UX浪人の山口です。
最近、UXやCXに関するコミュニティ主催のイベントが多くなってきていると感じています。
UXが単なるバズワードに終わらないためにも、関心が広がり理解が進むことは良いことですね。

さて、2016年の最初に参加したイベントは、BtoBマーケター向けのコミュニティである、
BtoBマーケティング 金曜の市 が主催する『BtoBにおけるUXってなんや?祭り』

1月8日(金)の19:00から、場所は神保町近くのTAM東京:コワーキングです。
受付時からビールにしますかと聞かれる、ゆる~いイベントです^^
スピーカーはいますが、話題を提供して参加メンバーで話し合うといった交流会的なイベントでした。

●まず最初の主催者挨拶の後、チーム内で自己紹介タイム
25人前後の参加者が3つのテーブルに分かれて行われました。
自分のチームは7人で、システムエンジニア、企画開発部、IT起業準備者、編集者、コンサルタント、
UXエバンジェリストなど多様な方々です。

今回参加のバックボーンを全体に聞いたところ、デザイナーよりもエンジニ系が多いこと、
また営業の方が2~3人参加していたことが特徴でした。
私が所属しているHCD-netビジネス支援部のあるグループにも営業職の会員がいて、
お客様と商談するときにUXの話題が出るようになってきたからだそうで、
ビジネス的にも認知されだしてきたのかな~って感じです。

●LTの最初は、シナジーマーケティングの佐々木さんから
「プロジェクトで感じたUXへの違和感!」

佐々木さんは元々営業で、今はプロダクトマネジメントやマーケティングをしている人です。
最近、UXに関わることが増えてきて、その中で言葉が独り歩きしているな~と感じているそうです。
UXをやろう!ということで、ワークショップでペルソナ作ってCJM(カスタマージャーニーマップ)を描いて
盛り上がるけど、時間が経って振り返ると、何か足りないな。。。創ったはいいけど
UXは成果に結びついたのか、効果測定は出来るのか。。。と、
違和感を持たれたそうです。

●次に、テーブルを囲んだグループ内で、UXに関して思っていることを
各自が共有して話し合うワークです。
UXに関して良かったことや疑問点、自分がしていることなどを各自がポストイットに書いて話します。

イベントの主旨は、登壇者が有益な情報を提供するというよりは、UXに関して議論することで、
いろいろな考え方があることを知ったり何かに気付けたら成果とするといったことです。
昨年末に参加したUX MILKさんもそうですが、参加者同士が話し合って情報を共有したり、
交流することを目的としたUXイベントが増えてきたなと感じています。

私は自分のUX研究のテーマに関することをしゃべりましたが、懇親会時に2名の方が
私の内容に興味を持って話しかけてきてくれたことが嬉しかったです。

内容は、
ユーザーの体験を理解するためにインタビューなどで個別の体験情報を収集しますが、
それらをまとめて抽象度を上げ、CJMやユーザー要求にして以降、体験に関する分析や議論は
基本的に抽象度を高くした情報で行われがちなことです。
もっと個別のコンテキストを理解しないと良い解決案は創出しづらいのではないか、
CJMで描いたTO-BE像が上手くいかなかったときに1次情報に立ち返らなくて良い解決ができるのか、
といった疑問でした。

事業にスピードが求められること、テキストなどの生データに立ち返ることの煩雑さはわかりますが、
ユーザー理解の原点に戻らずに思い込みで修正しても、また修正するはめになってしまわないか
という懸念と、せっかくユーザーの深い情報を得たのに、それを企画の最初だけしか使わないのは
もったいないという感覚です。
そのため、コンテキストなど必要なデータを保ったままUMLのように個別体験を記述する
ことを考えています。

