私事で時間がかなり切羽詰っていて、なかなかPCに向かう時間がありませんが、

『NHKスペシャル　想定外の揺れが原発を襲った　～柏崎刈羽からの報告～ 』を録画で見ましたので、少し紹介します。

　9月1日（土）午後7時30分～8時28分　総合
　再放送（今日です）　9月2日（日）午後9時～9時49分　総合

最近、たまたま原発の問題について書くことが多くなったのですが、その理由としては、

　・最大の影響を受け生命に関わる当事者は不在で中央でモノが決められる

　・技術で取りうる対処法が真に全体を見すえたものになっていない

　　（というよりは行政や利権の都合で隠蔽と偽装が進められる）

　・しかし「反対・廃止意見に反対する姿勢」を取るだけで進歩的という誤解がまかり通りがちである

といった、個人の生存権より功利主義が優先されることを「やむなし」「賢い」とする～ありていに言えば、時に民主主義を愚弄するような乱暴な判断こそが知的で戦略的であるという怪しげな風潮に関わる、とても重大な事故である、と考える点があります。

さらに、アベ内閣およびその取り巻きに、こうしたことに客観的に対峙するだけの判断能力を持った人物がいない、という大問題があります。

同時に、この巨大システムの大前提に、最大の意思決定を行う人たちの無誤謬性と、非定常的な事態に対して十分なフェールセーフ（危険な状態に持ち込まないためのバックアップや制御の仕組み）が働くこと、などがあることへの疑問（というよりは、やってられない感）もあります。

後半に番組の概略ダイジェストを挙げますが、今回、中越沖地震により「想定外の出来事」が多発した柏崎刈羽原発においてすでに指摘され、語られた事項（ということは、まだ開示されていない重大な事象があるということ前提です）の中から、少なくとも以下は明らかになったと考えます。

(1)地震により極端に多くの複数の事象が同時に起こった場合に対応することが物理的に不可能であったこと

　　それに耐えうるには、通常から数倍の人員を配備する必要がありそうなこと

(2)地震直後には人間による作業はたとえ目視確認ですら不可能であること

(3)巨大な電力会社での意思決定の遅れは企業運営・風土の根幹からの変革が必要なこと

(4)技術革新により新しい理論が提起されても、どの理論を採用すればよいか客観性を持とうとすればするほど決定が遅れてしまうこと

(5)リスクはゼロではないというスタンスに立ち、想定されるリスクに対して国際的な基準に沿った改善の仕組みを取り入れたとしても、そもそも活断層の上に原発を建てること自体、「致命的」となるゾーンからのリスク低減は不可能であること

そして、管理のための人員と、作業員とされる従事者の問題も、もちろんここにあります。

～～～ここから番組ダイジェスト

テーマは、「そもそも原発は地震に耐えられるのか」

【メモを取りながら視る習慣があるので簡単な記録です。章立ては管理人によります】

最初の画像がこちらと同じものでした。でも水蒸気の説明は無し！

番組紹介ページ。クリックで拡大します。

原発管理者の発言：

原子炉が「暴走じゃないけどそうなる可能性もあるので・・・」

下請けの作業員の証言（複数）：

「これまでに経験のない揺れだった」

◆1　【「想定外」の事象に対し初動時に何が起こっていたか】

稼動していた2.3.4.7号機において、あまりに多くの想定外の事象が発生した。

1-1　3号機で起こったこと、運転停止（スクラム）とその後の対応

最大の揺れは3号機で観測され、そこでは中央制御室で5人が管理にあたっていた。

激しい揺れの瞬間、スクラムの表示（緊急停止装置の稼動）を見た。

そのとき炉はフル稼働で臨界に達していた。制御棒で2秒で停止は成功した。

まず制御棒が正常に挿し込まれ、「暴走じゃないけどそうなる可能性もあるので」安心した。

しかし数メートル先の、表示を示すパネルに近づけなかった。

揺れが収まってからしか動けず、そのとき初めて確認できた。

1-2　総責任者の証言　「全ての原子炉が初めて同時に被災した原発」に際して
総責任者は構内を移動中、全て運転が止まったという連絡を受けて緊急対策室に向かった。

すると、3号機から黒い煙があがっていた。

変圧器から出火。原子炉は厚さ2メートルの壁があるため、延焼がないという判断のもとで他の人に初期消火を任せた。

スクラム（緊急停止）以降の対応に注力が必要。

緊急停止の後、炉の温度は280度で配管が壊れるなどがあれば依然危険であり、炉の温度を100度以下にならないと安全とはいえない。

しかしそこで「思わぬトラブル」があった。

ドアが歪んでいて緊急対策室に入れない。（耐震基準が通常の工場並であったため）

そこで、施設の横の駐車場を緊急対策室の代わりにしようとしたが、まず用意できたのはホワイトボード1枚で、状況は携帯電話で集めた。

しかし、多くの情報を有機的にまとめあげることができなかった。

1-3　巨大システムのほころび

3号機のスクラム後、アラームへの対応（パネルにはアラームが100近く発生していた。

本来は他の炉から応援を呼ぶべき状況だが、今回、他の炉も被災しているのでそのままの少人数で対応せざるを得なかった。

原子炉建屋からの物質の放出を防ぐための（建屋内部を引圧＝外気圧より低くしておく、通常の工場やプラントで行われている）差圧が確保できず、しかもどんどん悪くなっていくのが最大の問題だった。

