「買ってはいけない」の回でも解説したが、昨今巷で売られている中国製のトランシーバを国内でそのまま使用することは出来ない。
しかし、よくよく色々な製品を見てみると、単価5000円程度で、非常に魅力的な製品が多いことが分かった。
どうだろう?
なんというか、往年のSONYやケンウッドのラジオ製品のような雰囲気を持っていて、惹かれるものはないだろうか。
これは、中国の福建省にあるBAOFENGという会社が製造販売している、UV-5RAというトランシーバである。この機種はメジャーなようで、UV-5Rという機種の派生型として色々なバリエーションがあるようだ。私は、青色が精悍かつスポーティーな感じで気に入った。
出荷状態で136-174MHz/400-480MHz が送受信可能であり、当然、日本国内ではオフバンドである、しかも150MHz前後には、重要通信で使用される周波数帯域がひしめいており、特にこの帯域はTSSでもそうそう簡単に許可してくれない。
カラーバリエーションを見てみよう。
まずは、オーソドックスな黒。いかにもという感じがする。
背面下部に3つの端子があるのは、この機種がクレードルによって充電可能な機種であることを示している。標準で充電用のクレードルが付属するようだ。
カモフラージュ柄。これを持って歩いていると、通報されそうだ。。。
赤。
この辺りになってくると、カチッとした雰囲気が消えて、一気にカジュアルな雰囲気が出てくる。結構人気のあるカラーでもあるようだ。
黄色。
もはや、見るからに玩具の佇まい。 これで、U/VHFデュアルで、5W出力機というのだから驚く。これなら、仮に子供が持って交信していても、周りの大人は「ああ、玩具か、懐かしいなぁ」と思う程度だろう。
ところで、こまごまと調べていくと、このトランシーバの構造はなかなか面白い。
詳細に調べていくと、思っていたよりも簡単に(しかし、言うほど簡単ではないだろうが)、改造してTSSを通過させられそうに思えてきた。
まず、基本構造は、1チップのトランシーバICによってドライブされている。
ラジオICというのは知っていたが、まさか、汎用品のトランシーバICというのがあるとは知らなかった。
かなりの広帯域をカバーする、RDA1846という型式のICである。
これをマイコンで制御することによって、かなり高機能なトランシーバとなる。実は、これ1個がほぼこのトランシーバの全機能である。
極論すると、このトランシーバは、このICに、RF-AMP(ドライバとファイナル)とLPFを外付けされただけの、非常に単純な回路構成となっている。
既に、回路図を入手したが、A4一枚に収まるほどのシンプルな回路図であり、これならば、ある程度の電子回路が読める人ならば、簡単に送信機系統図(ブロック図)を描き起こすことが出来るだろう。
マイコン部は、ICを制御する他、EEPROMに、メモリや送受信可能周波数をデータとしてもっており、スピーカーマイク端子をUSBと共用することで、トランシーバ本体とパソコンでデータの書き換えを行うことが出来る。
回路を見る限りだと、スピーカー端子に使う3極プラグのセンターをUSBのRXD信号に使っているので、ここに接続されるチップ抵抗を剥がしてしまえば、通信が出来なくなり、かつスピーカーマイク端子を殺さずに使用することが出来る。
昨今、厳しくなったスプリアスのレベルだが、この機種の公式な数値はー60dBだそうで、アマチュアの基準はクリアしているそうなので、メーカー公表値をそのまま援用すればよい。
実際、スプリアスのレベルを計測するのは、アマチュアではかなり難しい(スペアナなどの専門測定器が必要)。
要するに手間の問題だろう。
それと、何度も言うが、ある程度の回路図を追えることと、電子回路の改造するための工具類を使いこなせるだけのスキルが要る。
TSSの審査は、物そのものはもちろんのこと、その無線家のスキルを見るようなので、改造ポイントがいかに合理的なものであるか、申請者が解説できなければならない。
(もっとも、詳しいOMさんに助けてもらうのは有りらしい)
買ってみようかなぁ。。。
本体5000円、通信ケーブル1000円、TSS審査料金3000円で、計9000円。
技適機のデュアルバンドハンディ機は、安い物でも18000円くらいだから、手間がかかっても半額程度で使い物になる。但し、失敗すれば、アウトだが。
余談だが、50MHzAMトランシーバの製作がストップしているのも、実は今の設計のままだとTSSを通過しないのではないか?という心配があるからだ。
私の設計品は、OSCに安価なDDSを使用して、アクティブダブラで発振周波数を2逓倍するという方式をとっているが、ここが引っかかりそうだ。。この方式で、スプリアスを有効に抑えることが可能なのかが、現在の課題である。
(仮に抑えられたとして、論理的に証明する手段がないのもネック・・・)