哈台族@元祖の台湾中国語&漢字よもや話し -3ページ目

街中での農耕作業~犂田~

台北市内で耳にする不思議な言葉に「犂田」というものがあります。一般にはレイ∨ ツァン/と台湾語で発音しますが,北京語でのリー/ ティェン/という発音も耳にすることが出来ます。


犂田」とは読んで字の如く「田んぼを耕す」という意味ですが,コンクリートジャングルの台北で農業するケースがあるのか?それとも家庭菜園での趣味の農業を指す言葉なのか??…とあれこれ想像してしまいますが,この言葉は農業とは無関係な言葉です。


これは台北市内のメイン交通手段とも言えるスクーターに関係する言葉です。ただでさえ交通マナーが悪い台北市内の道をクネクネと走り回るスクター,当然交通事故も多くなります。事故に到らなくても雨なんかが降るとあっちでスリップ,こっちでスリップとスクターが転げまわっています。


犂田」とはこの「スクーターで転ぶ」ことを表す言葉なのです。

漢字を調べるにあたって

このブログを公開するようになり,周囲から「中国語ネタを調べるの大変でしょう」との声を頂くことが多くなりました。確かに大変です。ネタを決めてその漢字を徹底的に調べるにはそれなりの手間が掛かるのは事実ですが,慣れれば苦痛にはならない程度しか調べていません。専門の研究者に言わせれば中途半端な内容だと思います。何せ書いている本人が物足りないと思っているくらいですから。


参考までにブログを書くのに使用している辞書類を列記してみたいと思います


中日辞典(小学館) 

 学習者の定番ですな

 ただし一般の中国語学習者の現状を知る程度の参考資料

 「頁」の発音で「xie2」が掲載されていない等の問題があります


中日大辞典(愛知大学)

 大学時代に購入した中日辞典です

 中国語での読書の際のお供をさせています


井上日華新辞典(文求堂)

 昭和6年に出版されたポケットサイズの辞書

 サイズによらず民国末期の秘密結社の隠語が掲載される等

 マニアックな内容が気に入っています

 中国語を追究したい方は是非古本屋で探してみてください


大漢和辞典(大修館書店)

 全15巻の世界最大の漢語辞典

 文字や単語の由来が詳細に掲載されているので

 このブログには不可欠な辞書

 問題点はボリュームかな?

 価格も高いので研究者でもなければ自宅に揃える人はいないでしょう


(三遠文化:台湾)

 台湾の国語辞典です


新華詞典(中華書局:大陸)

 大陸の国語辞典です

 台湾に特化しているのであまり使いません


中華字海(中華書局:大陸)

 収録文字85,568字という世界最大の字典

 文字の異体字を調べたりするのに使います

 しかし折角調べてもPCで表示できないのであまり意味を成していません


それ以外に『説文字解』,『龍龕手鏡』,『康煕字典』が必ず調べる字書になります。こうやって改めて書き出すとよく調べているなぁと自分でも感心してしまいますが,この他にケースごとに『二十四正史』や『四書五経』,『三国志演義』を初めとする古典小説を日常読みながらメモしている事を考えると,大学院時代より勉強しているかも?と思えてきます。


そしてこれらの資料が最近の悩みのタネになりつつあります。これだけの書籍を買い集めれば部屋が本で溢れるのは必死,そろそろ寝室に書籍が進出しつつあります。


しかしこれだけ資料を調べても疑問が解けない漢字にぶつかるのが漢字の奥の深さでしょう。

どんな球技なの?人球

昨年台湾を騒がせたニュースでもトップクラスのものに「醫療人球」事件と言うのがありました。棒球や足球のように「」という漢字が付いている,スポーツとは全く無関係の事件です。


今年初め台湾で児童虐待事件が発生しました。事件が起こったのは台湾北部,ところが緊急搬送された病院が空きベットが無いと受け入れを断り,何と重態の女の子は台中に転送されました。台北は台湾の中心であるはずなのに重態の女の子を台中まで搬送するとは何事だとマスコミや市民から叩かれ,更に政治問題と化し連日大きく報道される事件がありました。

その際に頻出したのがこの「人球」という単語です。冒頭の「醫療人球」は「病院のたらい回し」という意味で使用されています。


蛇足ですが虐待事件の犯人は懲役12年の判決が今年になって確定したそうです。

台湾人の読書離れ

日本でも読書離れが叫ばれて久しくなっております。昨年10月28日の讀賣新聞に「1か月間読まずというのは男性49%女性54%」という記事がありまして,雑誌&マンガを除く書籍を読まない率は年々上昇,遂には過半数という状況です。


これは台湾でも同様でして,行政院(内閣府に相当)の調査によれば15歳以上の台湾人で一週間全く読書をしない人は68%を記録し,その反面毎日読書をする割合は僅か3%との調査結果が出ました。