原因が見つからない。点検のために1つの炉の周囲を人が回るだけで1時間かかる。

そこに変圧器火災の知らせも同時に飛び込んできた。地元の消防に電話をしてもつながらない。

なんとかつなってくれという思いだったが、災害時に（消防に）優先的につながる電話（回線）ではなかったのは想定外だった。

変圧器付近でも、消火栓が破損してほとんど水が出なかった。

「消火はできない」という連絡があり、「地元の消防に任せよう、大きなことには至らないだろう」と判断した。

◆2　【自治体や住民の置かれた状況】

2-1　住民

住民の多くは停電で情報を取ることができず、東京からの家族の「原発で火災が起こっている」という携帯メールで原発火災を知った人もいた。

不安が高まる。

震度3以上はTEPCOから役場に連絡が入ることになっていたが1時間経っても連絡がなかった。

2-2　刈羽村役場

役場自体が大きな被害を受けていたが、一向に連絡がない。

「事業者が壊滅状態になっているのではないかとも考えた」。

2-3　新潟県

新潟県にも地震直後から監視データ伝送が途絶えた。

新潟県知事は最悪の事態を想定し、住民避難を検討していた。

放射能は目に見えない、さらに機械設備も見えない。

一方で、住民避難には時間がかかる。極めてハイリスクな状態を認識していた。

◆3　【発生から2時間後の状況】

（官房長官が「放射能漏れは確認されていない」と話したのが2時間少し経った時点です）

3-1　スクラム後の冷却装置の故障発覚

3号機の火災は消防で消火されたが全体の把握をした担当者は新たな想定外トラブルに見舞われた。

原子炉内の温度を下げる装置が故障していた。

3,4号機を、残った装置でどう温度を下げるのか？判断を迫られていた

3-2　3号機の差圧問題の原因判明＠16時

3号機は気圧バランスの原因がつかめず、午後4時に原因連絡があったが、まさに想定外であった。

通常は外れることのない原子炉のある建物の「ブローアウトパネル」が脱落していた。

地震で隙間ができて気圧を保てなかったが、震度6弱の余震で外れたために初めて原因が分かった。

これでは、万一の場合（放射能漏れの場合）、差圧を保てない。

3号機で「見たらダメだというのがわかった」（責任者）

3-3　冷却装置を適用する優先度
3号機だけでなく4号機にも問題があり、冷却装置は1台しかない。

どちらを優先するか？3号機とした。

3-4　放射性物質がないはずの6号機外に微量の放射性物質の水溜り
6号機は定期検査で止まっていたのに想定外の報告があった。

微量の放射性物質を含む水たまりができていたという報告があったが、当初誰もこの情報を信じようとしなかった。6号機の外には本来放射性物質がないはず。

実際、人手不足のため専門外の職員が調査にあたっていた。

しかし、再度の調査でも、微量の放射性物質が検出された。

これは、隣の使用済み核燃料プールから漏れたもので、プールの区域は厳しい設計になっており、壁で区切られているため、区域の外に漏れるはずはなかったが、壁を貫く電源ケーブルの間から漏れ出し、一般排水と混ざって海へ流出した。

それでもなお検査ミスを疑い、3回目の調査をした。正式な報告は水溜り発見から6時間後となった。

正しい情報を出さなければという慎重な判断によるもの、としている。

3-5　冷却収束は翌朝まで
3号機は深夜11時に冷却完了。

すべての冷却を負えたのは翌朝6:54だった。

◆4　【取材記者からの見解など】

記者：

今回、基本的な停止機能を果たした。放射能漏れも基準値の10億分の1だった。

しかし被害の全体像は分かっていない。分かっている被害でも2500件以上。一般設備で被害が多い。

耐震基準は、

　As　原理路格納容器　など

　A　　原子炉建屋　使用済み燃料プール　など

　B　　タービン建屋　給水加熱器　など

　C　　所内変圧器　緊急対策室　など　←実際に被害が起こったところ。一般の工場と同じ基準

このCクラスの設備が壊れたことで混乱が生じた。

緊急時のマネジメントシステムを考えるべきという見解である。

同時に全ての原子炉が被害に遭い、町も被災している場合の対応が求められる。

◆5　【耐震基準の設定来歴と見直しについて】

設計上、基礎岩盤では450ガル、しかし993ガルを観測。なぜここまで食い違っていた？

5-1　探査船「かいれい」での断層”発見”

