最近、英才教育ブームも相まって、小学生で複数の塾に通う生徒さんが多いようです。そのとき、大手の塾をメインに通い、その塾の補習を1-2日別の塾でカバーする場合は問題が少ないのですが、同じ教科でアプローチの異なる塾に複数通う場合には、それ特有の問題が生じる可能性があります。


それは、同じ種類の問題を別々の塾で、違う解き方を教えられた場合などに起こります。生徒が一方の塾で習った解き方が一応理解できたとき、他方の塾で習った解き方がどうもしっくりいかないと、生徒自身が不信感を抱いてしまい、ひいては後に教えた先生に対する不信感につがなることもあるのです。


これは、僕の経験では「算数の解き方は複数ある場合もある」と前もって充分に教えた場合でも起こる事があります。ことに、生徒さんが低学年であればある程おこりやすいようです。


おそらく、最初に習った先生に対する信頼感が強いため、その先生と違うことを教えたというだけの理由で疑念を引き起こす、ということもあるのでしょう。


このような状況は、心理学の用語を用いると「認知的不協和(cognitive dissonance)」の一種と考えられます。


以前プロ家庭教師をやっていたころ、そのような生徒さんを教えたことがありました。とある私立小学校い通う6年生だったのですが、2つの個人塾と2人の家庭教師をつけて、毎日どこかしらの指導を受けている状態でした。


算数を担当した初日、自力で解けなかった問題があったので、解き方の道筋を教えました。すると生徒は「前に習った解き方ととちがう!』と叫ぶと、何を思ったか、突然携帯電話を取り出して電話をかけ始めました。


驚いた僕は「えっ、何してるのかな~」と聞くと「いつも習ってる塾の先生に電話してるのーむかっ』との答え。


どうも前もってその塾の先生から、新しい家庭教師(=僕のこと)が来て何か問題が生じたら電話するようにいわれていたらしいのですが、これも典型的な「認知的不協和「状態の例です。


さて、詳しい因果関係はべつにして、このような状況についてはどう考えればよいのでしょうか?


まず、第一に今週の問題は生徒さんが低年齢なために起きている部分が大きいことです。ですから、ここでおきているような「認知的不協和」現象は、生徒自身の責任ではないのですね。


そうすると、手っ取り早く問題を解決する方法は、このような「認知的不協和」が起こらないようにすることです。といってもご自身のアプローチにこだわりをもっていらっしゃる先生の個人塾の場合、同じアプローチをとるようにお願いするのも変な話です。


となると、結局同一の教科で扱うテーマや演習問題がかぶってしまうような塾は、極力ひとつに絞る、という解決策が出てくるわけです。


もちろん、同一教科であってもその意味でかぶらない塾の組み合わせもありえます(たとえば、中学受験用の塾と数学オリンピック向けの塾など)。


ですが、そもそも勉強というのは、一時にすべてをマスターしようとしてもうまくいかないものなのです。まずは基礎学力をがっちり固めることが先決で、それとの兼ね合いでその他のアプローチを考慮すべきだと思います。


そして、基礎学力を付けるためには「認知的不協和」は障害になることが多いのですね。


畑中個人指導塾