お迎えに行った病室で。
「この度は、…。」
「あ、葬儀屋さん、よろしくお願いします。」
「ご準備は、よろしいですか。」
「ちょっと、待って。ちょっとここで、打ち合わせしてもええですか。」
「わかりました。では、場所をかえて・・。」
「私が息子で、こちらが、故人の兄です。親族のほとんどが、関東なので、こちらでは、火葬だけしてもらって、関東で葬儀をしたいのですわ。」
「わかりました。それで、ご遺体は、どちらへご搬送いたしましょうか。」
「本人が家に帰りたがってたので、自宅に連れて帰りたいのです。」
「はい、承知しました。」
兄「葬儀をしないというのは、これ、家族葬ですか。」
息子「いや、家族葬は、葬儀やから、これは、密葬や、ね、葬儀屋さん、密葬でお願いします。」
「はい、そのように。ただ、お寺さんには、お経を頂きますか?」
「それや、どうするの、こっちで、お経もらって、関東でもお経よんでもらうのか。こっちでは、もう簡単でええやないか。」
「あのー、ご遺体を火葬なさるときに、懇ろにお寺さんにお勤めして頂くほうが、ご遺骨になられてからよりは、意味があるかと・・。」
「そや、その通りや、きちんと拝んでもらってな。」
「それやったら、線香やろうそくやおりんや木魚も・・。花はどうするねんな。」
「そら、それなりに飾ってもらって。な、親戚も来るし・・。」
「わかりました。大丈夫ですよ。ご希望どおりにお手伝いいたします。」
「近所の人も来てもらうから、その用意もせなあかんし。」
「そうか、そうしよか。」
(・・これは・・密葬・・?)
「承知しました。それでは、ご自宅へ出発しましょうか。」
「いや、その、悪いけど、自宅へ連れて帰るのは、明日にして。
ちょっと、今からホテルへ帰って寝るわ。」
(そうですかー。)
・・・・・・
無事に自宅での葬儀を終えて
「あー、無事に終わってよかった。ありがとうございました。
ほんとに、こんなにりっぱに準備してくれて、無事に終わったし、
もう、関東で葬儀するのは、やめておこうかと思ってますー。」
(何ですと?!・・そうではないかとは、思っていましたー。)
">「とうとう、こんな姿になってしもて・・。」
<・・・。お母様は、えっと、おいくつでした?>
「・・たしか、今年で85歳、やな。」
<お若く見えますよ。お窶れもなくて・・。>
「そやねん。この間まで、ピンピンしとったからな。
今でも、信じられへんわ。
寝てるみたいやろ。」
<ほんと・・。お優しそうで・・。>
「・・なかなか・・。
この人には、エライ目にあわされたで、ほんま。」
<ええ?そうですか。>
「母一人、子一人でな。
よう働く人やったけど、気も強うて。」
<りっぱな息子さんに、お育ちになって良かったですね。>
「・・・ありがとう、そりゃ、厳しかったで、
昔でいうスパルタやな、」
<おお、懐かしい言葉ですね。>
「おお、あんたも知ってるか、今では、死語やけどな。」
「な、ところで、この柩に入れてもらうのか?」
<はい、白木でご用意しましたが、よろしいですか?>
「・・・。」
<・・お気にめさなかったら、布棺とか、他のものにでも・・。>
「いやいや、ええねん。これで。
いやな、そのー、あのー、ですな、
一回これに、入れてもらわれへんやろかー。」
(何ですと?)
<・・ええ?! いや、ご本人、お母様は、ご納棺して・・。>
「ちゃうちゃう、わしや。
わしが、入りたいねん。これに。」
<・・・?>
「この間、テレビでやってたけど、なんか今、体験とかで、入らせて
くれるとか、人気やねんやろ。」
<え、いや、人気というか、入ると長生きするとは、昔から・・。>
「そうや!、な、一回入らせて。」
(ええですけど、このタイミングで?・・好きにしてください!)
<・・・。お母様は、えっと、おいくつでした?>
「・・たしか、今年で85歳、やな。」
<お若く見えますよ。お窶れもなくて・・。>
「そやねん。この間まで、ピンピンしとったからな。
今でも、信じられへんわ。
寝てるみたいやろ。」
<ほんと・・。お優しそうで・・。>
「・・なかなか・・。
この人には、エライ目にあわされたで、ほんま。」
<ええ?そうですか。>
「母一人、子一人でな。
よう働く人やったけど、気も強うて。」
<りっぱな息子さんに、お育ちになって良かったですね。>
「・・・ありがとう、そりゃ、厳しかったで、
昔でいうスパルタやな、」
<おお、懐かしい言葉ですね。>
「おお、あんたも知ってるか、今では、死語やけどな。」
「な、ところで、この柩に入れてもらうのか?」
<はい、白木でご用意しましたが、よろしいですか?>
「・・・。」
<・・お気にめさなかったら、布棺とか、他のものにでも・・。>
「いやいや、ええねん。これで。
いやな、そのー、あのー、ですな、
一回これに、入れてもらわれへんやろかー。」
(何ですと?)
