福沢諭吉の「学問ノスゝメ」(リンク先は青空文庫)は、
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という、
「平等」をうたい上げたような冒頭がよく知られているが、
本旨はそこではない。

 

直後、「かしこきひとあり、愚かなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて」と、人には歴然と「格差」があることを書き継ぎ、


だからこそ、人には学問が必要なのだ、というのが
この本の冒頭であり、タイトルなのである。

初篇だけなら五千文字にも満たないから、原稿用紙で12枚分ほどか。
心を打つ名文で、ベストセラーになったのも頷ける。
言ってみれば、この主張で、
福沢諭吉は一万円札の顔になったのである。
ぜひ一読してほしい。

大学を出たくらいの人なら、
実社会以上に、学問の世界の深く広いこと、
よくご存じだと思うが、
世の中には、
歴史的な概念の構造、原理原則とその応用、例外の意味など、学問的な考え方を、
軽んじて恥じず、
かつ周囲に押され、社会的に高い地位に就く人がいる。

これは、本人ではなく、周囲の罪である。

呆気に取られているうちに、

社会全体が、学問を軽んじて恥じないふうになっている気がして、

あらためて私は、全ての人に、
「学問のすすめ」を強く推すのである。




(ミュシャ「スラブ叙事詩」より、「イヴァンチツェの兄弟団学校」部分)