最近は、動画広告に注目が集まっていて、様々な広告主やベンダー様と議論する機会が増えてきました。
動画広告を配信して評価し、長期的に活用していく場合の一番のネックは、評価指標を決めることが難しいということです。今回の記事は、「評価指標を決めて、しっかり長期的に運用していきましょう!」という内容です。
従来のネット広告では、直接評価と呼ばれる、ユーザーが商品を購入した直前に接触した広告だけの評価が主流でした。
これでは、動画広告を過小評価してしまって、投資判断を誤る可能性があります。なぜなら、動画広告は、視聴してすぐにユーザーは購買行動を起こすわけではなく、その後、検索行動などを通して、購買する事が多いと考えれるためです。
弊社でもいくつかの評価指標を提案して、実際にGoogleTrueViewなど動画広告の評価しています。
今回は、下記3つのご紹介です。
1. アソシエーション分析
この分析では、このような事が分かります。
・ユーザーの検索行動に対しての寄与
・ユーザーのクリック数に対しての寄与
具体的には、スーパーマーケットの例で考えます。
例えば、10000人のお客がいたとします。
10000人の中で、サラミを買った人は100人いたとします(購入確率1%)。一方、ワインを買った人が100人いて、その中でサラミを買った人が5人いたとします(購入確率5%)。つまり、ワインを買ったという条件を付けると、購入確率が5倍(500%)になります。
「ワインを購入したという条件が付くことにより、サラミの購入確率が上がる」ことが分かります。ワインが原因でサラミが売れたと推測できます。
この数値(500%)はリフト値と呼ばれていて、これがアソシエーション分析における指標の一つです。
インターネット広告の広告に話しを戻します。
「動画広告を見たという条件が付くことにより、ユーザーの検索行動がどの程度上がるか」を調査します。
弊社実績では、動画広告は他ディスプレイ広告と比べて、リフト値が大きい事例が出ています。つまり、「動画広告を見ることで検索しやすくなった」と判断できます。
ここで、動画広告により増えた検索数に、検索からの平均購入確率を掛け算すると、動画広告により増えた購入数を見積もることができます。
ここまで、検索数に対するリフトを説明しましたが、検索数に限らず、購買やクリック数を評価する事も可能です。
この分析は、ユーザー行動のパスデータがあればできますので、広告効果計測ツールや第三者配信ツールを導入している広告主であれば可能です。実際の計算は、Rなどを使うよいと思います。(文献1参照)
2. アトリビューションスコア分析
この分析では、このような事が分かります。
・ユーザー行動の中で広告が出現した頻度を考慮した評価
具体的には、この分析は、直接評価ではなく、間接的な効果も考慮するために、以下のように購買した寄与を、直前以外の広告にも割り当てて、評価する試みです。
ユーザー行動の初めの方に表れた広告(認知に寄与した広告)は、従来の直接効果の評価では、評価ゼロですが、この方法を用いることにより、評価が付きます。
直近の購入数増加を狙う短期的な考え方をするのであれば、直接評価をして、ゴールを決めた広告だけを評価すべきですが、「長期的な視点でユーザーにリーチしたい場合は、均等評価を行い、ユーザーに対して、認知に寄与した広告を適正評価して、投資判断に活かすことが大切」と考えられています。
動画広告を運用する場合は、直接評価から脱却して、より長期的な考え方をもって、評価して投資判断する事をお勧めしています。
この分析も、ユーザー行動のパスデータが必要です。広告効果計測ツールや第三者配信ツールを導入している広告主であれば可能です。それ専用のプログラミングのパッケージはないので、自作が必要です。考え方は文献2を参照してください。
3. 計量時系列分析
この分析では、このような事が分かります。
・ユーザーの検索行動に対しての寄与
・ユーザーのクリック数に対しての寄与
上記2つの分析では、ユーザーの行動データ必要でした。このデータは広告効果計測ツールや第三者配信ツールを導入たり、データ自体容量が大きいので広告主の方がさくっと扱うことが難しい場合が多いようです。
そこで、「ユーザー行動データが無くても分析できる」のが計量時系列分析です。
この分析では、時系列データ(時間別データが好ましい)を用意して、例えば、動画広告出稿量と検索数の増減が連動しているかを調査して、検索数の増加が動画広告の出稿量増加で説明できるかを調査します。
一方から他方を予測するという回帰分析の考え方を使います。かつ動画広告の出稿から検索数への影響は、タイムラグをがあって伝搬するかもしれないので、タイムラグを考えた回帰分析(自己回帰分析)が適切です。さらに変数が複数あるため、自己回帰を拡張したベクトル自己回帰分析が使われます。
詳細は、文献3,4または本ブログのセミナーカテゴリ(安井の記事)を参照いただければと思います。
この分析の良いところは、「インターネット広告代理店が普段扱っているデータで分析できる」点です。
また、この分析はユーザー単位の分析ではなく、平均値としてのデータを見ているため、効果が見えにくい事がありますが、弊社の事例では、「動画から検索数への影響などは、きれいに見える場合が多い」印象です。
以上
動画広告を運用する際の、効果を検証する方法です。ここで挙げた適正評価などを活用して、長期的に動画広告を活用して、ユーザーに楽しく価値のある情報をお届けできればと思います。
終わり
参考文献
文献1
Rによるデータサイエンス - データ解析の基礎から最新手法まで/森北出版

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文献2
アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法/インプレスジャパン

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文献4
Rによる計量経済分析 (シリーズ〈統計科学のプラクティス〉)/朝倉書店

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文献5
経済・ファイナンスデータの計量時系列分析 (統計ライブラリー)/朝倉書店

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