つげ忠男 「成り行き」 | ドクター松井の日常

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成り行き/ワイズ出版

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つげ忠男、現在のところの最新刊!

やばい作品だった・・




つげ義春を好きだったり、読んだことがあったりという人は多いと思います。

でもつげ忠男を読んだことがある、という人は格段に少なくなる。

二人はご兄弟ですね。



絵に関してはちょっと似たところがありますが

もっと線が荒いというか太いというか

また違った手触りです。緻密さはあまり無い。

しかしながらつげ義春ファンも触れてみるべき。

きっと読後に胸にくるものがあるはず。



つげ忠男作品で特に描かれているのは

過去の東京の血液銀行周辺

そこに集うアウトローな人々の描写が非常に特徴的で

より都会を描いている、という点が兄つげ義春との大きな違いかな、と。

もっと重く、暗い。

辰巳ヨシヒロにも通じる部分はあるが

より寡黙なイメージを僕は覚えます。



後期になってくるとつげ義春も東京を描いていますが

都会的、というよりは調布・多摩川の情景が多いです。

つげ忠男も後期になってきて、川の描写が増えます。

都会から利根川に舞台が移っていく。

兄弟で川に惹かれていくのはなにかあるのでしょうか?

(まあ両者ともこんな風にカテゴライズできるわけもなくいろいろな作品があるのですが)



今回の新刊では

強いインパクトがあるのは冒頭の作品、「夜桜修羅」。

勝手なことを言わせてもらえば

過去の作品の方が明らかに名作だ、とは思います。

でも、この短編にはちょっとおかしいくらいのパワーがある。

過去の様々な名作とはまた違った異常性の高いパワーとインパクト。

こんな作品が提示されてくるとは思ってもいなかった。

無茶苦茶だ!

出鱈目なまでの激しさ。

つげ忠男のなんともいえぬ絵柄と相まって

まさに狂気の一作として迫ってきます。

なんだこりゃ。



つげ義春のいわゆる全盛期の有名作のなかで

もっとも著名かもしれない「ねじ式」だけが

他の作品と全く異なったテイストを持つように

「夜桜修羅」は本当に異質かつ怪作です。

一読をおすすめするにはするにせよ

「ついていけない!」となって他のつげ忠男作品に触れる機会を永遠に損失する可能性も秘めていてちょっと怖い。それほどのインパクト。



恐ろしい一冊だ!