サウス・バウンド
奥田 英朗(角川書店)

 元過激派の父と同じく活動した母をもつ少年と家族の物語。

昔の安保闘争や学生運動をやっていた若者が、結婚し子どもができても今だに過激派として活動しているととんでもない父親になる。役所や学校といった国に反発し、税金も未納で、子供も学校に行かせない。

 今は平和ボケして国政がおかしいのにまったく反対運動が起こらない。町でも時より反対演説しているけど、やっているのはこの年代の親父ばかり。イラク戦争の反戦運動もほとんどなかったし、若者は正義に訴えたり、国にたいして戦う姿勢はない。たぶん安保闘争が盛んだった当時より問題は山積みで訴えるべき点は多いはず。ところが何もやらない。あやしい宗教団体ばかりで、赤軍派みたいな過激派はいない。平和はいいことだけど、甘えていると状況が厳しくなると立ち上がれなくなる。

 この物語は家族で沖縄に移住し、そこでリゾート計画進行する土建家と父が闘争する。父を沖縄の英雄アカアカジと重ねる展開が読みこたえがあった。帯に21世紀を代表する新たなるビルドゥングスロマン誕生とあった。後半部の展開で高評価。

採点★★★★☆