●各グループでUXに関する意識が高まったところで、鷲野さんからのLT
「BtoBにおけるUXってなんや?」が始まりました。

鷲野さんは、株式会社TAMの子会社である株式会社タンバリンのインフォメーションアーキテクトです。
元々宣伝系の出身ですがコンテンツなど制作に興味があり、UXにはTAMに来てから、
3年ぐらい前から関わりだしたそうで、業務としてはBtoB案件が中心だそうです。

UXはバズワード化してますが、もっと有効に使えれば、
UXが当たり前のものにできたらいいのになあ…と感じているそうです。

そもそもUXって?
ユーザーエクスペリエンスデザインってなんのこと?
といったことを簡単に説明。

体験は個人の主観なので話がややこしくなるとおっしゃられましたが、その通りだと思います。
私見ですが、マーケティングも顧客の心理という主観を扱っていますが、定量分析が進んでいます。
それがUXになると個別の事情、コンテキストがより重要になり、パラメータが増えて扱いづらくなります。
ただ手段がない訳ではなく、目的や行動を整理することで類型化して理解することが
できるようになると思います。

そして本題の BtoBにおけるUXとは?
UXは、BtoBだからBtoCだからといって変わるものではないが、
BtoB特有のポイントはあると説明されました。
BtoBだと見落とされがちになる、利用の前後もUXであるということを、
UX白書の図を使いながらBtoBの業務と対応付けています(下図)。

対応フローB2BUX 

手法B2BUX 

スライドの後の方で説明されていましたが、BtoBなので複数のステークホルダーが関わってきます。
上記フロー図の写真のスライドに、購入窓口の人とエンドユーザー、情報システム担当者など
分けて対応付けるとよりわかりやすいのではと思いました。(意図があれば勝手言ってすみません)

そのステークホルダーの話では、BtoBサービスのUXに関わる人を提供側で見ると、
Webサイトや開発者だけではなく、営業からカスタマーサポートまで多くの職種が関係してくる。
それらの一部でも機能しなかったりモチベーションを失っていたら良いUXは実現できない、
ということですが、
これは良い体験をしたというユーザーの評価は総合的な評価、
つまりどこか一箇所でも不出来があれば掛け算のように全体に大きく影響する
構造であるということだと思います。
真面目にUXに取り組むには、総力戦の体制が必要です。ブランドイメージと似ていますね。

また、トップバッターのシナジーマーケティング佐々木さんのUXに関する違和感に答えてました。
Q「設計したUXは何をもって達成したといえるのか?」

A「計測はむつかしいが、UXはやらないよりやった方が良いことは確か。
何でもよいからとりあえず数値目標に落とし込んでやってみる
そしてダメなら数値目標を変えてやり直すことが重要。」

最後に、UXを考慮した製品やサービスをつくるには、
ユーザーの体験に影響を与える全ての職種の人と良い関係を築くことが大切だが、
特に「デザイナー」「エンジニア」「データ解析」の人たちはタッグを組む必要がある、ということでした。

ワークショップなどでUXの理解を深めるよりも、ステークホルダーへの説得や交渉の方が大事では?
ということで、UXをよくするなら「偉くなる」のが一番の近道! と裏技も教えていただきました。
そう思った理由の一つとして、お付き合い上体験した、資生堂のトップからの
マーケティング志向への組織変革事例が挙げられました。

ソシオメディアの篠原さんがあるイベント(UXまとめ2015)でおっしゃっていましたが、
米国のGEのUXerが急増した(確か100人規模?)のは、
経営陣にCXO(Chief eXperience Officer)が就任したためだそうです。
みなさん、出世意欲のあるUxer、ビジネスもしたいUxerを応援して育てましょう^^

質問&雑談タイム
鷲野さんがUXに馴染みのない企業に対してプロジェクトを進めるときには、打合せでUX等の
専門的な用語を一切使わず、UX的なアプローチの仕方が重要で、
ステークホルダーへのヒ
アリングやワークショップも必要なんだと説明して納得させているそうです。
また、企業としてのUXの取り組み方の話や、エンタープライズUXに関する情報紹介など、
参加者間で発言が飛び交いました。