<・・ええ?! いや、ご本人、お母様は、ご納棺して・・。>
「ちゃうちゃう、わしや。
わしが、入りたいねん。これに。」
<・・・?>
「この間、テレビでやってたけど、なんか今、体験とかで、入らせて
くれるとか、人気やねんやろ。」
<え、いや、人気というか、入ると長生きするとは、昔から・・。>
「そうや!、な、一回入らせて。」
(ええですけど、このタイミングで?・・好きにしてください!)
「それでは、打ち合わせ通り、家族葬でよろしいですね。」
「そ、家族葬でな。」
「少人数だとおっしゃってましたので、粗供養品のご用意は必要無いですね。」
「ソクヨウ・・?」
「はい、受付で、お悔やみに来られた方へのお礼ですけど。」
「あー、それな。・・やっぱり、要るで。
近所の人も来るから。」
「あ、そうですか。それは、お付き合いもありますからね。
わかりました。ご用意致しますね。」
「それと、お料理は? お通夜で何かご用意しましょうか?
お家の方でご用意されます?」
「家族葬やからな。家で・・。なあ。おい、どうするねん?」
「え?食事の用意、私がするの?買ってきてよ。
誰かおるでしょ。何人来ると思ってるん。」
「え?何人・・。そやな、親戚だけで、40人くらいやろ。」
(ちょっと、多くないですか?)
「そんなん、私、用意できひんよー。」
「あー、それでは、こちらで、仕出しのご用意しましょうか?」
「そうしてえ。」
「ご親戚は遠方から、こられますか?」
「そ、北海道と、鹿児島や。」
(また、端から端まで・・、遠いですなあ。)
「わかりました。式場への案内看板もご用意しますね。」
「それでは、お葬儀の規模は、どれくらいのお費用でご用意しましょうか。」
「そら、あんた、家族葬やから、小さいお葬式でええがな。」
「・・お父さん、そない言うても、あの親戚のおじさん、うるさいで。
戒名に院号がついてないとか、やれ、葬儀の花が少ないとか、
こんな小さい式場で、貧素やな。って、言うのに決まってるし・・。」
「・・そう言うんやったら、お金出してくれたらええねん。・・」
「そりゃ、そうやけど、そんなわけにもいかんでしょ。」
「ほな、どないするんや! あんたが決めて。
ワシは、もう知らん!」
「あ、いや、まあ、落ち着いて。
難しいとこですけど、よくお考えください。
まあ、家族葬と言っておられましたけど、
いろんなシガラミがあることでしょうし、
ご判断は、おまかせしますので・・。」
「・・どないするねん。そんなに費用はかけられへんで。」
「・・・・。」
「それでは、お祭壇は、これくらいの規模で。
あとの諸費用も、できるだけ、ご負担の無い様に、させて頂きますから。
いかがでしょうか?」
「・・・まけてな・・。」
(って、誰も呼ばない、家族葬って、言ってましたやん。)
「そ、家族葬でな。」
「少人数だとおっしゃってましたので、粗供養品のご用意は必要無いですね。」
「ソクヨウ・・?」
「はい、受付で、お悔やみに来られた方へのお礼ですけど。」
「あー、それな。・・やっぱり、要るで。
近所の人も来るから。」
「あ、そうですか。それは、お付き合いもありますからね。
わかりました。ご用意致しますね。」
「それと、お料理は? お通夜で何かご用意しましょうか?
お家の方でご用意されます?」
「家族葬やからな。家で・・。なあ。おい、どうするねん?」
「え?食事の用意、私がするの?買ってきてよ。
誰かおるでしょ。何人来ると思ってるん。」
「え?何人・・。そやな、親戚だけで、40人くらいやろ。」
(ちょっと、多くないですか?)
「そんなん、私、用意できひんよー。」
「あー、それでは、こちらで、仕出しのご用意しましょうか?」
「そうしてえ。」
「ご親戚は遠方から、こられますか?」
「そ、北海道と、鹿児島や。」
(また、端から端まで・・、遠いですなあ。)
「わかりました。式場への案内看板もご用意しますね。」
「それでは、お葬儀の規模は、どれくらいのお費用でご用意しましょうか。」
「そら、あんた、家族葬やから、小さいお葬式でええがな。」
「・・お父さん、そない言うても、あの親戚のおじさん、うるさいで。
戒名に院号がついてないとか、やれ、葬儀の花が少ないとか、
こんな小さい式場で、貧素やな。って、言うのに決まってるし・・。」
「・・そう言うんやったら、お金出してくれたらええねん。・・」
「そりゃ、そうやけど、そんなわけにもいかんでしょ。」
「ほな、どないするんや! あんたが決めて。
ワシは、もう知らん!」
「あ、いや、まあ、落ち着いて。
難しいとこですけど、よくお考えください。
まあ、家族葬と言っておられましたけど、
いろんなシガラミがあることでしょうし、
ご判断は、おまかせしますので・・。」
「・・どないするねん。そんなに費用はかけられへんで。」
「・・・・。」
「それでは、お祭壇は、これくらいの規模で。
あとの諸費用も、できるだけ、ご負担の無い様に、させて頂きますから。
いかがでしょうか?」
「・・・まけてな・・。」
(って、誰も呼ばない、家族葬って、言ってましたやん。)