部は「国際法上の正
当性」「国民の理解と民主的な統制」
「自衛隊員の安全確保」を3原則とし
たはずである。ところが、妥協を繰返
し、その原則さえ、忘れたような政権
への擦り寄りぶりである。


 新たな法制の一つに周辺事態法を新
たに「重要影響事態」という言葉に変
え、米軍以外の他国軍まで支援できる
ようにする。「重要影響事態」の範囲
がどれだけに広がるのか、明確に説明
できるのは誰もいないのではないか。
不明確で、とめどもない拡大運用につ
ながるいい加減な文言である。他国軍
はオーストラリア軍を想定していると
されるが、日本はいつからオーストラ
リアと軍事同盟を結んだのか。


 そもそも今の自衛隊員は同盟国でも
ないオーストラリアの戦争に加わる覚
悟を持って入っているのだろうか。そ
んなことはないはずだ。


 公明党が特に求めた「国際法上の正
当性」についても、当初は国連決議を
前提としていたはずなのに、いつの間
にか今回の合意文書には国連決議に「
または関連する国連決議等があること
」が付け加えられた。これでは「何で
もあり」になり、まったく歯止めに成
りえない。


 国会の関与についても、「国会の事
前承認を基本とする」が、「閉会中や
解散中は例外的に事後承認が認められ
る」と変えられている。文言や字句の
変更は枚挙にいとまがないほど多い。


 戦後70年、一人も海外での戦闘で血
を流さずにすんだ平和な国家の土台が
国民の合意もなく崩されつつある。
この流れを止めるのは、有権者が統一
地方選挙など直近の選挙で、はっきり
その意思を示すほか道はない。


           【2015・3・20】