校正こそが基本のキ | えほんや通信

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名作童話の電子出版「えほんや」の編集長・原 真喜夫のブログ。こどもの本と教材、雑誌、実用書の編集を手がける編集プロダクション・スキップの代表取締役。アロマテラピーにも目覚める。村上春樹、マーヴィンゲイ、寿司と焼き鳥、日本酒とワイン。

青ペン赤ペン

青芯を入れたシャープペンは必需品

できあがりは千差万別

今の編集者は、たいへんだ。

昔、アナログだったころは写植を打つのは「プロ」だった。
だから校正は一定のレベルが保たれていた。
同じ教材でも、複雑な数式を打ったり、細かな位置の計算が必要な
算数や数学のページを担当できる写植オペレーターは、
一目置かれた存在だった。

ところが、Macがすべてを変えた。
DTPがページ作成を飛躍的に簡単にしてくれた。

その結果、同じ原稿を渡しても
上がってくるページはデザイナーさんによって
1つとして同じものがない、という時代になったのだ。

校正を見始める以前に、そのデザイナーさんの仕事を知り、
アプリケーションについての知識を持つ必要がある。

他人と同じことはしないからこそデザイナー
もちろん、デザイナーさんもプロである。
だが、そのプロとしての手腕の見せ方がちょっと異なる。
他人とちがう、個性的な表現こそがデザイナーの身上ではなかろうか。
そうすると、同じ原稿で同じ校正をあげてくれ、という方に無理がある。

たとえば、「勉強」という漢字に読みがなである
「ルビ」をふるとすると…
ルビみほん

これだけのパターンがすぐにできてしまう。
InDesignを使うか、Illustratorを使うかで
さらに違った表現が生まれてしまう。

ふう。そんなことまでコントロールできるのだろうか…
やってほしい。
現代の、編集者である以上。

そして文字校正。さらに文字校正。最後まで文字校正。
もし間違った字を印刷していたら、
こどもはそれを正しいと思って覚えてしまいかねない。
教材ならなおのこと。
だって、教えることを前提にお金をいただいているのだから…

…ところが、人間は間違える動物なのだ。
どれほど注意していても。

それを十分覚悟して校正紙に向かわなければいけない。

形から入ろう
 左側に原稿、右側に校正紙。
 右手には青のシャープペン。赤ペンを手元に置いて。
 左手の人差し指で原稿を追い、
 同じ場所を右手の青ペンで線を引きながら確認していく。
 誤字・脱字・誤りがあったら、そこではじめて
 右手に赤ペンを持って、朱字を入れる。

電話が入ったら、そこでペンを置き
終わった後、青線の途切れた部分から校正を再開する。

校正紙のすべての文字に青線がひかれなければ
次のページにはうつらない。

校正は、できれば午前中に。

それでも、見落とすものなのだ。
ヒューマンエラーとの戦いなのだ。
デザイナーさんは機械ではない。
間違えていて当たり前、ぐらいに思わなくては。

校正にいちばん力を入れよう
かつてサラリーマン編集者だった時代の僕は「ミス王」の
肩書きをもらうほど、つまらない校正ミスを
毎月のように連発していた。

それは、校正を甘く見ていたから。
「企画が勝負」と思っていたから。

違うんだな、それは。
どんなによい企画も、1個の校正ミスで吹っ飛んでしまう
校正こそが編集者の基礎。
今はそれが十分にわかっているから、心からこう言える。


校正こそが基本のキ。
 ファクトチェックと文字校をつねに怠るな」