駅に置いてあったパンフレットで、「京の冬の旅」という企画があることを知り、3月17日の土曜日、長女の中学卒業祝いを兼ねて、妙心寺を訪ねる日帰り旅をしてきました。

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(最初に上ってきた、重要文化財の三門。境内で唯一朱塗りの建物で、楼上では、観音様と十六羅漢の等身大クラスの木像と、天上や梁、柱などに極彩色で描かれた天女や龍、楽器などが拝見できました。もちろん内部は撮影禁止です)

「京の冬の旅」という企画というかキャンペーン自体は、今回で46回目だそうです。1月7日~3月18日の期間で、13箇所の非公開文化財が特別公開されました。まあ、観光客の冬枯れ対策、ということなのでしょう。
中には東寺五重塔内部とか、東福寺の龍吟庵とか、年に数回の特別公開で、ほぼいつでも見られるじゃん、というものもあるのですが(^_^;)、京都自体にそうしょっちゅう行けるわけではないので、13箇所のうちの3箇所の特別公開と、隣接する花園会館での昼食がパックになった「食遊彩都・妙心寺非公開文化財特別公開と京料理」というものを申し込んだのです。

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妙心寺は、臨済宗妙心寺派3400寺の大本山で、この境内だけでも36の塔頭寺院をもつ、日本最大の禅寺です。建武4年に花園法皇の離宮を禅寺に改めた、といいますから、この近辺の「花園」の地名や花園大学などの元にもなった、大寺院なのです。

ただし、大徳寺と同じく、足利幕府と仲が悪かったので、「京都五山」には入っておらず、「十刹」の下の方に順位付けされています。何かと観光的には地味なのですが、中に幼稚園もあり、法事らしい黒ネクタイの人や、袈裟に雪駄のお坊さんが歩いていたり、お墓の募集看板があったり、まさに今息づいている宗教空間です。
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特別公開の三門のあとは、常時公開している寺の中心部を見学。大方丈の襖絵は、狩野探幽と狩野益信。
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時間になると、狩野探幽の、直径12メートルにもなる大「雲龍」図が天井になっている法堂(はっとう)へと案内されます。特別公開期間の最後ということもあったのでしょう、雨にもかかわらず、この時間の見学はけっこう人が多かったです。内部に吊してある国宝の鐘は、徒然草にその音の良さが褒められているそうな。(法堂内以降、すべて見学先の内部は、撮影禁止)
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法堂のあとは、明智光秀を弔うために建てられたという浴室を見せてもらいました。

昼食後、花園法皇の離宮跡である塔頭「玉鳳院」を見学。障壁画、灯籠、井戸のある庭や、秀吉の長男鶴松の御霊屋など、思いがけない見所が多数。後小松天皇の内裏の門だったという平唐門には、弓の当たった痕もありました。

そして最後が、本日の目玉、隣華院。
方丈は江戸末期の再建で、周囲の部屋は狩野永岳の極彩色の障壁画なのですが、真ん中の室中の間は、長谷川等伯の水墨山水画。その二十面は、400年前の隣華院創建当時のものといわれ、国宝松林図屏風と並ぶ、といっていい、長谷川等伯六十一歳時の傑作です。

所によっては荒々しく、また所によっては繊細に、闊達でありながら全体の景色の優美さを失わない筆運びは、まさに天才のもの。京都国立博物館の等伯展で一部は見ていましたが、こうして本来の場所で全体を見ると、建物と一体となった障壁画の、「中に入り込む」感覚がよくわかります。

というわけで、ほとんど丸一日、ひとつの寺にいたのですが、白壁の道をたどって塔頭寺院をめぐるというのも、はじめての体験で、なかなか良かったです。
次は・・・大徳寺かな?
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