チャイコフスキーの大序曲『1812年』。名曲の誕生は決して順調とは言い難いもので、これは実に有名な話だ。工業博覧会の為に書かれたものだが、作曲家自身が「お祭りのために作曲するとは、全くつまらないことだ」と語り、「巨大で騒がしく、暖かい愛情などなく書いたので、芸術的価値はないだろう」とも述べている。鐘を鳴らし、大砲が轟く実に「賑やかな」フィナーレは、上述にあるような意味合いが顕著に体験出来るが、やはりチャイコフスキーの作品だけあって、聴き手は充足感を得る事ができる。それ以上に疲れるのも確かだが…。
そこで今日は実際に大砲をぶっ放し、教会の鐘を「ここぞ」とばかりに鳴らし、合唱も加わる録音を紹介する。名匠ヤルヴィの絶妙なバランス感覚を体験できる録音といえ、必聴の価値はあるだろう。

【推奨盤】
乾日出雄とクラシック音楽の臥床
ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ砲兵隊/エーテボリ交響楽団合唱団/エーテボリ交響楽団[1989年6月録音]
【DG:POCG-4118】