「あとは緩和」といわれたら

- 診察室からの独り言,その他いろいろ −


テーマ:

英国の医学雑誌
『Clinical Case Reports:Wiley』

論文がアクセプトされた.


“自家がんワクチン療法で免疫系を刺激してから,
 少なめの抗PD-1抗体薬を併用したら,
 子宮頸がん(小細胞がん)にメチャ効いたよ!!”

という内容のケースレポート.

オープンアクセスなので,ネット上で,
PDFファイルが入手可能.(↓)

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ccr3.596/epdf


関連ブログ
http://ameblo.jp/gin-nami/theme7-10095061649.html








さて,
ここで注意すべきは,今回の話は,
あくまで症例報告であり,

「こういうケースがあったよ!」,ということで,

皆に同様の結果が見られるわけではない.


抗PD-1抗体薬と免疫療法を
組み合わせる治療というのは,
理論的・戦略的には正しいと思われ,

そのため,
免疫クリニックを中心に同様の治療内容が
自由診療という形で患者さんに提供されている.

そうした中,当院でも,
10例ほどに抗PD-1抗体薬+免疫療法を試みてみたが,
(併用した免疫療法はLAK,DC療法,NKT その他)

劇的な治療効果として目に見えたのは,
今のところ,今回論文にした1症例のみである.


実臨床の世界は,
「理屈通りにいくこともあるが,
 理屈通りにはいかないことの方が多い・・・」

これは,
昔から特にがんに携わる医師が強く感じるところである.


医学が科学としての一面を持つ以上,
理論・理屈はもちろん大切だが,

理屈通り結果がついてこないことは
決して珍しくない.


そういう意味では,
抗PD-1抗体薬+免疫療法の治療効果について,

80%といった他院の治療成績を伝え聞くが,
かなり誇張された数字であろう.

というのも,
当院の同様の治療経験から80%といった数字に
再現性があるとはとても思えない.


今回の症例報告は,
新たな局面に入ってきた免疫療法の領域全体が
前進するための踏み出しの一つに過ぎない.


厳しい物言いになるが,
戦略的方向性に矛盾点は無いものの,

現時点では,まだ抗PD-1抗体薬+免疫療法の併用療法への
過剰な期待は禁物である.

なお,当院での
抗PD-1抗体薬+免疫療法は.

治療の部分以外の副作用発現時の問題(これが重要)や,
診療環境整備の確認なども必要なため,

誰にでもポンポンと
気軽に導入はしていないし,できない.


まずは,
がん相談を通して,患者さんの状態を十分に確認してから,

ということになる.
 |  リブログ(0)