この調査で興味を持ったのが地区別の非読書率です。東部地区78%,中部地区72%,南部地区72%,北部地区60%と経済発展をしており様々な娯楽がある地域の方が読書する人が多いという結果になりました。もっとも台湾の田舎に行けば書店や図書館と言った活字に触れる機会が乏しいのが原因かもしれません。


中国語に「三日不讀書,便覺言語無味」という言葉があります。読むことこそ全ての学習の根源であり,外国語も読書の習慣なくしては上達しないというのが持論のおいらからすれば,「三日読書しなければ,言葉に重みが無くなる」というこの一言は正鵠を得た一言のように思えます。


と偉そうにブログを書いていますが,自身を振り返ってみればそれ程読書をしていないことに気付きます。日本語の本ならば数冊読んでいますが,中国語になると月に1冊程度,漢字の無い韓国語や英語になると年に1冊読むかどうか…そりゃおいらの韓国語は忘れる一方ですな。


出張中の飛行機の中は睡眠時間に費やさず読書の時間に当てる。今年のささやかな目標にしたいと思います。

さらば光華商城

日本の秋葉原に相当する街に八徳路という場所があります。大小様々な電気店が軒を連ね,店先には携帯電話やマザーボードが,そして道端にはジャンク品が並べられ,その間を縫うようにゲームやマンガ,アニメといったサブカルチャー商品を扱う店が存在すると言う空間です。


この八徳路の中心をなしていたのが光華商城です。新生北路の高架下に作られた2階建てのショッピングモールでして,秋葉原のラジオ会館を想像していただければ間違いないでしょう。


その光華商城が1月15日を以って閉鎖されることになってしまいました。出張の合間に立ち寄っては日本で買うと高いメモリーを買ったり,ホテルで故障したプリンターを修理してもらったりと思い出深い場所なのですが,台北市の再開発計画の一環だそうです。


なじみの場所がまた一つ消えていく一抹の寂しさがあります。

台湾テレビ文化の保護

日本でも最近は韓流ブームなる言葉が出現し,韓国ドラマが話題になるようになりました。韓国に以前住んでいたおいらからすれば,なんであんな陳腐な内容のドラマが人気が出るのか不思議でたまりませんが,アジア各国で人気があるので何かしらの理由があるのでしょう。単純明快なストーリーで勧善懲悪のお涙頂戴ものであれば国境を越えて内容を理解できるということでしょうか?


そんな韓国ドラマは台湾でも人気です。以前は日本のドラマが主役の座を占めていましたが,『チャングムの誓い』なんぞは日本ドラマを圧倒する勢いがありました。


日本製ドラマに加えかんっくドラマの登場で苦戦をしているおが台湾製のドラマです。『流星花園(花より男子)』のように人気作品もありますが,得てして海外ドラマに圧倒されているのが現状です。


その現状を憂えた台湾行政院(日本の内閣府に相当)の新聞局が台湾の映画・テレビ産業の振興に関する有識者会議の結果,10日に黄金時段(ゴールデンタイム)に放映する地上波ドラマで台湾作品を70%以上を義務付ける答申がなされました。またケーブルテレビにおいても法律で無法図な外国作品をの進出を抑えようという動きが出ています。


台湾ドラマの丁重を訴える映像業界からの要請を受けた政策でして,確かに台湾ドラマの低調ぶりを目の当たりにしていると止むを得ないかなと思いながらニュースを見ていましたが,一般市民へのインタビューの中で日本の韓流ブームに言及しているのを見つけました。


「日本でも韓国ドラマに対し人気が出ているが,放映は夕方4時前後の早い時間か,深夜の放送に限定され国内映像産業を保護している。台湾も日本を見習うべきだ」


…ものは言い方ですな。日本では老若男女の間に韓国ドラマブームが生まれているわけではないのでゴールデンタイムに放映していないだけなような気がするんだけど…と心の中で突っ込みを入れながらニュースを見ていました。


最低市場を確保する台湾ドラマ,ただ闇雲に量産すればいいというわけではなく,日本や韓国ドラマに対抗できる良質な作品を作る必要があるでしょう。

買い物をして賞金を!~統一発票~

台湾を旅行した方ならご存知だと思いますが,台湾のレシートは宝くじになっています。その名も「統一發票」と称しまして,全ての「發票(公的領収書)」に番号が打たれていまして,最高賞金200万台湾ドルとなっています。


なぜこのようなシステムになっているかと言えば,政府により脱税防止政策の一環です。レシートが宝くじになっていれば買い物に際して庶民は領収書の発行を求め,レシートを発行すれば脱税できなくなるという考え方です。確かに全ての商取引に政府が定める領収書を発行すれば売り上げをごまかすというのは出来なくなります。


