2005年1月16日。
広告代理店への営業から六本木ヒルズ38階に帰ってくると、
なんとなく社内の空気が違っていました。
ライブドアらしからぬ雰囲気の、スーツを着た40代~50代くらいの男性たちが、
堀江社長の机の周りをウロウロしています。
…ただ、それでもそんなに一瞬で異変と思わなかったのは、
M&A、中途入社、退職が毎日繰り返されてるので、
知らない顔がいること自体は当たり前のことであることと、
常に忙しいので周りの顔なんていちいち確認していないことが原因でした。
その日も一瞬不思議に思ったものの、自分と関係ないので業務に戻ろうと思いました。
帰ってきたので当然PCを立ち上げ、先ほどの代理店にお礼&営業メールをしようとすると、
堀江さんの側近の一人、美人広報と呼ばれた乙部綾子さんに
「パソコン開かないで」
と言われました。
ここで完全に異変と認識しました。
意味がわからなかったのですが、上司も先輩もPCを閉じてフリーズしているので、自分も従いました。
普段はそれぞれが一国一城の主みたいに、己の力を誇示し、
隙あらば激詰めしまくっているオラオラの上司達・先輩達・乙部さんが反論もせず従っているのが腑に落ちなかったのですが、
それもそのはず、まさにこれから会社自体が国家権力に激詰めされようとするところだったのです。
この時は何が起きてるかわからず、軟禁状態から解放され、帰ってニュースでなんとなく輪郭がわかりました。
それでもまあグレーゾーンで、これから色々調査・交渉があるかと思ったのですが、
1月23日に堀江社長が逮捕されてガチなんだとわかりました。
そこから私のいた部署は活動休止状態となり、
リストラはなかったものの、力を持て余した先輩たちが次々転職していき、私も退社しました。
色々謎が明かされ、さらにネット化が進んだ今でも、堀江社長がなぜ逮捕されたのかを、正確に言える人はゼロに近いと思います。
風説の流布、偽計取引、だからそれはなんやねんと。なんでそれで代表取締役が逮捕されるのかと。
なんで上場廃止になり、2015年の東芝はなぜ追徴課税のみなのかと。
当時のライブドアの影響はすさまじく、全てあげていくのは難しいですが、
自分の知っていることを一つ挙げると、
「炎上」っていう言葉を作ったのはライブドアですね。
もともと炎上って、ブログのコメントが荒れることを言ったのですが、
いつからか2ちゃんやSNSで叩かれることまで、意味が拡大解釈されることになりました。
「炎上マーケティング」という言葉を作ったのもライブドアの伊地知さんですね。
技術的なことは、色々なところから持ち寄ってきていた感があるのでこれが元祖だみたいなのはわからないですが、
(ポータルサイトのレイアウトもYahoo!からいただいてた)
ネットの技術より確実に世の中に影響を与えたのは、「会社の在り方」ですよね。
普通の事業と別に、「M&A」というものが会社を揺るがすものとして確実にあるんだということ。
金が発生するならば、事業なんてどんどん増えていっていいということ。
転職退職当たり前の個人主義。
今でも賛否両論になっていますが「若者は搾取されている。起業したほうがいい」という堀江さんの言葉は多くの若者に影響を与えましたね。
土屋ひろしさんという人が、堀江さんのセミナーに10万円出して行き、そこで起業を決意したそうです。
全て堀江さんに影響を受けた彼は六本木ヒルズに住み、ネットビジネスをして、
秒速で1億稼ぐ男とも出会い、「ネオヒルズ族」と呼ばれることになります。
…これはあんまりいい例じゃなかったですね笑
『サラリーマン金太郎』の第二章『新・サラリーマン金太郎』は、
金太郎が資金を集め、テレビ局の買収に動き、世の中の価値観を動かすストーリーでした。
…完全に堀江社長ですね笑
ライブドアは色々問題もありましたが、影響力と、得体の知れないエネルギーがありましたね。