初日の朝です。
ついにこの日が来ました。
ミュージカル俳優としての第一歩と書いていただいたとおり、今日僕は一歩目を踏み出すわけです。
ずっと考えないように考えないようにしていましたが、先月末に劇場入りをしてサウンドチェックを終えた瞬間一気に歌うことが怖くなってしまいました。
自分にはとことん才能がないのだという気持ち、自分の歌は人の感情を動かせない。
むしろ、自分が歌うことで、誰もが気分を害するのではないか・・・という気持ちに支配されました。
稽古期間、逃げ道を塞ぎ、誤魔化さず、様々な工夫をしたつもりではありましたが、それでも目指すべきところは遥か遠く。
また、姿勢・リズム感・耳・息のコントロールなど同時進行で行っていたトレーニングにおける上達曲線のプラトーが全部同時に訪れて・・・こんな時に何か一つでも、上手くいっているものがあれば、まだ拠り所になったのですが、人生そんなに甘くはなく。
己のキャパシティなんてそんなもんであり。
さらにその弱気が、歌の足を引っ張り、完全なる迷子に。
自分が何を歌っているのかが分からない、気持ちを込めてもまったく表現に乗っていないこの時間は一体何なんだ。
たくさんの人の時間を奪って、僕は何をしているのだ。
震えが来ました。
絶望しました。
努力をしていないわけじゃない。
全ての時間を費やして、いろんな角度から、いろんなものを観て、聴いて、考えて。
だけど、結果が出せなければ、どんなに訓練を積んでも意味がない。
最大限の敬意を持って挑んだつもりでしたが、それでも【歌】は僕を拒絶するのか・・・と思いました。
ごめんなさいね。
初日の朝に。
だけど、今日というこの日の、本番前に、僕の人生のマイルストーンとして、このブログを書いておきたかったんです。
そんなことがあったんです。
今日という日の初日公演は、本当に僕の人生において、大きな出来事なんです。
だから、僕のブログの中に、残させておいてほしいんです。
これまでと、これからをしっかりと分けるために。
このブログはご覧になる皆様へのエクスキューズではなく、もう一度自身の退路を断つ決意です。
一歩を踏み出すということは、「戻らない」ということだから。
音楽監督・歌唱指導の福井小百合さんが、「10年やってはじめて歌が楽しいと思えるようになった」という言葉をくださいました。
「演技もそうだったでしょ?」と。
演出の荻田浩一さんからは、「ミュージカル俳優じゃないからこそ到達できる表現があるはずだから、それを目指してほしい」と言っていただきました。
キャストの皆様からもスタッフの皆さんからも、色々なアドバイスや励ましのお言葉を頂き・・・。
お手を煩わせてしまって申し訳ありませんという気持ちと、感謝の気持ちでいっぱいです。
何度も申し上げておりますが、僕はこの作品が大好きで、この素晴らしい作品の一部になれることがとてつもなく嬉しいです。
そして、多くの方にこの作品を届けたいと強く、強く思うのです。
そして、ここまで来たこと、来れたこと、自分の選んだ道。
そのすべてを悔やむようなことはしません。
これからも変わらず力を尽くします。
命を燃やし、ひたすらに進む所存です。
どうか。
見届けてください。
愛した日々に悔いはない。