統一發票」のシステムは非常に単純です。どんな發票にもアルファベットと数字による固有番号が付されていまして,二ヶ月に一回当選番号が発表になるというシステムです。当選した發票は指定金融機関に持ち込めば換金してもらえます(その場合一時所得税が課税されます)。また末等の200台湾ドルであればコンビニで金券としても使用できます。


手書き領収書(二聯式三聯式があります)やクレジットカードであれば控えが店側にも残るので偽造の問題ないが,コンビニのようにレシート方式だと番号を簡単に偽造出来るのではと思われる方がいるかとも思います。ところが台湾のレシートにはちゃんと控えがあるんです。ロール状のレシートを印刷する際には同じ番号を印刷したロールを二本生産します。レジにはこの二本をセットして片方をお客に,片方は店側の控えとして保存するシステムになっています。またこの二本のロールは幅広の紙を二分していまして,当選の暁には紙に漉き込まれた透かしにより真偽判定を行うことになっています。またナンバーーを印刷するインクにも偽造防止が施されています。コンビニのレシートにも意外や偽造防止が施されているとは…恐るべし台湾です。


さて手書き領収書に二聯式三聯式があると紹介しましたが,一般の日本人が受け取ることが出来るのは二聯式のみです。これには統一編號というシステムが関連しています。統一編號とは各企業に政府が与えた背番号のようなものでして企業経費としての發票発行には發票上に統一編號の記載が求められています。たまに「開發票好不好(領収書切ってよ)」と言うとレジのおばちゃんになにやら言われる事がありますが、それは「要統一編號嗎?(統一編號いる?)」と聞かれていることになります。手書き領収書の場合統一編號が必要な場合は三聯式,不要の場合は二聯式と書式が分けられています。


この統一發票,脱税防止には威力を発揮すると思いきや,台湾では経費のごまかしにも利用されています。流石は「上有政策,下有對策」の国!


その方法は統一發票を買うという手口です。統一發票を発行すれば店側は5%の営業税を納めなければなりませんが,逆に言えばこの5%を客側が負担すれば店側としても,また政府としても損失皆無な訳です。○○払うから領収書切ってよということが可能なわけで,中国語では「買發票」と表現されます。


この統一發票ですが,台湾では四ヶ所で印刷されています。最も大規模なのが財政部印刷廠でして,台中市お隣の大里というところに印刷工場があります。ここで印刷しているのは一般に使用されている統一發票になります。これ以外に民間企業としては永豊紙業,大堡資訊,正隆紙業が企業ロゴ入り(セブンイレブンやスタバ)の統一發票の印刷を行っています。使用されている印刷機は実は100%日本製,日本の技術がこんなところにも生きています。




山中で中山狼に出会う?

中国語に「中山狼」という言葉があります。「山中狼」と表記すれば「山中でであった狼」になりますが,「中山狼」の場合は狼でなく人間を形容した言葉になります。「スケベ」を「色狼」のように表現するのと同様に,悪い人間を形容する用法です。


では「中山狼」とはどのような人間を形容するのでしょうか?実は「恩義を忘れた人」を表す言葉になるのですが,これは由来を知らないと理解できない言葉かも知れません。


明代の馬中錫が著したと言われる(『大漢和辞典』では作者不詳とされています)その名も『中山狼傳』に由来があります。「中山」とは地名でして,戦国時代に現在の河北省平山県周辺にあった小国になります。戦国七雄に数えられないこの国は史書に記載される内容は非常に少ないですが,「中山狼」や「中山美酒(日本では一般的に「中山酒」,一杯で千日酔う仙酒)」のように成語の中にその名をとどめている国です。


その中山国に晋の趙簡子が猟に向かった事がありました。趙簡子は狼を見つけ矢を射掛けましたが,残念ながら狼を仕留めることが出来ず,狼は傷を負いながら山の中へと逃げてゆきました。その狼が山中で出会ったのが東郭という人物です。東郭は傷ついた狼を見て哀れに思い狼を助けてやりました。当然狼は命を救ってくれた東郭に感謝するのですが,そこは禽獣の道,よく考えれば目の前の東郭が美味しそうに見え始めたそうです。この事から「中山狼」は「恩義を忘れた人物」を形容するのに用いられるようになりました。


中山狼」の由来が分かったところで,ついでに東郭のその後はどうなったかについても触れておきましょう。こちらは馬中錫の弟子である康海が著した雑劇の『中山狼傳』にその後が書かれています。にわかに自分に対して食指を動かし始めた狼を見た東郭は「三老」の意見に従って自らの命運を決めることにします。意見を求めたのは「老樹」,「老牛」,「老人」です。老樹と老牛は狼に食われて当然と回答しますが,最後の老人だけはそれはならぬという意見を伝えました。老人の意見を聞いた東郭は遂に「中山狼」を刺し殺して危機を脱します。恩知らずな人間は結局最後は悲惨な目に遭うものですな。


