哀愁のマタドール : ジム・ホール | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
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COMMITMENT JIM HALL
(1976年)
 朴訥なイメージのギタリスト、ジム・ホールは落ち着いた独特の歌いまわしが特徴的ですが、そのイメージとは反対に時に繰り出す自由度の高いインプロヴィゼーションなど、結構挑戦的な演奏も行いました。ジムはソニー・ロリンズ、アート・ファーマー、ビル・エヴァンス、ロン・カーターといった多くのミュージシャンと共演し名演奏を残しています。またパット・メセニーやジョン・スコフィールドといった若いギタリスト達にも大きな影響を与えました。リーダー作も多く1957年に初のリーダー・アルバム” Jazz Guitar”を発表しました。1960年には傑作ライブ・アルバムとして名高いエラ・フィッツジェラルドの”マック・ザ・ナイフ-エラ・イン・ベルリン”にも参加しています。1969年にはセカンド・アルバム”It's Nice To Be With You: Jim Hall In Berlin”を発表しました。そして1975年にジム・ホール最大のヒットとなる”Concierto(アランフェス協奏曲)”をCTIレコードから発表しました。このアルバムはCTIレコードとしてもレーベル最大のヒット作品となりました。ライヴ・アルバムを挟んで翌年1976年にホライズン・レーベルより発表したアルバムが今回紹介する作品です。参加メンバーはジム・ホール(g)、トミー・フラナガン、ドン・トンプソン(p)、アート・ファーマー(flgh)、ロン・カーター(b)、テリー・クラーク、アラン・ガンリー(ds)、クラッシャー・バーネット(pec)、ジェーン・ホール、ジョアン・バーバラ (vo)、ドン・セベスキー(arr . on tracks 1,3,8 )で曲によりメンバー構成が異なります。

01. Walk Soft(ウォーク・ソフト)
02. One Morning in May(5月のある朝)
03. Lament for a Fallen Matador(哀愁のマタドール ~アルビノーニのアダージョ)
04. Down the Line(ダウン・ザ・ライン)
05. When I Fall in Love(恋におちた時)
06. My One and Only Love(マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ)
07. Bermuda Bye Bye(バミューダ・バイ・バイ)
08. Indian Summer(インディアン・サマー)

1曲目「Walk Soft」はジム・ホールの曲で、演奏はジムとトミー・フラナガン、アート・ファーマー、ロン・カーター、アラン・ガンリーです。ドン・セベスキーがアレンジしており軽めのジャズに仕上がっています。2曲目「One Morning in May」はジム・ホールとドン・トンプソンのデュオによる明るく小気味が良い演奏です。3曲目「Lament for a Fallen Matador」はクラシックの”アルビノーニのアダージョ”をジャズにアレンジしたもので、言うまでもなく”アランフェス協奏曲”の路線です。ジム、アート・ファーマー、ロン・カーター、ドン・セベスキーのCTIではお馴染みのメンバーを中心に演奏しています。クラシックとジャズの融合の王道とも言える演奏はとても美しいです。ジムの落ち着いて朴訥とした演奏と抒情的なアート・ファーマー、そして彼らをバックアップするベースのロン・カーター、このアルバム一番の聴きどころです。ジムはアコギとエレクトリックを演奏しており、アコギはオーヴァーダビングして厚みを増しています。4曲目「Down the Line」はジム・ホールのソロ演奏で、ジムがエレクトリックとアコースティックをオーバーダビングした演奏です。右がアコギ、左がエレクトリックです。5曲目「When I Fall in Love」はスタンダード・ナンバーで、ジムの奥様ジェーン・ホールさんとの共演です。ジェーンさんがヴォーカルを担当しており微笑ましい共演です。6曲目「My One and Only Love」はトミー・フラナガンとのデュオです。原曲に忠実な演奏で非常に美しいジャズ・バラードです。7曲目「Bermuda Bye Bye」はドラムのテリー・クラークとのデュオです、ちょっとお洒落なカリプソです。8曲目「Indian Summer」はドン・セベスキーのアレンジで1曲目と同じくジム、トミー・フラナガン、アート・ファーマー、ロン・カーター、テリー・クラークによる演奏です。ちなみにタイトルの”インディアン・サマー”は秋ないし初冬に,晴天が続き,日中は高温,夜間は冷えこむ特異な期間をいい、日本の”小春日和”に相当します。そんな雰囲気を感じさせる曲です。ジムはこの年ダイレクト・カッティングのアルバムを制作したり積極的に活動し日本にも来日しています。また82年には再びドン・セベスキーのアレンジでCTIから作品を発表しています。今回紹介したアルバム“COMMITMENT (哀愁のマタドール)”は色々な編成のセッションで、ジムとしてはこれまでのジャズの演奏から何か新しいことをやろうと色々と試してみていたのではないでしょうか。70年代のジムのアルバムというと“アランフェス協奏曲”ばかりが有名ですがこのアルバムもまたずっと聴いていきたい作品です。