「あとは緩和」といわれたら

- 診察室からの独り言,その他いろいろ −


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少量抗がん剤治療はどのような利点がありそうか,

患者・国,医療者,製薬会社にわけて,

思いつくところを挙げてみる.

 

裏付け資料は,必ずしも無い.

カンと思いつきも含む.

 

 

 

患者さんにとっては,

・元気で長生きにつながる

・副作用が少ない,身体に優しい

・継続性,効果が期待できる

・外来通院での治療が可能

・経済的負担を軽減できうる

・仕事を続けながらの治療が可能.

・高齢者でも可能

 

といったところは,今までブログの中で述べてきた.

 

日本国にとっても,

高騰する医療費に対しての

現実的な対策・方法論であることは自明の理.

 

ミクロ経済・マクロ経済両方にメリットありだ.

 

 

では,医療者には?

 

まず,診察室の重苦しい空気が一変する.

 

「あとは緩和です」

これは言われる患者さんもがっかりだろうが,

言う医者もつらい.

 

無い袖は振れない(治療はない)から,言うしかない・・

   ↓

「あとは緩和」と淡々と告げる.

  ↓

診察室の空気は沈黙する.という流れ.

 

がん診療に関わるすべての医師は

そのなんとも気まずくいたたまれない

診察室の空気の経験があるはずだ.

 

少量抗がん剤治療という,がんと共に向き合う

継続するスキル(線の治療)を

患者さんに提示できるというだけで,

診察室は今までとは異なる空気になるだろう.

 

医師にとって,

提供できる治療があるか無いかで,

天と地の差を実感するに違いない.

 

また,副作用が少ないため,

患者さんの訴えに対して診察室で対応しやすいことも

付け加えたい.

 

さらに,

 

患者さんにやさしい治療行為は

患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)だけでなく,

実は医者のQOLも上げるのだ.

 

昔,メスを振るっていた頃,

適応を広げて行われた手術は,

患者さんの身体への過度のダメージに繋がることがあり,

時にその術後トラブルの対応に追われることになる.

 

トラブルの対処とは,要は医者の仕事が増えるということ.

そして,患者さん相手なので,日曜・休日もへったくれもない.

 

若かりし頃,

「忙しい〜あせる」とバタバタいた自分は,

よくよく考えれば,

自らの治療行為の負の反動で仕事が増えてしまい,

“忙しさ”をわざわざ作り出していた節はなかったか?

 

患者さんへの治療行為に対する負の反動が軽微であれば,

医者の日常も平穏に過ぎていく,

という当たり前の話に,その当時は気づかない.

 

 

最後に製薬会社だが・・・

 

抗がん剤は

世界人口の1.6%の日本国で,

世界の抗がん剤の25%が消費される,ともいわれている.

 

そう考えると,

抗がん剤治療は,世界レベルで見ると

金持ち日本を相手にした富裕ビジネスだ.

 

日本国は,

国民皆保険制度があるため,取りっぱぐれ無しに,

ジャバジャバ高価な薬剤を大量に供給できるため,

 

製薬会社にとっては,手放すことのできない,

大変魅力的で稀有な質のマーケットと位置づけられる.

 

ただ,このまま医療費の高騰が続けば,

この魅惑的な局所マーケットもいずれは疲弊してしまうだろう.

 

 

 

 

さて,少量抗がん剤治療での薬剤投与量が

標準量の1/10,1/20となると,

製薬会社としては収益に関わってくるために,

あまり愉快な話ではない.

 

ところが,よくよく考えれば,

抗がん剤の新しいマーケットの開拓に繋がることに気づくと,

さほど悪い話ではないように思えてくる.

 

まず,

日本国内においては,

現状,少量抗がん剤治療は,

“治療消失期間”に導入されるものであり,

細く・長く薬剤を使用することが特徴であるため,

製薬会社が懸念するほどのことにはならないと考えている.

 

むしろ,当院のような

全国津々浦々の町医者への抗がん剤供給,

さらには,緩和ケア外来・病棟,在宅医療での同療法の導入など,

がん拠点病院を中心に展開していた抗がん剤販売戦略は,

新しいマーケットの開拓を視野にいれることができるだろう.

 

また,世界に目を向ければ,

少量投与であれば,

抗がん剤は,富裕ビジネスの側面を離れ,

 

世界中のがん患者さんが

少量投与であるが故のメリットを享受できるようになる.

 

つまり,

日本や欧米先進国という

局所の富裕マーケットに集中すること無く,

これまた世界中,津々浦々とマーケットが拡大されていく.

 

“少量”と単語の響きはチンケだが,

実は中身はグローバルワイドなのだ. (^_^)