えいちゃんの短編ホラー

えいちゃんの短編ホラー

すぐ読める短編ホラー小説を書いてます。
ちょっとだけあなたを恐怖の世界へ案内します。
感想とか書いてくれるとうれしいです(^-^)

長らくお待たせしました!

「呪いの方程式(中編)」をお楽しみ下さい。

あの名コンビに加えて第三の刑事が登場!
後半、美奈子の推理が冴え渡る!!

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「いたたたた……。いきなり何をするんだ」

 高森は頭を起こし、額を押さえながら美奈子を睨みつけたが、そんな事などお構いなしに美奈子はモニターを指差した。

「ほら、見て」

「ん?」

 高森がパソコンのモニターに目を向けると、Ward上にチャットと同じような意味不明な連続文字が書かれていた。

「あ、似てるな」

「でしょ? 最初におでこが当たった部分の周りの文字がタイプされて、その後はおでこが最後に止まった場所の一文字だけが連続でタイプされているわ」

 美奈子は腕組しながら少し自慢げに解説した。

「うーむ……。じゃあ、誰かにキーボードで頭を打ち付けられて死んだって事か? まさかモニターから出てきたとか? 貞子じゃあるまいし……」

 高森は手を貞子のように手を前に出しておどけて見せた。

「頭を打ち付けられて死んだってのは無理があるわね。だったら打ち付けられた直後も抵抗されて文字がもっと拡散されるはずだけど、打ち付けられた後は文字が固定されているって事は、何らかの理由で殺されてからキーボードの上に頭が乗っかった……」

 美奈子は、高森の事など目に入らないといった表情で、両手で頭を掻きながら深く考え込んだ。

「何、朝からイチャついてるんですか?」

 捜査一課の河合刑事が二人の間に割り込んできた。何処をどう見たらイチャついて見えるのかわからないが、河合は二人が仲良くしているのが面白くないのである。河合修二、26歳。美奈子より二歳年下ではあるが、刑事暦は一年先輩である。身長は180センチほどあるが、学生時代はアイドルの追っかけばかりしていて、ろくに運動をしていなかったせいで、体の線が細く刑事にはとても見えない。河合は美奈子の事が好きで、毎日アプローチをしているが、全く見向きもされないのである。もちろん、美奈子が高森を好きな事は承知なのだが、いつか振り向かせてやるとチャンスを伺っているのである。高森に関しては、警察官としてとても尊敬しており、目標としている刑事ではあるが、美奈子を取り合う恋敵……と勝手に思い込んでいるのである。

「河合くん、何バカ言ってるの?」

 美奈子は顔を真っ赤にしながら河合の言葉を否定した。

「おお、河合。例の件、どうだった?」

 二人の気持ちを知ってか知らずか、高森が河合に声を掛けた。

「警部、すいません。相変わらず足取りが掴めませんね……」

 河合は高森に会釈をしながら答えた。

 今度は、逆に美奈子が二人に割り込む形で河合に声を掛けた。

「河合くんは、このチャットを見てどう思う?」

 河合は美奈子が示したチャットを黙々と読んだ。

「俺、こうゆうの苦手なんですよ。ホラーとかお化けとか……」

 河合は体を震わせながら美奈子の後ろに回り、美奈子の腕にしがみついた。

「こら、どさくさにまぎれて何処触ってるのよ!」

 美奈子が河合の頭にげんこつを食らわせた。

「わぁ! ミーナさん、ごめんなさい! 本当に怖いんですって!」

 なんとも平和な警視庁捜査一課の朝である。

「ところで警部、最後に退室した武知昌彦は生きているんですか?」

 美奈子は再度チャット画面を見ながら高森に聞いた。

「いや……。残念ながら殺されたよ」

 高森は、無念そうな顔で答えた。

「じゃ、別の日にチャットで?」

 美奈子は自分でも不謹慎ではあるとわかっていたが、興味本位に身を乗り出して高森に聞いた。

「いや、オフラインでな」

「え? ……」

 美奈子は高森が何を言っているのかわからなかった。

「自宅の玄関前で、何者かに刃物で刺されたんだよ」

 高森は自分でも頭をひねりながら答えた。

「ふーん……」

 美奈子は自分の考えと違う答えに戸惑いながら呟いた。

「他の三人の死因は何ですか?」

 河合が、美奈子に殴られた頭を押さえながら高森に聞いた。

「それが……原因不明の心臓麻痺なんだよ……。三人とも目立った外傷が無いんだ……」

 高森は更に頭をひねりながら答えた。

「三人だけがチャットの最中に里実に呪い殺されたって事? なぜ、一人だけが外で殺されたの?」

 美奈子は、先程のチャット画面を読み直しながら、更に深く考え込んだ。

「三人だけがオンラインで殺されて、一人だけがオフラインで殺された……。なぜ、四人とも呪い殺せなかったのか……? うーん、わからん」

 美奈子は狂ったように両手で頭を掻きながらキーボードに頭を打ち付けた。

「ミーナ……」

「ミーナさん、大丈夫ですか?」

 心配そうに美奈子を見つめる二人。

「そういえば、本当に呪いなら何故四人同時に殺さなかったんででしょう?」

 河合が、ふと素朴な疑問を語った。

「何言ってるの? 河合くん。そりゃ、恐怖を味あわせるために、一人づつ順番に……」

 美奈子はキーボードに頭を置いたまま、河合のほうを見ながら呆れ顔に返事していたが、突然起き上がって叫んだ。

「そうよ! 同時に殺したくても殺せなかったのよ!」

「ミーナ、大丈夫か?」

 高森は、美奈子の豹変ぶりに頭がイカれたのではないかと本気で心配した。

 そんな高森の心配をよそに、美奈子は自分の推理を説明しはじめた。

「呪いなんか信じたくないけど、本当に呪い殺したのであれば、殺す相手の居場所がわからないと殺せないでしょ? どうやって居場所を調べたのか? 多分、IPアドレスを探りながら一人ずつ順番に……。でも、一人だけ、居場所がわからなかった……。多分、プロキシを利用して書き込んでたかも……。そうなると、オフラインで殺された一人は、共犯者に殺されたって事になるわね……」

 美奈子の眼が爛々と輝いた。

「警部! 河合くん! 殺された四人のパソコンを調べて頂戴!」