この故事から「東郭先生」を「善悪の区別無くむやみな仁者」の比喩として使われることもあるようです。こちらは普通の辞書にも掲載されておらず,相手が相当古典に通じていないと通じない言葉ですので,実際に使用する機会は皆無と思いますが,余談としてどうぞ。

【地名の由来】淡水の由来【其之弐】

台北から捷運で一本で行ける郊外の街,淡水。紅毛城のような遺跡を眺めるもよし,名物の阿給や貢丸を味わうもよし,淡水河の辺で焼肉を楽しむのもよしと週末を気軽に過ごすスポットとして観光客のみならず,台北市民にも人気のスポットです。


さて今回はこの「淡水」の由来についてお話をしたいと思います。


淡水」は元々現在の淡水よりも淡水河をやや上流に遡った北岸に広がっていました。当時の名称は「滬尾」です。『臺灣府志』という書籍では「滬尾」と表記しています(『臺海使槎録』という書籍には「虎尾」という表記もありましたが,「」と「」は同音です)。「」とは「上海」の別名として使用されていますが,元々は魚を取る竹柵を泡ラス漢字でして,「滬尾」と「上海」は無関係です。


『臺灣府志』には「用碎石圍築海坪之中,水滿魚藏其内,水汐則捕之」という一文がありまして,海中に石で囲いを作り,そこに魚を追い込み,潮が引いてから捕らえるという漁法が詳細されています。漁具の「」の「(端)」,つまり漁民が居住するという意味で「滬尾」と表記されたと考えられます。


滬尾」という地名が「淡水」と変化するのには水運の発達が関係します。淡水一帯は台湾北部の水運の要所としての性格を持っていました。『臺灣府志』には「關渡門内有大澳,分爲二港,西南至擺接社(現在の板橋),東北至峰紫峙(現在の汐止),番民往來倶用蠎甲。澳内可泊大舟數百,内地商船間亦到此」とありまして板橋かた汐止に到る広範な地域で商船が活発に活動していたことが分かります。


その昔は商船が入れた板橋や汐止ですが,時代の流れ共に堆積物の関係で隆盛がありました。嘉慶年間には交易の中心が新荘から艋舺へと移り,同治末にはそこも堆積物で大型船の入津が出来なくなり現在の淡水へと商業の中心地が移ってきました。


清朝はこの淡水河一帯の交易を管理する役所として「淡水廳」を設置していました。これが現在の地名の直接の由来になります。更に時代が下り日本統治時代になると,その一帯は役所名にちなんで「淡水郡」を設置されることになり,更に1920年にそれまでの「滬尾」という地名に変わって「淡水」と改称されるに到っています。


意外や日本人が命名した地名だったんですね。



たかがネジなれど

中国語を話すということは一体どのようなことなのだろうと時々考えることがあります。確かに日常会話に不自由しない程度に話していますし,資格でも高級HSKを持っており,さらに大学~大学院にかけて東洋学を専攻したので古代中国語である漢文もそれなりに読めますが,果たしてそれだけで“中国語が出来る”と言い切れないなぁ…自身のあやふやな中国語の知識と能力におかなびっくりしながらの毎日を送っています。


思い返せば7年前に大陸留学から帰国し,「中国語できます!英語できます!韓国語できます!」と大見得を切って今の会社に入社したのですが,入社早々痛感したのは「留学の知識は仕事には役に立たない」という現実でした。


機械メーカーに勤務していますので,海外営業職をしていますが,何かと現場で技術通訳をしなければならない場面がありました。ある程度の技術用語は付け焼刃を含め勉強しましたが,現場で使う専門用語はおいらごときの知識では太刀打ちできませんでした。


今でも思い出深いのがネジに関して通訳した時です。ネジと言えば中国語で「螺絲」くらいならば中国語中級者でも分かりますが,その種類を通訳となるとかなりの難問,そもそも日本語で「ホロセット」と言われても,一般の日本人にはその日本語の意味が分かりませんって。


こういった専門用語は辞書には載っていないので,技術系の台湾人を捕まえてホームセンターに強制連行して1日つき合わせて覚えるしかありません。そしてその中国語を実際に通訳の現場で使用してみて,おかしい表現を修正していく… たかが「ネジ」の通訳ですが使いこなすまでにかなり手間がかかりました。通訳って難しいなぁと思う瞬間です。



参考までにネジの種類の中国語を列記しておきます。


丸ネジ 十字螺絲
皿ネジ 平頭螺絲
キャップボルト 内六角螺絲
六角ボルト 外六角螺絲
ホロセット 止付螺絲

一体どういうものか理解できない方はお近くのホームセンターまで(笑)