かなり久々の投稿になってしまいました。
「第39話 サントハイムにて」に加筆をしました。3章はここで完結となります。
長らくこの作品について放置してしまっていたのですが、続きを書いていきたいと思います。
よろしくお願いいたします!
かなり久々の投稿になってしまいました。
「第39話 サントハイムにて」に加筆をしました。3章はここで完結となります。
長らくこの作品について放置してしまっていたのですが、続きを書いていきたいと思います。
よろしくお願いいたします!
老人は朝早く目覚めると、少し警戒して外へ出た。そこが普段そうであろう状態で、何の変哲もない農村だという事が確認できると安心し、躰を目覚めさせる為に軽い体操を始めた。
明るくなる前に出発しなければならなかった。
老人が恩人の若い女に別れを告げるため戻ろうとすると、女は既に起きていたのか、後ろに立っていた。
「起こしたかの」
「いえ。私も朝は早いんです」
「そうか。早起きはいいもんじゃ」
老人は昨晩に重傷を負ったが、活力を取り戻していた。女の手当が適切だった為であった。
「世話になったのう。本当にありがとう」
「いえ」
「お姉さんによろしくのう」
女はかしこまった表情になった。
「ブライさん、実は言いたいことがあって」
「ん?」
「私、結婚するんです」
ブライは驚いた。ミネアにそういった相手がいたとは知らなかった。旅が終わってからそうなったのであろうと思った。
「相手はこの村の人です」
老人は驚いていたがすぐ、自分の孫が結婚したかの様に喜んだ。
「そうか!おめでとう。お前さんならいい奥さんになれるじゃろう。いい母親にもな」
ミネアは幸せに満ちた笑みを浮かべ、そして深々と頭を下げた。老人へ、そして彼の向こうに見える、同じ仲間達へと向けて。
ブライは彼女を見て、自分も幸せな気持ちになった。一年前の冒険で、皆大きく人生を変えたのだろうという想像はしていたが、彼女はまさにそうである一人だと思った。これからの彼女の人生が更に瑞々しく輝くことを祈った。
「元気でな」
「ブライさんも」
ブライが飛翔呪文ルーラを詠唱すると、彼の躰は浮かび上がり、そのまま速度をあげて彼方へと飛んで行った。
あっという間に小さくなって行った老人を見送ると、女はもう一度、頭を下げた。
「やはり、馬は駄目ですなぁ」
馬上で悪戦苦闘しながら前へ進もうとしているのはトルネコであった。
一刻程前、トルネコはサランに到着した。ここはスタンシアラから兵器を持ち帰る中継地点であった。
そこで、大騒ぎになっている街を見た。
サントハイム王が死去し、その葬儀、そしてアリーナ姫による会見が本日サントハイム城にて行われるというのである。寝耳に水であった。
「もうすぐ到着しますし、大丈夫ですよ。間に合います」
同行するサントハイム兵に励まされながらようやくトルネコはサントハイム城下へと到着した。
既に城の前には多くの民衆が集まっていた。姫は城の上部にあるテラスから人々に向かって話すという事であった。
人々と城との間には兵が割り込んでいて、ある程度の距離があった。姫の安全の為であった。
トルネコはサントハイムの人々の中に紛れ込むと、姫を待った。
少しすると、座の主役は姿を現した。
「皆さん、お集まり頂きありがとうございます」
アリーナの顔がひとつ、大人に近づいていたのを見て、トルネコは若者にとっての一年と自分の一年との長さの違いを実感した。
ブライがサントハイムに着陸すると、彼はその騒ぎに驚いた。老人が急いで城へと向かうと聴衆は皆一度声を出し、そして静まり返った。ブライが前を向くとかつての彼の主の娘、そして今から主となる女性が立っていた。
姫は最初に一言挨拶をすると、続けた。
「今日は皆様にお伝えする事があります。昨夜、私の父は、サントハイム王は死去しました」
アリーナは涙していた。正確には涙は流れていなかった。昨夜に泣き尽くしたためであった。彼女はあくまでも凛とした表情を見せていた。
彼女がそういう表情を見せれば見せる程、ブライには涙がこみ上げて来た。そしていつの間にか彼は声を上げて泣いていた。
姫の姿を舞台袖から見守るクリフトも、大粒の涙を床にこぼしていた。
アリーナは演説を始めた。大臣の作成した前向きな調子の物で、昨晩暗記した物であった。その間もクリフトとブライは彼女の代わりに涙を流し続けた。
突然、6、7騎の馬が演説会場に走り込んで来た。演説の妨害者はサントハイム兵だった。姫は演説を中断しあたりは騒然となった。
「敵襲!フレノールが対岸のボンモール連合軍に攻撃を受けました!」
来訪者は叫んだ。もし彼が冷静だったならば、この大会場を混乱に招くような行動は避けたかもしれない。
「レイクナバ常駐のバトランド軍が攻撃を開始し、現在交戦中です!」
トルネコは自分の故郷の町の名前を久々に聞いた。
第3章 終