海洋研究開発機構の深海調査研究船「かいれい」が8/19から活断層を発見するための調査を開始した。

エアガンでの音波調査により、海底地下15キロまでの調査で、2日目に気になる反射面（断層の示唆）が発見された。

東（陸）側・西（沖合）側とすると、2本の断層が、陸から海へ、内陸へと向かっていた。

震源となった可能性がある断層、深さ9キロの断層が捉えられた。

最新の海底調査で発見された周辺の断層（管理人：　認めざるを得なかったという表現も可能でしょう）

5-2　建設当時にTEPCOが知ることができなかったのか？

450ガルがどう決まったのか？

建設時の昭和53年に原子力安全委員会の旧指針に沿って、当時の技術を駆使したところ半径30キロの範囲で、陸上と海で20本以上の断層があったが、長さが短い・年代が古いと判断した。

4つの活断層が動いた場合、M6.7の可能性のある断層は常楽寺断層を最大の450ガルと結論付けた。

「見つけることはできなかったと判断した」

5-3　最近の（昭和53年以降の）研究成果

しかし阪神淡路大震災を契機に、昭和53年時点での旧指針で網羅されていない研究成果があった。

「電子基準点」が設けられ、その結果、平成12年に柏崎付近の大地震の可能性が示唆されていた。

日本列島の圧縮（年間4～5センチ）のうち、もっともひずんでいる地域は、太平洋岸に加えて神戸から新潟にかけて歪集中帯があり、震源とも合致している。

空白域はM7以上の地震に注意すべき（中越含む）とされた。

歪集中帯の中で「断層関連褶曲」（歪がうねっているところに活断層がある）という考え方は学会でも広く受け入れられてきた。このことは、柏崎刈羽原発付近の見直しを迫るものであった。

5-3　TEPCOは・・・

TEPCOはそうした問題を検討したが、結果、耐震性評価を変えなかった。

「計画の中で対処したと考えている」が、電力会社が一度決めたことを見直すこと、社内的合意を作った上での見直しの大変さが根本にある。

不具合が出たとき建物や機器を改修するための社内ハードルが高い。

5-4　国も・・・（原子力安全委員会）

全面的改訂を行ったのが去年9月、25年ぶりとなる。

委員の発言：

「いろんな専門的なお考えがある」中で「ひとつの考え方に偏るわけにいかない」

「ある程度時間がかかってもやむを得ない」

上記見解に対して：

25年は長すぎるが地震が起こらないと行政は動かない。

阪神淡路大震災でも10年かかった。

仕方がないで済まされない。改訂指針での耐震設計がなされていれば、今回も被害の軽減化がなされた。

5-5　新旧指針の考え方としての差異

旧指針は「いかなる地震にも耐え得る」となっていたのでかえって誤解が生じがちだった。

新しい知見があっても、安全だと書いてある以上、取り入れにくかった（硬直化）。

新指針では「できる限りの調査をして決めても、それを超える地震動がありゼロにできない」というリスクを前提としている。

そのリスクをできるだけ小さくするため対応が求められる（国にも事業者にも）。

この考え方を運用していくためには、新しい知見があった場合、それを取り入れること（柔軟性）が必須である。

5-6　耐震補強による「安全性の向上」の紹介

1000ガルに対しての耐震補強の例：　浜岡原発（東海地震の想定震源上に建つ）。

浜岡原発は、中部地区の電力供給の15%をまかなっている。

この耐震基準を600ガルから1000ガルへ向上させるために、排気塔などで起震装置を用いた振動実験・検証を行っている（この実際の設備を用いた検証は今回が初めて）。

浜岡原発付近にある震源域の見直し、東海地震の最大の揺れ（管理人：　このことの根拠は説明なし）に30%アップさせ、揺れをシミュレーションを実施している。

補強工事の費用は1000億円（新規建設の20%）となる。

特に、配管（原子炉冷却）の弱い部分に対して、基準の2倍とするV字型の補強で基準の60%（に最大揺れを設定）。1万2000箇所のうち1500箇所で補強を実施する。

5-6　浜岡原発での1000ガルの新基準に対して（石橋教授・中部電力）

震源の上に原発があることそのものが異常であり、1000ガルであるから妥当とは言えない。

1000ガルを超えることもあると警告する。

中部電力の見解：

耐震基準として妥当であると思う。

「我々だけ突拍子もないことをやるわけにはいかない」ので1000ガルとした。

5-7　他の原発の取り組み

記者：

10電力会社を調査したところ、19基で当面は耐震補強を実施している。プラス2基が計画中。

新指針に沿った断層評価をしているが時間がかかる。

四国原発伊方原発の状況

島根原発は評価が甘いとされ、地質調査から始めていて結果を見てからでないと工事できない。

よって工事はしていない。

記者：
残り34基については補強の計画が立っていない

1～2年かかる調査を経てからとなる。

想定を超える揺れは女川原発、志賀原発で実際に発生している。

一刻も早く再調査、告知、安全確保の処置が必要である。

世界の地震の1割が日本で発生している。

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朝日の地方面でこうした連載が始まったことを教えていただきました。

http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000000709010005

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行政・利権都合と硬直化した組織での対応限界を思う（柏崎刈羽原発NHKスペシャル視聴記録）